「山本二三展」に関する雑記
8月4日に開幕した静岡市美術館の「山本二三展」。大勢の観覧客でにぎわっています。筆者は10日、台風一過の午前10時半に一般の客として訪れました。悪天候にも関わらず、館内で渋滞が起きるほどの盛況ぶり。驚きました。
ここでは、個人的に感銘を受けた作品について書きます。(橋)
ジブリ作品に疎い筆者にとっては「美しい風景画が並んだ作品展」という位置づけ。「もののけ姫」「天空の城ラピュタ」「火垂るの墓」など、作品に思い入れのある方とは、少し見え方が違ったかも知れません。
「写実的」と言われる山本さんの背景画ですが、独立した作品としてそれぞれを見ると、写実を超えた「ロマン」を感じます。
例えば、「じゃりン子チエ」の街並みの様子。瓦を1枚1枚、微妙に色を変えて塗っています。質感へのこだわりというより、自らが当事者として街に入っていく過程のように思えます。
第三者として描いているのではなく、自らが当事者としてその場に居合わせているような。「没入感」とでも言うべきでしょうか、断固とした確信が感じられるのです。
最も強烈だったのが、第4章「神話的自然の原風景」の「もののけ姫」に出てくる「シシ神の森」。ほぼ全面が緑です。上空からのわずかな光を配置しつつ、木々や岩を覆うコケ、シダ類の葉、水面、背景などがさまざまな緑で描かれています。
緑、緑、緑・・・。濃度や明度彩度の異なるさまざまな緑をじっと見詰めていると、自分も画面に引き込まれそうになります。ある意味で「危険」です。とんでもない吸引力があります。
山本さん自らが、このプロジェクトに関しては「シシ神の森の入り口から、頭が痛くなるくらいに描いた。死んだら棺桶に入れて欲しい」と書いています。
静謐で、穏やかな画面なのに、見詰めているとその裏に潜む燃えたぎる熱量を感じてしまう。こんな二律背反が感じ取れる作品は、めったにないように思いました。
これから展覧会をご覧になる方はぜひ、「シシ神の森」を10秒ほど凝視してみてください。不思議な高揚感が得られますよ。
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