在来種の落花生「赤石豆」練り込んだ ほんのり甘い「力豆もち」~「地域おこし隊推薦 里でホレたこの逸品」7・静岡市葵区井川
2月8日付の夕刊「旅食」で掲載した「地域おこし隊推薦 里でホレたこの逸品」の第7回。静岡市葵区井川地区の地域おこし協力隊員、杉本史生さんに同区井川の「アルプスの里」で作られている「力豆もち」をご紹介いただきました。(旭)
力豆もちが販売されているのは、静岡市の北端、井川地区にある「アルプスの里」。地区の農家の女性が運営する農産物加工販売所兼食堂です。取材した日は数日前に雪が積もったばかり。静岡市中心部から北上する道は、チェーン規制がかかっていたため、一端島田方面に出て大井川筋から上がっていきました。アルプスの里の屋根には、雪も多く積もっていました。
店内には、ユズ味噌や梅干しなど、地域で採れた農産物の加工品も並んでいます。
お邪魔すると、協力隊員の杉本さん(左)と、アルプスの里代表の遠藤弘子さんがテーブルを囲んでいました。私も加わってお話をうかがいます。
京都府出身の杉本さんは、元々京都市に本部を置く環境NPOの職員。食文化と里山保全に関する研究で農学博士号も持つ農業や環境教育の専門家で、その手腕を見込まれて協力隊に委嘱されました。山深い井川地区には、地域で受け継がれてきた在来種の作物が多くあります。そのうちの一つが落花生の「赤石豆」。一房に3~4粒入っていることが多く、薄皮の部分が鮮やかな赤紫色なのが特徴です。「普通の落花生に比べ、薄皮に含まれるポリフェノールも多い」と杉本さん。実際に食べてみると、薄皮のえぐみも少ない落花生でした。
栽培農家も少なかった赤石豆ですが、味の良さが知られて少しずつ軒数も増えているとのこと。それでも収量はわずかのため、2カ月ほどで売り切れてしまうそうです。
「力豆もち、食べてみますかね」と遠藤さんが店のストーブの上にアルミホイルを敷き、力豆もちを置いて焼いてくれました。少し焦げ目が付く程度に焼いていただきます。ほんのり甘く、ヨモギの香りもする豆もち。赤石豆と一緒に入った大豆も地元産です。
もともとは「神のもち」として、正月のお供え餅だったといいます。2013年、アルプスの里がリニューアルした際の目玉商品として、井川に伝わる民話の主人公「力持ちのてしゃまんく」にちなんで商品化しました。5枚(約250グラム)入りで400円。「ビールのつまみにも意外と合うのよ」と遠藤さん。皆さん、思い思いの食べ方で楽しんでいるようです。
取材が終わるとちょうどお昼。遠藤さんはじめ、地元の野菜の天ぷらがたっぷりの天ぷらそば(950円)をいただきました。このほか、井川ダムを模した「ダムカレー」も名物です。
「井川の焼畑農業の会」の事務局も務める杉本さん。最後に「都市部からのアクセスこそ悪いが、自然学習に最適の場所。農業を通じた観光も盛り上げたい」と、意気込みを語ってくれました。
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