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県内18校などNIE実践校に-日本新聞協会が決定

2012年07月12日(木)付 朝刊


 日本新聞協会は11日、教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の2012年度実践指定校に全都道府県の554校を決定した。うち先進的な取り組みをしている学校などの「奨励枠」として20都道府県の51校を認定した。今年のNIE全国大会は30、31の両日、福井市で開かれる。

 県内の実践指定校は次の通り。
 【新規】富士宮東高、掛川工高、浜松三ケ日中、焼津大村中、静岡安西小、静岡城北小、沼津原小、静岡サレジオ小【継続】島田高、島田樟誠高、清水五中、浜松北部中、御殿場南中【奨励枠】常葉学園高、島田金谷中、磐田神明中、静岡東源台小、浜松有玉小=新規=

 

NIE全国大会静岡大会まで1年

2012年07月06日(金)付 朝刊


実践指定校の島田金谷中-「読み考え書く力」学ぶ 新聞の情報身近に捉え

 第18回NIE全国大会静岡大会まであと1年。教育、新聞関係者による実行委員会が5日に発足し、県内初開催の大型行事に向けて本格的準備がスタートした。NIE実践指定校も、静岡のNIEを全国に発信しようと授業に一層熱が入る。奨励枠として実践指定3年目の島田市立金谷中の新聞活用授業を取材した。

 金谷中は2010年度から毎年、国語科の授業で生徒がそれぞれ興味を持った新聞記事の感想を書いて、「しずおか新聞感想文コンクール」(静岡新聞社・静岡放送主催)に応募している。
 生徒は「資料を読み取って考え、書く力」を身に付けると同時に、日々新聞に接するため時事問題にも強くなる。国語科の辻元智教諭(25)は「一石二鳥の効果がある」と手応えを語る。11年度まで1、2年生が取り組んでいたが、本年度から全学年に広げた。

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しずおか新聞感想文コンクールの受賞作品を紹介する辻元教諭


 辻元教諭は本年度の応募作業に取り掛かる前に書き方のこつを学んでもらおうと、生徒に11年度のコンクール受賞作品を読ませた。
 7月上旬、3年生の教室。「書き出しで読み手を引き付けている」「自分の体験を交

え、自分の立場で書いている」「記事の感想を踏まえて、これからの生活にどう生かすか書いてある」―。生徒は受賞者が感想文の中でちりばめた“工夫点”を見つけて発表し合った上で、校内で保管している新聞の中から応募作の題材を探し始めた。

新聞感想文の題材になる記事を探す

新聞感想文の題材になる記事を探す


 市川葵君(14)は東京の渋谷駅で男性が刺されて重傷を負った事件の記事を選んだ。「昔と比べて犯罪は減っていると聞いたことがあるけど、いまもこうした事件が起きているんだと驚いた」という。

新聞を手元に置いて、辻元教諭の話に耳を傾ける

新聞を手元に置いて、辻元教諭の話に耳を傾ける


 国語科では、計5時限程度をコンクールの応募作業に充てる予定。3年生の応募は3回目。辻元教諭は「1年目は興味本位で記事を選んでいるケースが多かった。感想文も、記事の粗筋に終始する子が目立った。2年目は明確なテーマを持つ子が増えた」と生徒の変化に目を見張る。
 市川君は「新聞を読み始めてから、社会の情報の量が増えた。例えば交通事故の記事を見たら夜道は気をつけようと思う。ニュースを普段の生活に生かすようになった」と実感する。辻元教諭は「今年はより深いテーマを設定できるのではないか」と期待する。

しずおか新聞感想文コンクール受賞作品の“工夫点”を発表する生徒(手前)=2日、島田市立金谷中
しずおか新聞感想文コンクール受賞作品の“工夫点”を発表する生徒(手前)=2日、島田市立金谷中

 

 金谷中は10年度から実践校に指定されている。本年度は教員の研修テーマに「生徒が主体的に取り組むNIEの授業の実践」を掲げ、全教科の教員が授業で新聞を活用している。
 この他、全クラスで毎日、朝の会か帰りの会で当番の1人が一つの記事と感想を発表。全生徒がそれぞれテーマを決めて記事のスクラップにも取り組んでいる。修学旅行や体験学習を終えた後は、1人1枚の「新聞」を作る。
 研修主任で数学科の野中知行教諭(48)は「数学の場合、教科書に載っているのは架空の問題。新聞は実際に私たちが生きている世界。生徒にとって切実感があり、身近に捉えられるため、学習がより主体的になる」と話す。

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■インタビュー=高木まさき氏(横浜国大教育人間科学部教授)-方向性打ち出す時期

高木まさき氏
高木まさき氏

 

 国語教育が専門で、日本NIE学会常任理事を務める横浜国立大教育人間科学部長の高木まさき教授(静岡市出身)に、NIEが果たす役割や、来年7月に静岡市で開催されるNIE全国大会への期待を聞いた。

 ―学校現場が実践するNIEを研究する中で見えるNIEの教育効果とは。
 「新聞を開くと自分の興味に関係なく、さまざまな見出しや記事が目に入る。思わぬ記事との出会いがあり、発見がある。それにより、子供の興味の“アンテナ”がどんどん増え、思考に幅や深みが出る。一方、インターネットばかり使っていると、自分の興味の範囲でしか物事を考えられなくなる。だからこそNIEでは新聞をまるごと使うことが大切だ。また、メディアリテラシーの観点から複数紙を使うのが原則。社会事象には正解はなく、多様な見方を知った上で自分なりに考えを持つように促したい」

 ―NIEの今後の課題は何か。
 「一部ではデジタルの新聞が発行されるなど、新聞とインターネットの融合、競合がどう進むかを注視しながら、NIEの展開を考える必要がある。ただ、どのような形になったとしても、新聞社が信頼性の高い情報を発信し続けることがNIEの前提なのは変わらない」

