安東米店長坂さんの「米講座」
10月23日夕刊の生活面特集「くらしプレミアム」で、新米の炊き方についておさらいしました。「土鍋編」でお伝えした静岡市健康文化交流館「来・て・こ」の講座「我らごはん隊! 三度炊けばわかる稲・米・飯」は、非常に充実した内容でした。取材に行った10月4日に続いて18日にも開かれ、土鍋で玄米を炊いたそうです。(橋)
4日の講座は2部構成になっていて、紙面で紹介した実践編の前に、座学の時間が用意されていました。講師を務めた安東米店(静岡市葵区)の長坂潔暁さんは、あらゆる角度から米とご飯について考察する「米の哲学者」のようなたたずまい。講義に聞き入りました。
講義内容をいくつか。覚書のような形で2ネタお送りします。
江戸期の米の消費量は1人当たり、年間約150キロ。これは尺貫法で言う1石です。つまり、加賀百万石ということは、100万人を養う生産量があったということですね。
日本では弥生時代から明治時代まで、無農薬で無肥料で栽培していたんですが、この時代に1反(約990平方メートル)で取れる米がだいたい1石ぐらいだった。太陽と水さえあれば、人間1人分の生命維持できる土地の広さ。それが1反だったわけです。
お米というのは非常に「利回り」の良い作物です。種1粒に対して、800~1000粒取れます。つまり、1年で量が千倍になるんです。
他の穀物と比較してみましょう。麦は、だいたい1粒から100粒です。そんなに少ないのか、と思われるかもしれませんが、中世はもっと少なかった。3~4粒だったとも言われています。
この差が、景観の違いにつながってきます。ヨーロッパの風景はなんだかだだっ広い畑が続いているでしょう。単位面積当たりの収量が少ない分だけ、畑を広げる必要があったんです。
それに比べてアジアの風景はどこかごちゃごちゃしている。畑と家が近い位置にある。それは稲だからなんです。少ない面積でたくさん採れる作物だからです。
社会学、生物学、政治学、人類学、歴史学・・・。いろいろな学問が交錯した、有意義な講座でした。
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