トップページ >07)アート >「しずおか連詩の会」参加詩人(5):野村喜和夫さん

「しずおか連詩の会」参加詩人(5):野村喜和夫さん

 本日11月21日から創作が始まった「しずおか連詩の会」。5詩人の代表作、新作を紹介するシリーズの第5弾、最終回です。コメントはあくまで(橋)の感想です。

野村喜和夫(のむら・きわお)「芭(塔(芭(波」(左右社、2013年)

20131121WEBコラム連詩の会⑤.JPG

 マレーシアを訪れた野村さん。本作はジョホール・バルからバトゥ・パハに至る旅の軌跡です。1932年に詩人の金子光晴がたどった道のりが下敷きになっていて、各所に金子の詩の一節が効果的に「引用」されています(ゴシック体になっている)。

 明確に詩と言える言葉の連なりと、「紀行文」としても読める文章が交互に出てきます。現地の言葉を漢字に当てはめる(タイトルも「バトゥ・パハ」の当て字)など、野村さん独特のユーモアを込めた「言葉遊び」が随所に見られ、ニヤリとさせられます。

 こうしたブログで横書き表記をすると、その機能がほぼ失われてしまいますが、縦書きの本作には括弧( が頻出します。これ、「改行記号」としてというより「息継ぎの場所」として考えると、より一層この作品の味わいが増すことに気付きました。
 
 マレーシアの風景を見た野村さんが「旅とは何か」「旅を描く言葉とは何か」「言葉を用いる詩とは何か」を探り続ける過程として読めるように思います。
 
泥色の川面よ(ひとの皮膚よ
微細な肌理の波の連なりにおいて
それらは区別されない
泥色の川面よ(ひとの皮膚よ
老いも(悲しみも(魚影も(水蛇も
吐かれた血も(不穏への憧れも
すべては隠れ込む
泥色の川面よ(ひとの皮膚よ
ふれあうことにおいてひとはひとを超え
肌理の無限をつくりだす
ことにおいて(ことにおいて
伸びきった生は伸びきった生のまま
毛は起き上がってざわめき(しぶきをあげ
伸縮し(うごめく
泥色の川面よ(ひとの皮膚よ
                  (p36の詩から)


 「しずおか連詩の会」は5詩人が3日間で40編を創作します。完成した連詩は24日午後2時から、静岡市駿河区のグランシップで発表。入場は事前申し込みが必要です。詳細はこちらを参照してください。(橋)

コメントを投稿

コメントを表示する前に承認が必要です。コメントが表示されるまで、少し時間がかかる場合がございます。


画像の中に見える文字を入力してください。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.at-s.com/mt1/mt-tb.cgi/47782

トップページ >07)アート >「しずおか連詩の会」参加詩人(5):野村喜和夫さん

ご案内

静岡新聞文化生活部の記者ブログです。
取材時のエピソードなどをアップします。
音楽、アート、鉄道、くらしなどがテーマ。
紙面にプラスのこぼれ話が満載です。


★文化生活部ツイッター ⇒こちら
「くらしず」の更新情報もお伝えします。

★アットエスニュース ⇒こちら
静岡新聞の公式ニュースサイトです。