2014年、取材ノートから(1)豆汁さんと尖閣さん
2014年もあと4日。文化生活部記者4人がそれぞれ、ことし1年の記憶に残る取材を振り返ります。第1回は、4月にファーストアルバムを発表した静岡市のヒップホップグループ「豆尖」について。(橋)
豆尖は豆汁さんと尖閣さんという二人のラッパー(兼DJ)のユニットです。インタビューしたのは4月21日夜。静岡市葵区のライブバー「フリーキーショウ」でした。
彼らの作品「DIO」は、トラックの音楽性の多様さもさることながら、ふんわりした情緒とソリッドな語感が理想的にブレンドされたリリックがとても魅力的。ラップというより、現代詩やポエトリーリーディングという言葉が似合うような曲も見受けられます。
ヒップホップやラップといえば、一般的にはちょっとマッチョなイメージ。でも、彼らはそれとは全く異なるサウンドと詩世界を提示しました。筆者は10回以上この作品を聞き通して取材に臨みました。
さぞや「キレッキレ」かつ、ある意味で偏屈な方々だろうなあと想像していましたが、実像は全く違っていました。約束の場所に現れたのは、腰が低い、ちょっとはにかんだような表情を見せる二人。最初は口が重いといってもいい受け答えでしたが、筆者が曲ごとの感想を述べ始めると、徐々にうち解けた雰囲気になってくれました。
「人見知りなので、誰かと組んでやるのはあきらめていたところがあった」という豆汁さん。「彼は彼なりの、僕は僕なりのリリックを考えてくる。お互いこうしたほうがいいというようなことは言わない」という尖閣さん。キャラクターの異なる二人ですが、「DIO」では「分離」ではなく「融合」を強く感じます。
この盤は、筆者にとって、ことしのベストアルバムです。ワールドミュージックからクラシックまで、さまざまな作品を聴きましたが、間違いなくこれが一番です。
長尺の物語を紡ぐ「夢の背中」、ほろりとさせられる〝静岡賛歌〟「baby gozzilla」、滝つぼで撮影した浮遊感たっぷりのPVも美しい「merci for healthy」…。先鋭的だけれどポップな感覚も失わない、こんなに素晴らしいグループが本県に存在していることを、とてもうれしく思います。
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