理系本「ななめ読み」(6)「スノーボール・アース」
4月7日付「サイエンス・ブック・カフェ」で紹介した「スノーボール・アース 生命大進化をもたらした全地球凍結」。地球規模の氷河期説を実証しようと世界各地をフィールドワークする地質学者たちを描いたノンフィクションです。登場する科学者たちは皆、スーパーマンのようなキャラクター。冒険譚として読める内容です。(橋)
主人公とも言うべきポール・ホフマンは、まさに超人。プロローグからして、科学本らしくありません。
「空は荒れていた。激しく降っていた雪がみぞれに変わり、マラソンのスタート地点のすぐそばのハイデン・ロウでウォームアップをしていたポール・ホフマンの顔をたたいている」
ホフマンが1964年のボストンマラソンを走る場面。いろいろとレースの描写があって、まるでスポーツ小説のようです。
彼はこれが初マラソンでしたが、いきなり2時間28分7秒で9位に入ります。「世界記録から14分も離れていない」という記述にびっくりさせられます。これは実話なのです。
アスリートとしても超一流の彼は、この後すっぱり五輪出場の夢を捨てて、地質学の世界をまい進します。何ともったいない。
この人の超人ぶりは、カナダ北極圏や南アフリカでの過酷な地質調査からもうかがえます。クマをライフルで仕留めてヘリコプターで輸送したり、カヌーでカナダの森林部をキャンプしながら行き来したり、灼熱のナミビアで一日中歩き回ったり・・・。サバイバルとはまさにこのこと。地質学のイメージが一新されました。
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