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「美少女の美術史」展、企画の「トリメガ研究所」鼎談(2)

 静岡県立美術館で開催中の「美少女の美術史」展。初日に行われた、「トリメガ研究所」のトークショー抄録第2弾です。「トリメガー」とは、静岡県立美術館の村上敬さん、青森県立美術館の工藤健志さん、島根県立石見美術館の川西由里さんからなる仮想のラボ。トーク中盤では、地方美術館の在り方にも話が及びました。
 写真はエントランスに置かれたobさんの作品。7月12日から9月7日まで行われた青森展でライブペインティングしたものです。(橋)
※第1弾はこちら。敬称略

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村上:(「美少女の美術史」展、2010年の「ロボットと美術」展の)告知をすると、ありがたいことに「東京に来ないんですか」と言われることが多いですね。われわれは青森と島根と静岡の(美術館の)職員で、〝自社製品〟としてこうした展覧会をやっている。回覧パッケージを作っているわけではないんです。

工藤:今は、文化も経済も東京中心。だから、特に東京に住んでいる人は、東京でやって当たり前と無自覚に思ってしまいます。でも、決してありとあらゆるものが東京に集中しているわけではありません。もし集中しているとすれば、逆に地方に行かないと見られないものを作っていく必要がある。そういうバランスを取っていきたいですね。辺境の地のわれわれは。

川西:まあ、静岡は辺境じゃありませんけれどね(笑)。

工藤:青森と島根はそうですから。意地ですね。「東京ではやるものか」という。へりくだり過ぎず、ドンと構えて「こっちに来い」という態度でやってもいいんじゃないかと。バランスを取る意味でも、それぐらい意地を張って良いと思います。

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工藤:美術館は、サブカルチャーと〝美術〟を分けて考えがちですよね。(〝美術〟の場合は)集客については割り切って考えて、人は入らないけれどやることもある。でも、そういう方法論って面白くない。(両者を)うまくミックスすることが必要ではないでしょうか。

村上:ある漫画家さんの作品が、美術のフィールドから見ても価値が高いことを称揚するような。例えば「ロボット展」のときは工学の分野などとからめて、社会の状況が見えてくるような展示をしました。今回も、「時代」という縦と、「ジャンル」という「横」のマトリックスを取って、いろいろな時代でいろいろな少女がいろいろなフィールドの人に表現されてきたことを紹介したい。その総体がわれわれの心性を表してくれるんです。純粋な美人画展、サブカル展ではなく、混交することで面白さが出てくる。

川西:「ロボット展」から受け継がれているのは、社会的背景になるべく広く目配りすること。そして作品にも境界を設けないこと。静岡展でも、油絵の隣にフィギュアが展示されていますよね。出品作家が100人以上いて、しかも江戸時代から現代にまたがっている。これ、出品コストも大変なんですよ。私たちが企画するような、隣に何が来るかわからない展覧会に出品することは、製作会社側からすれば、目に見えるメリットはないかもしれない。そういう点でご協力いただくことが難しかった面はあります。今回、快くご協力いただいた会社には非常に感謝しています。つまり、あえなく敗れ去ったコンテンツもあるということ。(来場者から)「あれがいないじゃないか」などと言われますが、いろいろと事情があるんです(笑)。

工藤:皆さんが想像されるもの(キャラクターなど)には、すべてアプローチしました。われわれは文化史的な視点で切ってみたいと言って交渉したけれど、ことごとく断られた。費用の面でも、安売りできないというのは分かります。逆に言えば、出品してくれた版元はこういう文化的な事業に対して、非常に好意的ということです。

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