前衛芸術家の矜持
83歳の前衛芸術家丹羽勝次さんの個展「What’s going on2015」が静岡市葵区の金座ボタニカで5月10日まで開かれています。展示されているまっ黒のスギ板は、丹羽さんがバーナーで表面を「これでもか!」と焦がしたものです。個展のテーマは昭和。満州事変が起きた昭和6年生まれの丹羽さんは「自分の今が、平成の今たりうるか?」と問いかけます。(小)
「昭和の日」の4月29日には、コントラバス奏者の中司和芳さんとサックス奏者の柴田鑑さんが会場でライブを開きました。丹羽さんの作品にインスピレーションを受け「熱く、黒く、焦がすような演奏をしたい」と意気込んでいた2人。冒頭のローリング・ストーンズ「Paint It Black」からオリジナル曲、リズム中心のセッションからメロディアスな展開に移行していったインプロビゼーション、展示会と同タイトルの「What’s going on」まで、演奏は瞬く間に進み、会場は年配の方も多かったのですが、ちょっとしたグルーブ感に包まれました。中司さんも「(丹羽さんの個展に対する答えとして)アナログ楽器を使って今の自分たちの音を出した」と充実した様子。柴田さんはサックスだけでなく、鍵盤ハーモニカを手にしたのですが、コードの押さえ方が非常にクールでした。
演奏当日、会場をよくみると、丹羽さんは個展初日から作品にさらに手を加えていました。「完成」「作る」という言葉を嫌う丹羽さんの、「前衛」であることの矜持、時代に対峙する姿勢のようなものを感じました。
古いレジデンスを改造した金座ボタニカも可変をテーマにした建物です。場所、アート、音楽、なにごとも流れの中の深みから何かがぽこんと胎動するのだと感じたひとときでした。
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