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理系本「ななめ読み」(7)「量子コンピュータ」

5月19日付「サイエンス・ブック・カフェ」で紹介した「量子コンピュータ」(竹内繁樹著、講談社)は、物理学者の「夢」とも言える「量子コンピュータ」の考え方と、実現に向けた試みがテーマ。身近な話題ではないので、読み進める上でかなり労力が必要…かと思いきや、著者なりの「構成の妙」が効いていました。(橋)

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「量子コンピュータ」とは、「量子力学」を使って「超並列計算」を実行する電子計算機のこと。要するに「ものすごく速いコンピューター」です。この本の中には「これまでのコンピュータとはまったく異なる方式で莫大な並列計算を行うもの」という記述もあります。
この本の発刊は2005年。2014年の今も研究が進んでいます。でも、まだ実用化されていません。

講談社の「ブルーバックス」シリーズですが、一般の読者にしてみれば「量子コンピュータ」という、タイトルだけで「?」となることでしょう。

もちろんそのことは著者もよく分かっていて、この本を物理の基礎知識から教える構成にしています。「量子力学」「量子ビット」「重ね合わせ」などという、難解なキーワードを理解させるために、初歩の初歩から説明します。
たとえば「光って何?」といったような。その昔高校で習ったことの復習をしているような気持になりました。

読者へのサービスは徹底しています。図版はできる限り簡略化されているし、全7章の末尾には「まとめ」まで付いている。分かりやすくて良いけれど、これは研究の最先端にいる科学者にとって、相当忍耐を強いられる作業だったのではないでしょうか。

「量子コンピュータ」は、物理学者にとってはかなり熱狂を伴う概念のようです。それは文章の端々から伝わってきます。
たとえばこんな一文。
「『量子コンピュータ』とはコンピュータサイエンスの側から生まれたアイデアなのではなく、物理のサイドから『投げかけられ』たものだということを知ってほしかった」

「広く一般にこの概念を広めたい」という学者としての情熱。そして物理学そのものへの愛。それがこの本のサブテーマであり、感動を覚えるポイントだと感じました。

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