映画「選挙2」をめぐるトーク(下)
8月17日、静岡市葵区のサールナートホールで行われた映画「選挙2」のトーク。想田和弘監督、「ライムスター」の宇多丸さん、起業家の家入一真さんが登場しました。終盤には「サプライズゲスト」も。第1回はこちら。第2回はこちら。(橋) ※敬称略
〈日本の選挙制度にも話が及びます〉
想田:先日、小泉進次郞さんに会ったんです。父親や祖父を見て育っただけに、振る舞いが堂々としていた。僕もお父さんのことがあるから構えていたんですが、向こうからあいさつに来られると正直、悪い気はしませんよね。ファンが多いのもよく分かります。
宇多丸:そういうの、おっかないですよね。実際に会ったらやられてしまう政治家。いっぱいいますよ。まさしくジャイアンというか。
想田:ジャイアンの魅力と、実際に打ち出される政策は、方向性を分けて考えないといけません。魅力だけに引きずられるとどうなっちゃうかなと。
宇多丸:(元米大統領の)ブッシュJr.とかも、会うと好きになっちゃうって言いますもんね。
想田:今の時代は、メディアを通じて政治家を知るわけですよ。特に国政レベルではそう。俳優性が問われる。いい俳優であればあるほど通りやすくなる。力のある政治家がだいたいルックスがいいのは、偶然ではありません。
家入:(元兵庫県議の)野々村さん、みんなネット上でいじっていて僕も笑っていました。でも途中から「笑っちゃいけない」と思い始めた。選んだのは、僕たちじゃないですか。選挙の時に街頭演説をあの調子でやっていたら、「熱いヤツ」と思ったかも知れない。少なからず感動して票を入れた人もいたということですよ。
想田:選挙戦をどうすればいいか。選挙カー、ポスターは全部むだだからやめた方がいいですね。その代わり、選挙期間中は朝から晩まで選管の仕切りで毎日ディベートすればいいんです。もう、うんざりするぐらい発言する。質問の時間を設けて、あらかじめ答えを用意するんじゃなく、答えてもらう。そんなやりとりから、どんな考え、どんな振る舞いの人物かが分かってくると思います。
〈ここで同映画に出演の山内和彦さん(元川崎市議)が飛び入り参加しました〉
山内:(映画で描かれた)2011年は、まだネット選挙が解禁されていませんでした。今度出馬するときは家入さんのやり方を参考にしたいですね。そもそも、僕だけじゃなくて誰でも出られるような選挙にしなくては。
家入:ネットを使えば、まだ法整備されていないところを突いて活動ができるという面はありますね。
山内:いろいろなやり方があるということを、若者に伝えるのが大切だと思うんです。(供託金)300万円って高いハードルですからね。
〈最後は現在の政治の状況について〉
宇多丸:「選挙2」は、海外からどんな反応があったんですか?
想田:原発事故後の日本が映っている。そうした観点からの反響が大きいですね。「アパシー」という言い方をするんですが、(日本社会の)巨大な無関心が衝撃みたいです。つまり、あれだけの原発事故があったのなら、政治で方向転換しなくてはいけない。でもそうならない。議論も起こらない。海外の人たちは、日本はどうするだろうと見るわけです。ところが2012年の衆院選で自民党が勝った。事故後の最初の国政選挙で原発推進政党が圧勝した。海外からみると謎なんです。
宇多丸:個別の政策を選んで票を入れているわけではない。やっぱり民主党はだらしない、自民党じゃないとだめね、みたいな。個別のチョイスはないはずなのに、物事が次々決められていく。
想田:強い言葉を使うけれど。僕は「熱狂なきファシズム」と言っている。大げさじゃないかと言われるが、2012年の自民党の改憲草案を読み込むと、民主主義を終了しましょうという提案にしか読めない。これは低温やけどみたいなファシズム。「なんだか変だよね」みたいなところから、だんだん皮膚が焦げていく。そこをまずは認識しないと。
家入:この間、友達のろくでなし子が捕まった。いろいろな見方があると思いますが、僕は「いざとなったら捕まえちゃう国になってるんだな」と感じた。そういう国になりつつあるということが、よく分かりましたね。
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