三味線の魅力
下田市出身の長唄三味線奏者稀音家新之助師匠が来静した際、インタビューする機会に恵まれました。どれほどこわもての方だろうと、お会いする前は戦々恐々としていたのですが、グランシップのロビーに現れたのは、とても洒脱でクールな師匠でした。(小)
新之助師匠が三味線の世界に入ったのは19歳。子ども時代から三味線を習っている同門の方と比べると、圧倒的な知識の差があったそうです。その差を埋めるため、楽譜だけで覚える、耳だけで覚えるなど、独自の暗記方法を駆使し、一刻を惜しんで曲を覚えていったそうです。昨年10月に重要無形文化財「歌舞伎」の総合認定保持者に選ばれましたが、家柄が重要視される伝統芸能の世界では、とても珍しい事柄なのだそうです。「長唄三味線では、先輩に1人いただけ」とのことでした。
長唄三味線は歌舞伎の伴奏音楽として江戸時代に発展しました。明治時代に稀音家浄観という傑物が出て、長唄三味線を発展、独立させるわけですが、新之助師匠は、そこから、もう一度歌舞伎の舞台に回帰したことになります。ご本人によると、独立した長唄三味線と、歌舞伎の長唄三味線は、また違うのだそうです。
三味線の魅力については「あいまいさ」だと教えていただきました。日本の伝統芸能を観賞しているときのふわふわした空気感って、言葉にできない型を大事にしつつ、一定の曖昧さについては是とするところから生まれているのかもしれません。
三味線の魅力に少しだけ触れることのできた貴重なインタビューでした。
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