ロシア料理店「サモワァール」の歴史
2月20日夕刊「旅食」面で取り上げた「ロシア料理レストラン サモワァール」の取材こぼれ話の2回目です。オーナーシェフの松木洋一さんに開店当時の話をうかがいました。(橋)
1974年オープン。ロシア料理店の開業は県内初だったようです。
お父さんの強い勧めで東京・渋谷のロシア料理店「ロゴスキー」で修業し、故郷に帰ってきた松木さん。「でも、ロシア料理どころか西洋料理のレストラン自体が浜松にほとんどなかったんです。最初は全然お客さんが来なかった。『ロシア人の料理なんか、日本人が食えるか』と言った方もいました」
当時は今の店舗の2階がお父さんが経営するジンギスカン料理店。2階で宴会があると、頼まれてロシア料理を下から持っていったそうです。
お客さんにも「戦中派」が多かった70年代。松木さんが強烈に記憶している風景があります。
「あるお客さんが、ウチのパンを食べて涙をボロボロ流すんです。この味、この味なんです、と言って」
聞けばシベリア抑留経験者だったとのこと。ロシアのパンは無漂白のライ麦パンが主流。少し固めの黒いパンを食べながらその方は、「懐かしい。でもこんなにおいしくはなかった」とも言ったそうです。
松木さんのお父さんが息子にロシア料理店を開かせたのは、自身がハルビンやモンゴルに出征した際に食べたロシア料理が忘れられなかったことに端を発します。サモワァールの歴史をたどると、昭和史の一端が見えてきます。
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