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21世紀建築「マリナート」と「ぐるり写真」

 建築界のノーベル賞とも言われる「プリツカー賞」も受賞している槇文彦氏が設計を主導した静岡市清水文化会館マリナートを取材しました。本日29日朝刊の特集連載「21世紀建築」で紹介しています。(小)

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 マリナートは、利用者や運営者が利用しやすいように細部が作り込まれています。なおかつ芸術的な達成感のある建築物です。プロジェクトは行政が民間に設計、建築、運営を長期間一括委託する「PFI」と呼ばれる手法で進められました。そのため、設計側と運営側が、設計当初から徹底的に運用面について議論したそうです。プロジェクトのとりまとめ役だった清水文化事業サポートの幹部は「予算や敷地面積など制約がある中、オリジナルの建物を造形してくれた」と明かします。

 正直なところ、一流建築家の設計した建築物の中には芸術性や理念先行で利用者のことをそんなに考えていないのではないかと思えてしまう建築物も少なくありません。すごくスタイリッシュな建物の通路に、大きく「段差に注意!」などと注意書きが張られているのをみると、とても悲しい気持ちになります。

 槇氏は今年に入り、イラク系英国人の建築家ザハ・ハディド女史が設計した新国立競技場案について、予算を大幅に超える設計で運用面でも不具合が多いと批判し、注目を集めました。

 マリナートのピンクと青のホール壁面は照明専門家を呼んで光の当たり具合まで研究したそうです。「スタッコアンティコ」と呼ばれるヨーロッパの伝統的な漆喰塗りの技法を用いた、とても繊細な色合いの壁面で、夜になると照明が当たり、ガラス壁越しに建物周辺を優しく照らし出します。そういった細部へのこだわりに、槇氏と事務所スタッフの建築に対する真摯(しんし)な姿勢を強く感じます。

 日本を代表するモダニズム建築家の、仕事に対する矜持を垣間見ることのできた取材でした。

 

 

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【追記】本紙紙面のメイン写真をスマートフォンのアプリで撮影すると、360度カメラで撮影したマリナートの大ホールの写真をご覧になれます。「ぐるり写真」、ぜひご覧ください。

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