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「ある精肉店のはなし」纐纈あや監督トーク(中)

 7月20日、静岡市駿河区の絵本専門店「ピーカーブー!」で開かれた、ドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」の纐纈(はなぶさ)あや監督のトーク、第2弾です。第1弾はこちら。(橋)

20140725webコラム.jpg(↑)映画「ある精肉店のはなし」の一場面

 

 大阪府貝塚市の「北出精肉店」をテーマに、ドキュメンタリー映画を撮ろうと決意した纐纈監督。しかし、関係者の了解を得るまでにはいくつもの壁が待っていました。
 「まずは北出さんのご一家、それから地域の人にも同意していただかなくてはいけない。デリケートなテーマでしたが、最初から人物にモザイクを掛けないと決めていました。その人がその人である、と分かるように撮りたかったんです」

 「地域の方々や、部落解放同盟の方々とも話し合いました。ある方は『自分たちは問題ない。子どもや孫が映画の被写体になることで、どんなことが起きるか分からない。それが不安なんです』とおっしゃっていました。『どれだけの覚悟があるのか』と問われた時は、何の言葉も出てこなかった。経験のない汗をかきました」
 
 状況を前に進めたのは、持ち前の「不屈の心」でした。
 「ずっと強気だったんですよね。絶対に引かないぞ、とは思っていた。今考えると自分でもあきれてしまうぐらい。『責任取れません』と言ってしまったら、この映画は終わってしまいますからね」
 
 話し合いを重ねるうちに、軟化していく気配を感じ取りました。
 「北出さんには『この一家の良い面を出す。プラスになるようにする』と約束しました。だんだん『この人は何を言っても聞かない』という雰囲気になりました。ありがたかったのは、解同の方々に『映画に対しては、いろいろな意見があるだろう。でも何か起きたときには一目散に駆け付ける。一緒に乗り越えましょう』と言っていただけたこと。幸運だったと思います」
 
 撮影が決まって最初にしたことは、引っ越しでした。
 「店から徒歩5分の場所に部屋を借りました。撮影は4人態勢。他のメンバーが来るのは1カ月に3~7日です。私はそれ以外の日も店に通い続け、食卓で仕事をさせてもらっていました。『何かを撮る』という前提ではない状態でそこにいると、いろいろな発見があるんです。あの家族と一緒の時間を過ごさせてもらう、共感させてもらう。それこそが目的。もしかしたら、映画は副産物にすぎないのかもしれません」
 
(以下、次回)

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