海の色、仕事の色
グランシップで6日まで開かれている子ども向け体験イベント「こどものくに」の、海をテーマにした工作コーナーの一角に、美術家でグラフィックデザイナーの天利道子さんの作品が飾られています。「漁師の人と海の色」というタイトルです。(小)
静岡県と福島県の漁師約25人に、イメージする海の色をカラーチャートから選んでもらい、その色を漁師さんのポートレート写真に重ねたものです。
漁師さんたちが選んだ海の色は、多くが中間色で少し暗く、けっして鮮やかではありません。我々が「海」と聞いて思い浮かべるきらきらと輝く夏の海の色からはかけ離れています。
でもどの海の色にもリアリティが立ち込めています。まだ陽光がきらめいていない未明の海の色、魚影を追って目を凝らした先の海面の色。
「漁師の人と海の色」は天利さんが35年前から続けているコンセプチュアルアートで、漁師さんたちは、「この色のときには魚がとれるから」などという理由で、色を選んでくれるそうです。まさに仕事(なりわい)の色です。
展示作品の中にひときわ黒い色を選んだ福島県の漁師さんもいました。とても濃く塗り重ねられているため、目をこらさないとその漁師さんの顔写真の輪郭は見えません。東日本大震災の津波の色だそうです。
ポートレートの下には漁師さんたちからこどもたちへのメッセージも記されています。会場では、多くの子どもたちがじっと作品に見入っていました。
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