松崎晴雄さんが語る杜氏の役割の変化
4月4日、しずおか地酒研究会(静岡市葵区)の例会「しずおか地酒サロン」に参加しました。日本酒研究家で日本酒輸出協会理事長の松崎晴雄さんが「酒造り職人・レジェンドvs.フロンティア~杜氏の流派を見つめなおして」と題して講話しました。(橋)
「杜氏の使命は蔵の意向に沿う酒を造ること」と松崎さん。「プロ野球に例えるなら、蔵元が球団オーナー、杜氏は監督」と規定しました。
地域性や酒質など、酒蔵の個性をいかに忠実に商品化できるかが、杜氏の腕の見せ所です。
「杜氏は自分が造りたい酒を造っているわけではない。蔵の意向に沿って技術を生かす。米、水質、ずっと続いてきた『蔵の味』。こうした条件への対応力、応用力が求められる」
かつては南部、能登など全国にいくつかの杜氏流派がありました。松崎さんは「最近はそうしたものが見えづらい」と分析します。
米の蒸し方、酵母の作り方など「前処理」と言われる工程が、流派の違いを生む一番のポイントでしたが、酒造好適米の山田錦が全国に普及し、新しい酵母が全国的に普及したことで「技術の共有化が進んだ」と言います。
自社杜氏の比率が高まったことも、近年の大きな変化です。松崎さんの感触では、従来型杜氏との比率はほぼ半々とのことです。
「自身も米農家であることが多い従来型の杜氏は、常に予期が難しい自然との闘いに身を置いている。そうした中で、酒造りに関してもセンスや勘のようなものが自然に備わってくる。一方、社内杜氏の場合は、販売企画も含めた酒造りをしようとする。自己実現性を感じるケースも多い。良し悪しはないが、ベースの部分で違いがあることは確かだ」
この項、続けます。
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