アトキンソンさんが語る「後継者問題」
1月5日付1面に掲載されたデービッド・アトキンソンさんのインタビューは、昨年12月20日に行いました。金融アナリストを経て、寛永年間に創業した小西美術工芸社のトップに就任した、異色のビジネスマンです。
対話は約2時間半に及びました。時に辛らつに、時にユーモアを交えて日本と日本人を分析する語り口が印象的でした。(橋)
新聞に掲載した話題以外で、アトキンソンさんが最も熱を込めたのが、職人の世界における「後継者問題」です。
「伝統の技法を受け継ぐ後継者が不在だといわれます。そうした問題は、確かに存在するかもしれない。でも、言われるほど危機的ではありません」
アトキンソンさんが自社や同業他社を調査したところ、職人の平均年齢は日本の全労働者の平均年齢を下回っていたそうです。「技術が継承されていない。職人が高齢化している。よく言われますが、それは間違っています。日本は事実確認や分析もなされない〝事実〟が蔓延することが多い」
自社も含めて伝統文化の継承について、冷静な視点を保ち続けています。
「職人こそが、技術大国日本の基礎。そんなこともよく言われますが、私はそうは考えない。発注してくれる方がいる限り仕事は続く。ただそれは特別な仕事ではありません。少なくとも小西美術の職人に、そうした意識はありません。ないほうが健全だと思います」
年功序列にも疑問を呈します。「年齢が上になればなるほどすごい。そんなことはありえない。特に文化財修復は外仕事です。体力も必要とします。若い世代が活躍するべきなんです」
ハロウィンの起源、「レディーファースト」の背景、日本〝農耕民族〟論…。あらゆるところに誤解と事実誤認が潜んでいると言います。「事実関係の確認」「真摯な分析」。アトキンソンさんが「日本人に足りないもの」として挙げた2点が、深く胸に刻まれた取材でした。
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