「世に不思議なし」
県内の気象状況について解説する科学面の連載「しずおかの気象」が、25日付で最終回を迎えました。筆者の遠山忠昭静岡地方気象台予報官には、多忙を極める業務の合間を縫って、読み応えのある原稿を毎月執筆していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。(小)
最終回のテーマは「桜の開花」。開花のメカニズムが、前年冬から春先にかけての気象と密接にかかわっていることをグラフを使って示しています。
今年は、東京や名古屋ですでに開花しているのに、なかなか静岡で開花宣言が出ませんでした。3月15日、静岡市駿河区にある静岡地方気象台の標本木を見た際には、もうすぐ咲くだろうと私などは勝手に思っていたのですが、そこからが長かった。結局東京から6日遅れ、名古屋から8日遅れの3月27日に開花宣言が出ました。
その理由について、遠山予報官は次のように解説しています。
「開花1週間前になり、遅々としてカウントダウンが進まなくなった。このとき静岡は局地的な前線が連日発生し、雲が多い上に北東風が吹き気温の上昇が抑制された。例年、フェーンによる顕著な高温が3月に発生し、一気に温度変換日数を稼ぐのだが、今年はそれもなかった。桜の開花は、静岡の秋から春先の気象を忠実に語っていた」
「しずおかの気象」ではこれまでも、静岡市にあまり雪が降らない理由や、西部に「からっ風」が吹く理由、大雨が降るメカニズムなど、県内の気象に関する疑問を、次々と解き明かしてきました。連載は静岡県の気象研究の第一人者が記した県内の天気の不思議についての虎の巻だったと思います。
不思議にはやっぱり理由があります。京極夏彦氏の言葉を借りれば、まさに「静岡の気象に不思議なし、静岡の気象凡(すべ)てが不思議なり」かと。
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