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「ヨコトリ2014」、中勘助の詩集

 横浜市の横浜美術館、新港ピアで開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2014」。どこかに「静岡」の痕跡がないかと会場を探し回りました。会期は3日までです。(橋)

 

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 現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ」は2001年に始まりました。ことしが5回目。現代美術ファンにはおなじみの展覧会です。

 

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 ことしのアーティスティック・ディレクターは現代美術家の森村泰昌さん。2012年4~6月には静岡市美術館で個展を開いています。

 「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」というタイトルのもと、65組の作家の作品が展示されています。

 

 森村さんらしい、皮肉と諧謔に満ちた作品が並ぶ中で、少し様相が違ったのが、第3話「華氏451はいかに芸術にあらわれたか」です。レイ・ブラッドベリのSF小説を基底に、本や書物、またそれが指し示すものやコトへの記憶を消え去ろうする勢力へのアンチテーゼとも言うべき作品が並びました。

 

 ここで、初めて静岡ゆかりの作家の名前を発見しました。中勘助。「銀の匙」で知られ、一時期は転地療養のために現在の静岡市葵区羽鳥に住みました。

 「大谷芳久コレクション」の一つとして1938年の詩集「百城を落す」が紹介されています。「日本刀をさげて大陸へわたる 皇道樂土を建設のために」と始まる、戦争を賛美する言葉の数々。少しショックを受けました。佐藤春夫、三好達治ら名だたる文学者の詩集や随筆も並べて展示されていて、当時の文学者の戦時下のありようがすっかり理解できます。

 

 キャプションにもあるとおり、この展示は文学者たちを糾弾しようという意図のものではありません。「時代の流れに身を任せた芸術家の姿」そのものを見通すことが求められるのだと感じました。

 

 むしろ、こうした言葉に熱狂した(であろう)読者、すなわち国民の姿に、自分を重ね合わせました。翼賛的な言説は、こうしてじわじわと広がっていく・・・。背筋が寒くなる思いでした。

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