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「松下米」松下明弘さんに〝スピンオフ〟インタビュー

 6月23日付「地の味 人の味」では、稲作農家と二人三脚で酒米作りに取り組む青島酒造の青島孝さんに焦点を当てました。
 ここでは記事の「スピンオフ・インタビュー」をお届けします。主役はその稲作農家の松下明弘さん。田植えが終わったばかりの田んぼの横で話をうかがいました。(橋)

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▼今年の田植えは順調ですか?
「1番早いわせの食用米は5月23日から。山田錦は6月10日からかな。6月20日ごろには全て終わると思います」

▼田んぼの総面積はどのぐらいですか?
「全部ひっくるめると10ヘクタール。そのうち8ヘクタールがウチのお米。2ヘクタールは耕作だけ請け負っています。田んぼは全部で市内4カ所に15枚ぐらいあるのかな」

▼良い米の見分け方は?
「田んぼには(稲の)コンディションの良しあしが出ますね。見分けるのは直感。見た目の色具合ですね。田んぼ全体の印象です。端から端まで色がそろっているか。全体が黄金色か。株元から稲穂まで、葉っぱ含めて全体がおなじような色具合か」

▼「良い米」とはどんな点が「良い」のでしょう。
「生育がそろった田の米は精米したときに状態がそろいます。つまり、蒸しも麹も均質でおかしなものが入る余地がない。きっちりつながっていく。米粒のそろいが蒸しのそろい。蒸しのそろいが作りのそろい、ということです」

▼良い米を作るために心掛けていることは何ですか?
「このへん(藤枝市)の人は『稲は人の足音を聞いて育つ』と言うんです。どれだけ田んぼに通って、どこまで手を掛けたか。それに比例して稲は育つというわけです。技術は進みましたが、これは今も変わらない。用がなくても田んぼを見に来て、声を掛けるんです。田植えをした瞬間から、稲は自分の力で生きて行かなくてはいけない。『あとは自分の力でがんばれよ』と。稲には稲の意志があります。生きたい生き方があるんです」

▼酒米作りはどこが起点になるんでしょうか? また、どこが終点でしょうか?
「2月ぐらいからその年の作業が始まります。田植えやって。稲刈りやって1年。その米で酒を造るのに1年かかる。お客さんのところに行くまでには2年近くかかっていることになりますね。有機資材のことを考えれば、もっとさかのぼることになる。魚のカスを肥料に使っていますが、秋口の水温で魚の性質も変わってくる。脂がのっているときは肥料成分も多くなりますが、逆にすっかすかの年もある。そういう肥料しかできない年もあるんです。それを頭に入れて土を作らなくてはいけない。毎年同じことをやっていたら、同じ米はできないんです」

▼「松下米」という名称で酒が販売されています。ご自分の名前が酒の名前になっているわけです。どんな気分でしょうか?
「そりゃ、責任重たいですよ。俺がこけたらみんなこけちゃう。酒屋も小売りも、お客さんも。ものすごい数のお客さんがいますからね。『米が失敗しました』では終わりにならない。簡単に死ねませんよ。このお酒を予約したお客さんは、きっと俺が死んだら石を投げに来る。『酒飲めないだろう』って(笑)」

▼プレッシャーが大きいわけですね。
「まあ、うれしさ半分、プレッシャー半分かな。収穫が終わって、青島酒造に米を納品するときに、その全てから解放されるわけです。この日に飲む酒は、この上なくうまいんです。『やっと終わった』って」

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