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藤枝市在住のラッパーINNTANA(上)

 6月13日夕刊「とんがりエンタ」では、藤枝市在住のラッパーでトラックメーカーのINNTANA(インタナ)の初アルバム「INNTANATIONUL HAAMONIEE」を取り上げました。インタビューに応じてくれたINNTANAは、キックの強いビートに乗せた男っぽいラップとは裏腹なキャラクター。穏やかで理知的な口調が印象的でした。
 2回に分けてインタビュー抄録をお届けしましょう。(橋)

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  ▼初アルバムはかなり前から制作していたようですね。
  「2009年からですね。代表曲を集めた形ですが、今年の3月に仕上がった曲も入っています」

  ▼ご自身でトラックも作っています。
  「2003年に活動を始めてからずっと同じスタイルです。ラップはもちろんですが、音を編集するのがすごく好きで。ヒップホップのレコードは、音を作って、リリックを書いて、それをまた投げてという往復の作業で作られます。僕はそれを同時進行でやるんです。ここでドラムを抜こうとか、こういう音にしたからこういう歌い方にしようとか。でっかいおもちゃに少しずつ色を塗っていくような感覚が楽しいですね」

  ▼ジャズっぽいピアノのフレーズも聞こえてきます。
  「あれは自分で弾いています。フレーズを全部作ることもありますね。『夜桜』もその一つ。ピアノ、シンセサイザーを重ねました」

  ▼全体的にキックが強くて、時折大陸的なメロディーが顔をのぞかせるのが印象的でした。音のコンセプトは最初から決めていましたか?
  「かっちりと決めて作ったわけではありません。もともとキックが強くてエネルギッシュなドラムのビートが好きなんです。トラック作りについては、自分なりにこだわっている点があります。例えば、有名なアフリカ系アメリカ人の方々のネタはサンプリングに使わない。教科書を見て作るようなやり方は好きじゃないんです。レコード屋さんでも、ヒップホップでよく使うような音楽のコーナーには行きません。『ガラクタ』のようなレコードが集まっているところに真っすぐ行って、例えば変な服を着ている写真のジャケットやくせのあるものを引っ張り出します」

  ▼共同制作者として名を連ねているYoung-Gさんとのお付き合いは、どのぐらいの時期からですか?
  「2008年ごろからかな。彼はラッパーの田我流の同級生で、僕はもともと彼ら『stillichimiya』周辺にちょこちょこ知り合いがいたんです。ある時、3曲ぐらい宅録りした音源をCD-Rに焼いて、紙のケースに入れて200枚ぐらい配ったんです。音質は汚かったけれど、自分では良いと思っていた。たいていの人はあたりさわりがないことを言ってくれるんです。『良かったよ』とか。ところが田我流だけが『ふざけんなよ。これ、めちゃくちゃ音が悪いじゃん』って。怒られた。正直、その時はカチンときました。でも彼は『カッコいいこと歌ってるのに、(音が悪いと)聞いてもらえなくなる。もったいない』と言ってくれた。それから音の良さを考えるようになりました。その田我流の沼津でのライブを見たら、めちゃくちゃ音が良い。『そうか、この音を作っている人のところにいけばいい』と。それでYoung-Gを別の友達に紹介してもらったんです」

  ▼このアルバムではどう役割分担していたんですか?
  「まず僕が自宅でサンプラーを使ってトラックを作る。歌詞をつけてもう1回組み直す。それを(山梨県笛吹市の)Young-Gのスタジオに持っていく。機材も、サンプリングに使ったレコードも一緒に持ち込んで、もう1回組み直してもらうんです。ドラムの0・1秒のズレにもこだわって、長い時間を掛けて音を組んでいく。Young-Gはラッパーでもあるから、言葉のタイミングに合わせて、上手に音を抜き差ししてくれる。天才肌ですね、彼は」

  ▼音質への満足度はいかがでした?
  「非常に良くなりました。環境、機材の問題もそうだけれど、彼はとにかく知識が膨大。良い音を作ろうという情熱がすごい。機材のコンセントからして違うんです。『スタジオの壁も良い音を録るためにいじってます』とも言われました。良い音の条件は、やっぱり、聴いていてわくわくすること。中音、高音がキンキンしているのが最近の流行ですが、僕はズシッとした音が好きですね」

  ▼制作を終えて、あらためてYoung-Gはどんな存在だと感じていますか?
  「まるで宇宙飛行士。マスタリングの作業を見ていてそう思いました。ガンガン音を鳴らしながら機材をいじっている姿が、コックピットの中にいるように見えましたね。宇宙空間でどこかに向かって宇宙船を進めているような」

  ▼ゲストの顔触れを見ると、山梨のYoung-Gを筆頭に静岡の尖閣、名古屋のTakUmiなど、地方で活躍するヒップホップアーティストが勢ぞろいした形ですね。
  「意図していないですけどね。最終的にこうなりましたね」

  ▼ヒップホップは、東京に集まらなくても、地域ごとの横の連携がしやすいジャンルなんでしょうか?
  「それはあるでしょうね。パブリック・エネミーが1990年代初期、まだインターネットが普及していなかった時期に、『ヒップホップは黒人のCNNだ』って言っていたんです。俺たちの間で本当の情報のやり取りができる、と。それに近いものを感じますね。ヒップホップって、一般市民の音楽なんです。アイドルやセレブじゃない。そこらへんを歩いている人たちの音楽だと思います」

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