アートと地域活性化を考える~山口裕美さんの講演から
3月8日に取材した「地域文化活動賞」の表彰式。グランシップに受賞した8団体の代表者が集いました。その後の地域フォーラムでは、アートプロデューサーの山口裕美さんが講演。とても興味深い内容でした。(橋)
山口さんはまず、日本経済新聞の約20年前の記事を示し、日本のアート界の現状を解説しました。
「予算がハードウエアに集中しています。これは今も変わらない。第1次インフラである芸術家、ヒューマンにお金を流れるようにしておかないと継続するのが難しくなります。2015年の今も状況は同じです」
次に、地域を巻き込んだアートイベントの成功例を写真を交えて紹介しました。新潟県十日町市の「大地の芸術祭」、香川県の離島で開かれる「瀬戸内国際芸術祭」、金沢市の「金沢21世紀美術館」。成功の鍵として(1)参加アーティストがその土地で制作すること(2)食文化との連携(3)日常に使用するものとしての有用性とのバランス(4)建築家とのコラボレーション などを挙げました。
建築家との協働事例で、特に薦めたのが瀬戸内海の豊島美術館。
「これが美術館? と思うかもしれない。建築に外の雨や太陽を全部受け止める仕掛けが施してあります。少しずつ湧き出てくる水の粒が、撥水性の高い床を走り始める。ある場所でたまって大きな水たまりになったとたん、水琴窟のような効果がある場所に、音を立てながら吸い込まれていく。これは体験しないと分かりません」
山口さんのフランス人の友人は「帰りたくない」と言ったそうです。
なぜ人がアートに人が集まり、地域が活性化するのか。なぜ現代アートでなければならないか。こんなことをおっしゃっていました。
「新しい物の見方が提示できるのが大きいですね。見慣れた素材が、アーティストによって変化する。見た人に解放感を与えたり、知的ゲームのような、『発見するおもしろさ』もあります。大自然との融合、SNSで誰かに伝えたくなる魅力も挙げられます」
現代アートを素材にした企画はコストパフォーマンスが良いという山口さん。近年の若者の傾向にも言及し、地域づくりに貢献するアートイベントの推進を訴えました。
「自分のことだけを考える時代は終わりました。東日本大震災でみんな、つらいカタストロフを経験した。誰もが地域とのつながりを大切にして、相手の顔が見える暮らしを望み始めている。人は他人のために行うことでパワーが出るんです」
力強い締めくくりに、会場から大きな拍手がわきました。
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