「C2C -Challenge to Cannes2014」監督らがトーク(下)
5月24日、静岡市葵区のサールナートホールで行われた「Gateway for Directors Japan」のトークイベント抄録、第3弾です。「シズオカ×カンヌウィーク2014」(5月17~25日)の一環で、日本人若手監督4人がカンヌ映画祭の印象を語りました。参加者はアーティスティックディレクターの小山内照大郎さん(パリ在住)、真利子哲也監督(「イエローキッド」など)、深田晃司監督(「東京人間喜劇」など)、濱口竜介監督(「PASSION」など)、伊藤峻太監督(「虹色★ロケット」など)。第1弾はこちら、第2弾はこちらです
〈カンヌでの具体的な動きも明かされました〉
小山内:現地での1週間のスケジュールは小学校の時間割のようでした。例えば、朝9時半から映画祭のディレクターにアジアに作品を売り出していくプレゼンの仕方について指南してもらう。午後1時からは、例えばインターナショナルに映画を売り出す配給会社の社長にセールスの内容を教えてもらう。さまざまな国のファンドをもっている機関の担当者に来てもらって、どうしたらファンドをもらえるかについて話をしてもらう。一日ぎっしりやって。夜はあちこちのパーティーに顔を出しました。これも「営業」の一つなんです。
深田:完全に仕事モードで連れて行かれましたね。
〈映画祭の別の側面にも触れました〉
深田:今まで自分がスタンダードだと思ったものがそうではなかった。例えば、いろいろな国の助成金は長編2作目までしか選んでもらえない。
浜口:あるプロデューサーに、予算の面で「これでどうやって映画を撮るんだ?」と聞かれました。発展途上国の方々とのカンファレンスでは、ベネズエラの方々がわれわれにシンパシーを抱いていたそうです。日本のインディペンデントの作家が置かれている状況は、途上国のそれと近いようです。
真利子:僕もベネズエラ、シリア(の方々)にシンパシーを表明されました。「この予算じゃカメラマンも雇えない」とも。自分たちが共有していた問題点を、海外であらためて知らされた気がします。
深田:合作することも含め、クオリティーのためにどのぐらいの予算が必要なのかということを(企画書に)書かなくてはいけなかったと教えられました。
浜口:「この金額は、君たちのトゥルーバジェットなのか、トゥルーバリューなのか」と聞かれた。実際に掛かった予算じゃなくて、「ちゃんとこれだけは掛かる」ということを主張していかなくては。
真利子:企画を作るときに、どうしても国内で何とかしようと考えてしまう。もうちょっと広い視野で映画を作ることができるわけだし、今後はそうしなきゃと思いました。
浜口:(先ほども話があったが)2本目までの監督がこんなに厚遇されているのか、という衝撃があった。僕はいたずらに年を重ねてすでに何本も撮ってしまいました(笑)。ただ、企画の始まりの段階で国際共同製作というのは手が届かないほど遠いものではないとも認識しました。
〈企画段階で世界に向き合う必要性についても議論が及びました〉
小山内:カンヌ映画祭と言えば、作品を見せてレッドカーペットで写真を撮られて、ということに終始していた。日本での興行につなげて帰ってくるだけということが多かったんですね。でも実際に行くと、単に作品を見せるだけではないんです。東南アジアの監督なんかが行くと、次の作品の企画書を英語で用意していて、各国のプロデューサーにプレゼンする用意ができている。日本人だけがそれをやっていません。日本の映画産業はずっと、映画会社が工場のようにどんどん(映画を)作り上げるシステムだった。だから、特にそれ以外のシステムを作る必要がなかったんでしょう。でも海外に出てみると、「映画を文化として守らなくてはいけない」とか「生活に必要」という意識の中で、「映画をつくるために国がお金を出して助ける」というシステムが出来上がっています。
浜口:これからは、ポストプロダクションがワールドセールスになると思います。今回は具体的な成果はありませんでしたが、とにかく人にあって話をして、今後のやりとりにつなげることが必要です。企画に対しては平等。企画そのものを評価してくれますから。希望を持ちました。
小山内:日本はガラパゴス化しているといろいろな局面で言われます。世界にいる観客の顔が見えると、日本のクリエイターの作品の作り方が変わるんじゃないでしょうか。このプロジェクトでは、日本国内の作り手、観客と世界のそれとのつながり、ネットワークを模索していきます。
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