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「『ニセ医学』に騙されないために」を読んで

 科学面の編集担当として、いろいろな「科学本」を読みます。好評連載の「サイエンス・ブック・カフェ」で静岡大理学部の先生方が紹介している本も、順次読み進めています。ここで、私も本の推薦をしたいと思います。お題は、6月発刊のNATROMさん著「『ニセ医学』に騙されないために」(メタモル出版)です。(橋)

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 著者は10年前からネット上で発言を続けてきた内科医。「NATROM」はハンドルネームです。

 「ニセ医学」とは何か。筆者は「医学のふりをしているが医学的な根拠のない、インチキ医学」と定義しています。

 大きく3部に分かれていて、「現代医療」編では科学的根拠の薄い反医療論や治療法への反論、「代替医療」編では自然療法や独自療法の危うさ、「健康法」編ではちまたにあふれる「健康」と名が付くビジネスの内実を記しています。

 キーワードを挙げると、この本の目指すところが分かるでしょう。例えば「ホメオパシー」「ホルミシス効果」「血液型ダイエット」「千島理論」。このあたりは、ある意味〝おなじみ〟ですね。私は知らなかったのですが、「ソチマッド」「NAET」などという言葉も出てきます。
 
 著者はこれらについて、提唱者や事業者の名前をはっきり出した上で「めった切り」します。説得力が抜群の語り口。時代劇を見ているような爽快感すらあります。
 どの章を読んでも、言っていることは極めてシンプルなんです。「万能をうたう療法や薬を疑え」「コホート調査を踏まえて、初めて効果のほどがわかる」…。当たり前といえば当たり前のことを、著者は繰り返し書いています。いかに「そうでない」モノが世の中にまん延しているかがうかがい知れます。
 
 この本で初めて知ったユニークな言葉があります。それは「3た論法」。比較実験を行わず、「使った」後に「治った」から「効いた」とみなす論法のことだそうです。周辺を見渡してみるとこれが実に多い。思わず笑ってしまうほどです。
 

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