トップページ >07)アート >〝直木賞〟選考、高校生の本音飛び交う

〝直木賞〟選考、高校生の本音飛び交う

 9月5日夕刊「生活彩々」では、読書の楽しみを広げる試みをいくつか紹介しました。読んだ本の感想を語り合う、「読書会」の進化形とも言うべき事例。筆者自身も取材を通じてさまざまな本に出合いました。(橋)

20140905webコラム1.JPG

 

 県立磐田南高校で開かれた「高校生が選ぶ直木賞」の取材にあたり、筆者自身も候補に挙がった6冊をすべて読みました。
 「個人的な直木賞」として胸に秘めていたのは、実際に同賞に選ばれた黒川博行さんの「破門」千早茜さんの「男ともだち」の2冊。しかし、大変興味深いことに、高校生にはあまりウケがよくありませんでした。

20140905webコラム2.JPG

 「破門」は1次選考でただ1冊落選。「ヤクザの世界、意味がわからない」「そうそう、ケンカの理由がよくわからないし」。同じ登場人物が活躍する「疫病神シリーズ」の第5弾。いきなりこれを読んだことで、設定が理解できない面もあったようです。「え? そんなことあったっけ? みたいなエピソードが語られると困惑する」
 
 お一人、なかなか読書の本質を突く発言をする女子もいて、非常に興味深く感じました。「読書というのは、自分が経験したことのないことを経験できるのが楽しい。こういうヤクザとか落ちぶれた人間の世界はのぞいたことがない。だからこそ、引き付けられる」。なるほど。こちらが勉強させてもらいました。

 「男ともだち」は、大人の男女の細かい機微が描かれていて、さすがに高校生は共感できかねるものがあったかもしれません。筆者は、何というか、鼻の奥が「ツン」となる感覚が何度もありましたが・・・。

 「恋愛について、まだ経験が足りないから・・・」と口ごもる生徒も。ほほ笑ましい光景です。そんな中でも冷静にこの小説の構造を分析する生徒もいて、それがまた面白い。「主人公が終始あがいているところが良い。章を経るごとに、主人公と周囲の関係がすっきりしていく。そこが好き」。おお。なるほど、なるほど。確かにそうだ。

 聞いているうちに、自分も議論に参加したくなった今回の企画。担当の青島玲子教諭のシメの言葉に感銘を受けました。
  「直木賞を獲った『破門』以外の5作は、どこか作者の意図した結末に向かって登場人物の行動が当てはめられている気がする。『破門』だけが、物語のご都合に合わせずに行動する。人間ってしょせんこういうもの、と思わせるでしょう。そこが『大人のエンターテインメント』なんだよ」
 なるほど、なるほど、なるほど。もう1度、同作を読んでみたくなりました。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

静岡新聞社文化生活部ツイッター ⇒⇒⇒ https://twitter.com/ats_bunka?lang=ja

「彩々プラス」の更新情報もお伝えしています。

コメントを投稿

コメントを表示する前に承認が必要です。コメントが表示されるまで、少し時間がかかる場合がございます。


画像の中に見える文字を入力してください。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.at-s.com/mt1/mt-tb.cgi/48768

トップページ >07)アート >〝直木賞〟選考、高校生の本音飛び交う

ご案内

静岡新聞文化生活部の記者ブログです。
取材時のエピソードなどをアップします。
音楽、アート、鉄道、くらしなどがテーマ。
紙面にプラスのこぼれ話が満載です。


★文化生活部ツイッター ⇒こちら
「くらしず」の更新情報もお伝えします。

★アットエスニュース ⇒こちら
静岡新聞の公式ニュースサイトです。