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〝熱気〟あふれた怪談イベント「累の會」

 8月15日、静岡市葵区のライブバー「フリーキーショウ」で怪談イベント「累(かさね)の會」が開かれました。江戸期の怪談「累ヶ淵」をテーマにした、音楽あり演劇ありトークありの盛りだくさんな内容。大入り満員、当日券が出ないほどの盛況で、怪談というコンテンツに似合わず、会場は熱気にあふれていました。
 1部のライブパフォーマンスに続き、午後8時10分からの2部は豪華顔触れによるトークセッション。筆者は所要があって冒頭部分しか聞けませんでしたが、大いに盛り上がっていました。序盤のトークから、ほんの少しだけ紹介します。(橋)

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 パネラーはこの日の第1部にも登場した能楽師の安田登さん、怪談雑誌「幽」編集長の東雅夫さん、サブカルチャー系のライター鶴岡法斎さん。ここにスペシャルゲストとして「イブニング」誌で「累―かさねー」を連載中の松浦だるまさんが加わりました。司会は静岡大人文社会科学部の小二田誠二教授が務めました。(敬称略)

小二田:松浦さんの「累―かさねー」からどんなことを感じましたか?

東:怪談の「累」の根幹にあるテーマって「美と醜」なんですよ。これまで累をベースにしたホラー漫画では、それを皮相なところでなぞっているものが多かった。松浦さんは、われわれが全く予想しなかった現代のシチュエーションを設定して、「美と醜」をそこに突っ込んだ。その迫力、話を広げていく力に驚かされました。

安田:(「累ヶ淵」の原書である)「死霊解脱物語聞書」を読むとと分かるんですが、読み進めていくうちに累が「いい人」になってくる。地獄のありさまを聞かれて丁寧に答えているんですよ。(醜いはずの)漫画の累も、だんだんかわいく思えてきました。

松浦:私が累を知ったきっかけは、辻惟雄先生の著書「奇想の江戸挿絵」なんです。累はポピュラーな幽霊だったので、いろいろな本に描かれていた。葛飾北斎も描いていました。お岩さん、お菊さんとともに三大幽霊と言われていますが、その中で累が一番愛きょうがある。デフォルメのされ方がかわいいんです。

安田:漫画の累もだんだん「いい女」になってくる。

松浦:原作の累に感化されてというのもあるんです。「死霊解脱物語」って、累に感情移入してしまう。殺した与右衛門が悪いヤツだというのが前半部分で植え付けられますから。「性根の悪い女」とも書かれているが、同情してしまいます。こういう側面がないと、漫画の主人公たり得ないんです。醜いものに感情移入してほしくてこの漫画を描いています。だから、怖いだけではなく愛きょうは必要です。

東:なぜ江戸の人たちに人気があったのか。今、(松浦さんが)ビジュアルがかわいいとおっしゃった。江戸の人たちもそういう受け止めをしたのかもしれません。

鶴岡:「ものすごい被害者」という意味ではゴジラと似ていますよね。ゴジラは原水爆実験の被害者。それが暴れまくっているうちに(見る側が)感情移入して、いつのまにか愛すべきキャラクターになった。日本人って、猛烈な被害者に感情移入しやすいんですね。

小二田:(怪談で描かれる累の)事件そのものは、当時どこにでもあったものですよね。この作品のすごさはルポルタージュであること。取材して聞くという手法でいろいろなものを明らかにしていく。本質的にみんなが共有しているけど触れたくない部分(が明らかになる)。

鶴岡:(この怪談は)資産目当ての連続殺人。結局、現代のコンビニで売っているレディコミだったり、残酷なものをおもしろおかしく描いた漫画と、本質は近いのではないでしょうか。自分が直接関わりのない犯罪に対する、ある意味でげすな興味。そこにうまいこと歯車が合ったんだと思います。

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