「トラベラーズ」の伝承歌を歌うサム・リー新作
11月27日夕刊「とんがりエンタ」で紹介した英国人フォーク歌手、サム・リー。12月12日に焼津市で公演しますが、12月17日には新アルバム「ザ・フェイド・イン・タイム」が日本先行発売されます。一足先に聞くことができました。(橋)
共同プロデューサーはペンギン・カフェのアーサー・ジェフス。当初はことしの年明けにリリース予定だった2作目が難産の末、やっと出来上がりました。名義は「サム・リー&フレンズ」です。
1作目と同様、楽曲はすべてイギリスやアイルランドのトラベラーズの伝承歌です。単なる「フォークミュージック」にとどまらない、多様な楽器を使ったカラフルなアレンジは今作でも健在。疾走感あふれるパーカッションの反復フレーズが全体を貫く1曲目「ブライン家のジョニー」から、不思議な残響音のピアノに合わせて歌い上げる最終の12曲目「苔むした家」まで、一気に聞かせます。
聞きどころの1つは、全8曲に参加したフローラ・カーゾンクのバイオリン。もの悲しく、どこかエキゾチックな気品を感じさせる東欧ロマの「あの」音が、サム・リーのバリトンボーカルに寄り添ったり、立ち向かったり。カーゾンクはクラシック出身の奏者ですが、何度も東欧におもむいて研究を重ねているそうです。
日本の琴も大活躍。特に6曲目の「ムーアロック・マギー」ではイントロから、奥行きのある響きを聞かせます。トランペットやチューバが加わるアレンジ、かなり斬新です。
トラベラーズは12~13世紀に大陸からブリテン諸島に渡ってきたとされています。数百年歌い継がれてきた曲の数々が、こうして現代的なアレンジで生まれ変わることは、社会学的な意味でも意義があることだと思います。
先人たちへの敬意がにじみ出るサム・リーの歌声。ぜひCDやコンサートで耳にしてみてください。
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