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多彩な演目に期待「ふじのくに・せかい演劇祭」 会見詳報

 県舞台芸術センター(SPAC)が毎年、静岡市で行う国際的な舞台芸術の祭典「ふじのくに・せかい演劇祭」。6月の1ヶ月間、8演目を上演。今年の演目を紹介する発表会見を3月下旬、取材しました。

 会見では、宮城聰SPAC芸術総監督、招へい作品を上演する舞踊家・小島章司さん、演出家・中野成樹さんが演目への思いを語りました。また、フランス演劇界の巨匠クロード・レジ氏の「室内」に出演するSPAC俳優も登壇し、稽古やワークショップの内容、印象を明かしました。

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ここでは、談話の詳細を紹介します。

-SPAC新作「黄金の馬車」について。
 宮城監督「昨年の演劇祭で上演した『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』は、人間の手が届かないほどに壮大な祝祭劇。次の作品はどれも小さく見えてしまうだろう。そこで、極小の幸せを描いている『黄金の馬車』をやろうと思った。ジャン・ルノワール監督も、インドで撮影した壮大な『河』の後に『黄金の馬車』を制作したという。主人公は、役者としてしか生きる道がなく、いわば置かれた場所で咲くしかない。そんな自由を奪われた人生の中にも、最大の祝福を見いだしたい」

-89歳の巨匠、クロード・レジ氏の「室内」(メーテルリンク作)にはSPAC俳優が出演する。ワークショップ、オーディションを経て、4月にはパリでの稽古に入る。

 宮城監督「2010年の演劇祭招へい演目『彼方へ 海の讃歌(オード)』でレジ氏が来静した時、SPAC俳優の雰囲気を気に入ってくれて、SPACと共作したいという話があった。『室内』はかつて、伝説的な成功を収めた作品。その歴史に加えてもらうのは名誉なこと」

 SPAC俳優・泉陽二さん「『室内』は人形劇として書かれた戯曲。レジ氏には『演技をするな』『情緒的にならないで』と言われるので、演じている時に人形のような感覚になることがある」

 SPAC俳優・布施安寿香さん「『室内』はシンプルな言葉でつづられた小さな話。その奥に、たくさんの豊かなものが潜んでいるのかも」

-小島章司さんは、フラメンコ作品「生と死のあわいを生きて-フェデリコの魂に捧げる-」を初演する。演劇祭の上演は1回のみ。

 小島さん「1960年代のアンダルシア地方で、黒い服を着た女性たちが白い壁にもたれかかる光景を見た。古い因習と差別に縛られた姿。その悲しみをスペインの劇作家フェデリコ・ガルシア・ロルカが描いたように、自分も踊りで表現したい。また、スペインへの熱情も強い。敬愛するピカソ、カザルス、パブロ・ネルーダの3人は、同じ年に亡くなった。しかし彼らの存在は、私の中に生きている。作品の中に、彼らへのオマージュをささげる」

-中野成樹さんは、ベケットの「ゴドーを待ちながら」に着想した翻訳劇を再演する。言葉の通じない男女の会話から、“通じ合わない”ことのおかしみを引き出す。

 中野さん「世の中の観念が、『分かる』か『分からない』に二分されている。伝わらないことは面白いことではないか。通じ合えないことを楽しめたら、無敵でしょう」

 恒例の演劇祭、今年も多彩な演目に期待が膨らみます。

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