「ある精肉店のはなし」纐纈あや監督トーク(下)
7月20日、静岡市駿河区の絵本専門店「ピーカーブー!」で開かれた、ドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」の纐纈(はなぶさ)あや監督のトーク、第3弾です。第1弾はこちら。第2弾はこちら。(橋)
ナレーションも自分で担当したことについては、はっきり意図がありました。
「監督1作目の『祝の島』でも、プロデューサーに『自分でやれ』と言われましたが、かたくなに拒みました。『私』を出すのが余計だと思ったんです。でも今回は、撮影していたときから自分でやらなくてはならないという思いがありました」
「今回の映画は、屠場という複雑な背景がある場所を扱っています。国内にはいろいろな屠場があって、それぞれに地域の成り立ちなどがまったく違う。それをすべてひとくくりにして『こういうもの』として扱うことは危険だと思いました。あくまで『私が出会った北出一家』として、映画を進めていくのが大切だったんです」
さまざまな問題をある意味、サラッと扱う手さばきについても話が及びました。
「ドキュメンタリーには、社会で起きている問題を伝えるという役割があります。社会問題をそのまま問題として取り上げると、本質から離れてしまう。物事が起きている場所に行って、中に入ってみてこそ見えるものがある。ある人を理解しようとしても、その人が背負った歴史だとか、男女の違いだとかは、それぞれがいろいろな要素のひとつに過ぎません。目の前にいる人は何なんだろう、ということを常に考えながら撮影していました」
映画を見た人からは、さまざまな反応があったそうです。
「意外に『肉を食べたくなる』という感想が多いんですよ。どういう人がどうやって肉を作っているか。顔が見られたことが大きいのではないでしょうか。食肉の世界は特に、生産工程が分断されていますから。心ある生産者は全国にたくさんいます。その人たちのことを想像していただけたなら、この映画を作った意味があると思います」
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