わた死としてのキノコ 記念対談のひとこま(後編)
9月1日、静岡市美術館で行われた現代美術家の今村源さんと京都市立芸大の建畠晢学長との記念対談抄録、後編です(⇒前編へ)。司会は同美術館の以倉新学芸課長が務めました。
今村「キノコというのは宇宙的な無限やファンタジーを感じさせる一方で、身近な食材でもあるんです。しかもわれわれが視覚的に感じ取っている地上部分はごく一部でしかないところが面白い。菌糸は地下に張り巡らされていて、実体は何も分かっていないんです」
建畠「今村さんの作品には、これが芸術なのか、それともレディーメードのものなのかというジレンマがないんです。ズレ過ぎてもいないし、ズレていなくもない。全ての作品にデリケートな仕掛けが施してあります。いい意味で中途半端。強烈なアンチテーゼではないんだけれど、不思議な逸脱を見せる」
今村「私は作品を『窓のようなもの』にしたいと思っています。窓枠+ガラスのようなものを作って風景を切り取る。見る方は自分の経験をリンクさせて窓から外を見る。作品は見る方を集中させるものではなくて『抜けていく』ものだと思います」
今村「キノコのありようの一つ『寄生』。これって木にとって、結構うっとうしいことです。私の作品の菌糸は『うっとうしい』存在。ある程度空間の邪魔をするような異物感がありながら、いつの間にか場に調和しているような。そんな存在です」
今村さんの企画展「わた死としてのキノコ」は、10月27日まで開催中です。(橋)
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.at-s.com/mt1/mt-tb.cgi/47584