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蔵書と文化を守る 県立葵文庫

 県立中央図書館の前身に、葵文庫という施設がありました。もともとは旧徳川幕府の貴重図書のコレクションを指します。これらを保管するため、今から90年前の1925(大正14)年、現在の県庁隣に開館したのが「県立葵文庫」。こうした歴史を紹介する講演会が開かれました。(宮)

くらし葵文庫.JPG

 講師を務めたのは、中央図書館に勤務した職員でつくる「葵文庫の会」の田中文雄さん。もともと高校の先生で、葵文庫について研究を重ねています。

 核となる幕府の和漢洋書は3千冊超。地元の中学や知事から寄せられた収集図書も加わり、開館当初から約2万2千冊を誇りました。建設費用の17万円は、徳川宗家や実業家からの寄付が中心でした。

 貸し出し業務の他、図書の収集・保管・公開、そして講演会などの文化活動にも積極的でした。現在の図書館に求められる機能を古くから備えていたことが分かります。

 業務は戦争中も途切れませんでした。1944年、全国各地で本土空襲が始まると、人間と同じように図書の疎開が始まりました。葵文庫も職員がリヤカーを引き、貴重図書から順に郊外へと運び出しました。45年の静岡空襲では、当時の加藤忠雄文庫長が泊まり込みで消化活動に奔走し、7万冊の蔵書を救った記録が残っています。4日後には破損箇所の修理が行われました。

 終戦直後の8月19日には新刊図書の配給があり、その後蔵書整理が始まりました。図書、そして文化を決して手放さなかった人たちのエピソードに驚かされます。

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