栗コーダーカルテットとの対話(下)
10月7日夕刊「情熱細胞」に関連した、「栗コーダーカルテット」のインタビュー第3弾。近藤研二さんは、所要でインタビュー途中に退席されています。第1弾はこちら。第2弾はこちら。(橋)※発言者敬称略
▼8月にベスト盤が出ましたね。膨大な音源を聞き返してみて、どんなことを感じましたか?
関島岳郎「初期の録音はアマチュアで使うような素朴な機器を使っていて、そこでまず時代の移り変わりを感じました。ときどき車の音が入っていたりするんです。マスターはDATでした」
栗原正己「デジタルレコーディングの黎明期でしたから。(新しい機器が)この大きさでデジタルなんだ、と盛り上がっていたころ」
関島「でも、例えば湾岸スタジオで録音した1枚目なんかも、今聞いてみると演奏は悪くない。これは驚きでした。『写真の中の君』は、10年目のベスト盤では演奏し直したんです。でも今回のベスト盤を作るにあたって、2曲を聞き比べたら最初に録音した方が良いんですよね。10年前はリバーブが安っぽいなと感じたけれど、今聞くと悪くない。演奏もフレッシュだし。自分たちも少し大人になって、聞き分けができるようになったのかなと思いました」
▼楽曲の作り方に何か変化はありましたか?
関島「変化していないのは構築の仕方。20年たって、頑張らなくても楽曲が構築できるようになりました。必要ない者はなるべく入れない。一つ一つの音色をより大切にする。音色が良ければ埋まってなくても大丈夫と思えるようになった」
栗原「引き算ですね。ある時期からウクレレを取り入れるようになったことも大きかったように思います。4本しか弦がないですからね。ウクレレとリコーダーで表現することで、今まで以上に引き算をするようになった。(マイケル・ジャクソンの)『スリラー』などは、音の分厚い原曲からどこまで引けるかという挑戦でした」
川口義之「(映画)『スター・ウォーズ』のカバーアルバムでも4曲やっていますが、確かその時も栗原さんはそういう作り方をしていた」
栗原「どこまで抜けるか」
川口「『この音は抜けないんだよね』みたいな話はしていました」
関島「童謡や唱歌を収めたアルバム『あの歌この歌』(2013年)は、今までに発表したアルバムの中で一番音が薄い。最低限の音しか入っていません。10年前にこのアルバムを作ったら、もう少し違った感じになったのではないでしょうか」
▼リコーダーのユーモラスな側面を打ち出しつつ、表現の幅を広げる試みを続けてきましたね。今後はどんな活動をしてみたいですか?
栗原「世代の枠を超えるというのを引き続きテーマにしたい。今、客席には4歳から80代までがいらっしゃっているんです」
関島「法事の席に例える人もいますからね。4世代が集まっているという」
川口「ここ2、3年、ヨーロッパやアジアで海外公演をやっていますが、思った以上に評判が良い。もっとたくさんやりたいですね」
栗原「音楽に影響するところはあるでしょうしね。状況が許せばまた行きたい」
川口「〝聖地〟アメリカは欠かせないですね。ショウビズが好きで、テレビや映画を見るのが大好きな人にダース・ベイダー(『帝国のマーチ』)を聞かせたい。どういう反応があるのか楽しみですね。ヨーロッパではものすごく盛り上がりました。一方でアジアはこの曲が意外に知られていない。僕らは原曲とのギャップを面白がってもらっているところもある。アメリカの反応を知りたいですね」
栗原「あちこちに呼んでいただき、喜んでもらえることが多くなった。自分のやっていることが、少しは世の中の立っていると感じられるようになりました。活動を続けられるうちは、できるだけそういう役目を負い続けたいですね」
関島「自分たちの演奏が、社会に何か還元できると思っているんです。ボランティア的な演奏も機会があればしたいですね。このバンドは47都道府県中44は行っているんです。この秋で徳島に初めて行きます。残るは島根と高知。ぜひ訪れたいですね」
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