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ボカロ、文楽、SPAC、押井

 ヤマハが開発した歌声合成技術「ボーカロイド」を用いたオリジナル楽曲に文楽を組み合わせた短編映画「葵上」を見ました。恥ずかしながらボカロ文化にうといため、初音ミクの物語という文脈で作品を読み解く力がないのですが、17世紀に生まれた伝統芸能とテクノロジーを駆使した21世紀の音楽文化が融合した作品に斬新さを感じました。(小)

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 「葵上」は「源氏物語」を下敷きにした同名能楽作品の翻案です。主な登場人物は、作曲家のヒカル、歌手のアオイ、ボーカロイドのミドリの3人。能楽作品における光源氏、葵上、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)にあたります。

 構成で面白かったのが、ボーカロイドのミドリが怨霊役を担っていること。髪を振り乱して呪詛を募っているのが擬人化されたデジタル音声のキャラクター(の人形)というのが、いかにも21世紀的です。

 そういえば、SPACの宮城聰総監督も、声と身体を分離した手法で数々の名作をつくりあげています。宮城総監督は生身の俳優を演出して文楽的に分離させている凄さがあるわけですが、デジタルを組み合わせたこのボーカロイド文楽についてもぜひ批評をうかがいたいところです。

 文楽は、浄瑠璃に人形の振り付けを付与して芸能として定着しました。「葵上」の加納真監督によると、ミュージックビデオやVJなど音楽の視覚的補助として映像を合わせる芸能は現代にも少なくないそうです。

 また、コンピューター技術を駆使した文楽的映像作品というと押井守監督の「イノセンス」が思い浮かびます。「葵上」を見た上で押井監督作品について考えると、デジタル社会における情念やオーラ、あるいは「魂」の在り方について押井監督が思いを巡らせていたことにあらためて気づきます。

 そういえば、押井監督の新作「東京無国籍少女」が今月下旬から公開されます。でも上映は大都市圏のみ。せっかく監督が熱海市在住なのだから、レイトショーでもよいのでぜひ県内でも上映していただきたい。いかがでしょうか、サールナートホールさん。

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