 ―教員へのアドバイスは。
 「教員はNIEをあまり堅苦しく考えないでほしい。記事の内容が分からなくて困るという話をよく聞くが、分からないことは大人も子供と一緒に調べ、考えればいい。新聞は対話のためのツールと捉え、うまく活用してほしい」

 ―来年の静岡大会に期待することは。
 「“NIEの発祥の地”として、これまでのさまざまな実践について総括してほしい。学校現場での新聞活用は新学習指導要領に盛り込まれた。それも踏まえながら、学習指導要領の枠を超えた取り組みであるNIEが目指すべき方向性を打ち出す時期だと思う。新聞をきっかけに、子供たちの生きる力をどう育んでいくべきか考える契機にしたい」

 ▽たかぎ・まさき氏
 1958年静岡市生まれ、清水東高卒。82年筑波大第二学群卒、87年同大学院教育学研究科博士課程中退。上越教育大講師、旧文部省教科書調査官などを経て、2004年から横浜国立大教育人間科学部教授。12年4月から同学部長。

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 ■発祥の地の自負持ち準備(角替弘志/NIE静岡大会実行委員長)
角替弘志氏

角替弘志氏

 

 わが国におけるNIEの取り組みは、1985年に静岡市で開催された日本新聞協会の新聞大会で提唱されたことに始まる。ここ静岡はこのようにNIEとは深い縁[えにし]を有しており、提唱されてから28年を経る来年7月に初めて静岡で開催される第18回NIE全国大会には、わが国NIE発祥の地との自負を持ち、NIEの歴史に一里塚を築く意気込みで県内の教育界、新聞界が一体となって臨みたい。
 学校などで新聞を教材として積極的に活用することを内容とするこの活動は、1930年代にアメリカで始まり、現在では世界74の国々(2011年1月現在)で展開されている。わが国でも、学校に新聞を提供する活動は1989年に東京都内の小・中学校を対象にパイロット計画として始められ、96年度には一定期間複数の新聞を供与するNIE実践校制度がスタート、97年度には全国47都道府県全てに実践校が置かれるようになった。
 静岡県でもこれまでに小・中・高・特別支援校を含む93校が実践校の指定を受け、2012年度はこのうち18の小・中・高校が実践校として「新聞に親しむ」「新聞(自体)を学ぶ」「新聞から(に)学ぶ」「新聞づくり(表現・発信)」などの視点から、来年の全国大会も見据えながら、多様な工夫をこらした学習活動を展開している。
 毎日の新聞は、それぞれの地域のことは勿論、国の内外での出来事や、日々の生活に密着した情報や、さまざまな人が、さまざまな活動をしている様子をさまざまな形で伝えている。私たちの社会生活はさまざまな人々の協働によって成り立っていることからすれば、これらの社会の動きへの関心を育てることは「社会の形成者として必要な資質を備えた国民の育成」(教育基本法第一条)には欠かせない条件である。
 静岡での全国大会を機会に、新聞を健全な市民を育てるための生きた教材として活用する方策を積極的に試み、提言していくことが強く期待されている。

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 【NIE実践指定校】
 日本新聞協会は毎年、各都道府県のNIE推進協議会から推薦のあった小中高校などを「実践指定校」に認定し、新聞提供事業を行っている。期間は原則2年。先進的な活動や全国大会開催地などを条件に奨励枠も設け、2012年度は新規、継続と奨励枠を合わせ全国約550校、県内は18校を認定の見込み。11日に正式決定する。指定校には県内発行各紙を一定期間、無料提供する。

 ■県内2012年度実践指定の推薦校 
 ▽新規
 静岡安西小
 静岡城北小
 沼津原小
 静岡サレジオ小
 浜松三ケ日中
 焼津大村中
 富士宮東高
 掛川工高

 ▽継続
 静岡清水第五中
 浜松北部中
 御殿場南中
 島田高
 島田樟誠高

 ▽奨励枠
 浜松有玉小(新規)
 磐田神明中
 静岡東源台小
 島田金谷中
 常葉高(11日に正式決定)

NIE全国大会へ一丸 来年7月開催、静岡で実行委発足

2012年07月06日(金)付 朝刊


 来年、静岡市で開催される第18回NIE全国大会静岡大会(日本新聞協会主催)に向けて県内の教育、新聞関係者で組織した実行委員会の発会式が5日、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で行われた。=特集26面へ

 大会は来年7月25、26の両日、静岡市駿河区池田のグランシップで開かれる。実行委は県NIE推進協議会(会長・角替弘志常葉学園大学長)や県教委、NIEアドバイザーと静岡新聞社など主要新聞社、通信社の代表者など約30人で構成する。同推進協と静岡新聞社が主管する。
 実行委員長に選任された角替会長はあいさつで、日本ではNIEが1985年に県内で開かれた新聞大会で初めて提唱されたことに触れ、「NIE発祥の地との自負を持ち、新たな活動の展開を静岡大会で発信したい」と意気込みを語った。
 NIE全国大会は県内開催は初。記念講演やシンポジウム、公開授業などを行う。今後、実務者による企画部会が大会スローガンやプログラム内容を検討し、来年4月の実行委で正式決定する。

来年7月の第18回NIE全国大会静岡大会に向けて発足した実行委員会=5日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 来年7月の第18回NIE全国大会静岡大会に向けて発足した実行委員会=5日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

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 【NIE】
 「NewspaperinEducation」の略称。「教育に新聞を」活動とも呼ばれ、学校などで新聞を教材にして学ぶ活動を指す。1930年代に米国で始まり、2011年時点で世界74カ国で実施されている。