トップページ >03)フード >静岡市清水区、「湯沢のそば」エピソード

静岡市清水区、「湯沢のそば」エピソード

 夕刊「旅食」面の連載「味わう文化財~しずおかの在来作物」。12月18日は、静岡市清水区湯沢地区のソバを取り上げた第8シリーズの最終回でした。同地区で一番の古老、大石初枝さんの話は、とても興味深いものでした。(橋)

20141224web2.jpg

 

 

 大正14年生まれの初枝さんは、同地区で生まれ、同地区で育った方。ご主人は外の地区から迎え(現在は死去)、今も生家に住んでいます。清水区内などにひ孫が10人以上いるそうです。
  「ここに住んでいると、このソバが特徴があるものとは気付かない。(静岡在来そばブランド化推進協議会代表の)田形さんがいらっしゃって、こんこんとお話くださって『そうなのか』と」

20141224web1.jpg

 
 新聞記事にもいくつかのエピソードを書きましたが、この地区では冠婚葬祭の振る舞いには必ずそばを出しています。
 「物心ついた時からずっと身近にソバがある。子供の頃は、おばあちゃん(自身のお母さんのこと)がこしらえてくれた。上手だったよ」

 そばは日常食でもあり、月に1度は家庭で打っていたそうです。

 かつての焼き畑の話もしてもらいました。使う場所は、杉を伐採した後の半町歩(約5000平方㍍)ほどの山林。地面に杉の枝を広げ、周囲には燃えやすいものがない間衝地帯を作ります。他の山林に燃え広がらないための工夫です。

 斜面の下から火をつけて、全体が燃え終わったら、ソバの種をまきます。焼き畑は灰の肥料がたっぷりで、害虫も付きにくかったそうです。

 「昔は山林が良かった(木材が高く売れた)からね。何軒かでよくやっただよ。いいそばができて、それはおいしいっけ」

 こうしたやり方は、昭和40年代中期まで続きました。木材の値下がりと歩調を合わせていつしか消えていったそうです。

 「今は、特にそばを食べたいとは思わないね」と初枝さん。言葉とは裏腹に、小さい畑で毎年ソバを育て、特製の缶に入れて種を保存することを続けています。
 「だって、絶やしちゃならんもん」。使命感が言葉ににじみました。

コメントを投稿

コメントを表示する前に承認が必要です。コメントが表示されるまで、少し時間がかかる場合がございます。


画像の中に見える文字を入力してください。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.at-s.com/mt1/mt-tb.cgi/49233

トップページ >03)フード >静岡市清水区、「湯沢のそば」エピソード

ご案内

静岡新聞文化生活部の記者ブログです。
取材時のエピソードなどをアップします。
音楽、アート、鉄道、くらしなどがテーマ。
紙面にプラスのこぼれ話が満載です。


★文化生活部ツイッター ⇒こちら
「くらしず」の更新情報もお伝えします。

★アットエスニュース ⇒こちら
静岡新聞の公式ニュースサイトです。