世界屈指の「ピアノの難曲」
10月13日、静岡市葵区の静岡音楽館AOIでロシア人ピアニスト、ボリス・ベレゾフスキーさんのリサイタルが行われました。ラフマニノフ、メトネルらロシア人作曲家でまとめたプログラム。最後の演目は「難曲中の難曲」として知られるバラキレフの「イスラメイ(東洋風幻想曲)」でした。(橋)
コーカサス地方へ旅行したバラキレフが、同地の民俗舞曲を基に作り上げたという同曲。1869年にニコライ・ルービンシュタインが初演しました。超高速のフレーズが次々出てくる難曲で、ある高名なピアニストは「あらゆるピアノ曲の中で、一番難しい」と言ったそうです。
力強いアタックで、ホール全体を楽器として響かせるような演奏を聴かせたベレゾフスキーさん。最終曲を前に、譜面台に置いた布で3度顔をぬぐいました。
「ふうっ」と息を吐いた次の瞬間、すさまじい短音の連打が始まりました。「アレグロ・アジタート(速く、気ぜわしく)」の第1主題。右手左手が何度も交差され、88鍵全てが鳴っているような高速の演奏が続きます。
タタールの民謡をベースにしたという優雅な第2主題を経て、熱狂的な終盤へ。ベレゾフスキーさんの顔は次第に紅潮し、怒濤のラストフレーズが終わると、「弾ききった」と言わんばかりに両手を広げました。客席からは「ブラボー」の声と割れんばかりの拍手。AOI全体が熱気に包まれました。
台風19号が接近していたこの日、公演中に客席のあちこちから「エリアメール」の着信音が聞こえてきました。ベレゾフスキーさんにとっては、良い条件とは言えなかったことでしょう。そうしたもやもやを、全て打ち払う大熱演。3度応えたアンコールでの満足そうな表情が、充実した演奏を物語っていました。
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