2013年01月30日(水)付 朝刊
静岡新聞社は29日、新学習指導要領の完全実施により授業で新聞を活用する機会が増えたことを受け、NIE(エヌ・アイ・イー=教育に新聞を)のガイド本として制作した「新聞でこんなに学べる すぐに使える新聞活用ガイドブック・中学校編」約5千部を県教委に贈呈した。
A4判で112ページ。県内各地でNIE活動を推進する教員8人が編集委員を務め、実践例に基づいて執筆した。県内の全中学校や市町教委など約350カ所に配布する。昨年度は小学校編を全小学校に配った。
活用事例が多い国語や社会をはじめ、英語や保健体育など教科別にワークシートを掲載し、コピーして活用できるように工夫した。授業での活用方法など、編集委員による助言を添えた。新聞づくりのこつも具体例を示して紹介した。
県庁で行った贈呈式で、大須賀紳晃静岡新聞社編集局長は「NIEを普及させる機会にしてほしい」と要請し、ガイドを手渡した。
安倍徹教育長は「新聞の多種多様な情報で、児童生徒は社会をふかんできる。教材として活用し、NIE活動が県内に広がればと思う」と述べ、7月に県内で開くNIE全国大会静岡大会に向けた連携と協力も約束した。
新聞活用のガイド本の活用法などについて意見を交わす安倍徹教育長(右)=29日午前、県庁
2013年01月15日(火)付 朝刊
静岡新聞社・静岡放送は2月23日午後2時から4時まで、小、中、高校の教員を対象にしたNIE講座「新聞の活用を楽しく学ぶ」(県教委、静岡市教委後援)を静岡市駿河区登呂の静岡新聞社制作センターで開く。
講師は島田市立川根中の矢沢和宏校長(日本新聞協会認定NIEアドバイザー)。NIE初心者の教員でも楽しく理解できるよう静岡新聞社が制作した新聞活用ガイドブック「新聞でこんなに学べる」を教材にNIEの基本と実践例を学ぶ。
受講無料。はさみとマーカーペンを持参する(ノート、のりは不要)。事前の申し込みが必要。参加申し込み、問い合わせは静岡新聞社ふれあい読者室<電054(284)8930、ファクス054(284)9362>へ
2013年01月05日(土)付 朝刊
2009~10年度NIE実践指定校の川根高(堀田英正校長、生徒189人)は、各教員が学習内容に沿った記事を取り上げ、現代社会の授業を中心に生徒の理解に役立てている。一方で生徒の新聞への理解度には差があり、社会科の中園亮平教諭(43)は「まずは新聞を読む癖を付けてもらうことが重要」と強調する。
◇……………………◇
□授業拝見
■社説読み比べ討論も-川根高(VOL.1)
「今日の注目記事を読んでみよう」。現代社会の授業冒頭で先生が呼び掛けた。多くの新聞の1面が衆院選関連記事で埋まった12月初旬、1年生は国会と内閣、裁判所の三権分立などについて学んだ。生徒たちは「小選挙区」「政党」「1票の格差」など、授業で耳にする言葉が度々登場する紙面に目を落とした。
生徒の興味をそそることを狙いに新聞を導入した。中園教諭は「指導内容と世の中のトップニュースが一致していて、生徒に教えやすかった」と振り返る。関西電力大飯原発の再稼働について書かれた各紙の社説の読み比べも行い、原発に対して「推進」と「反対」に分かれて意見を出し合った。家庭科の調理実習の時間では、レシピを掲載した記事を紹介している。
現代社会と家庭科以外の科目では新聞を有効に活用できていないのも現状だ。中園教諭は「授業時間が少ない科目は、教科書の内容を進めることで精いっぱい」と悩ましさを打ち明ける。生徒の中で日常的に新聞に目を通しているのは半数弱。充実した新聞教育を進めるためにも、「もっと社会の動きに関心を持ってもらわないと」(中園教諭)と話す。
同校が静岡大会での公開授業に向けて本格的な準備に取り掛かるのは来年度からという。茶業や観光など地元の基幹産業に関する記事を紹介するなど、身近な話題から生徒の関心を高めていくことを目標にする。「様子を見ながら徐々に活用する機会を増やしたい。取材や記事の執筆にも挑戦させてみたい」と中園教諭。まだまだ課題は山積しているが、新聞の効果的な活用法を模索していく。
(次回は4月6日)
冬休みの部活の後、中園教諭(中央奧)の指導で新聞を手にする生徒=4日、川根本町徳山の川根高
◇……………………◇
□実践指定校教諭インタビュー=浜松有玉小・倉田智幸教諭
■どんな授業
新聞に親しみ、自分の考えを持ち、友達と学び合う子どもを育てることを目的にしている。
2~6年の各学年に1クラスずつ新聞を置く。低学年は関心のある写真、高学年は記事について感想や意見を帰りの会でスピーチしている。3年生は、授業で習った字と同じ偏を持つ漢字を紙面から探すことで新聞に向き合うようにしている。4年生は「新聞係」を設け、興味のある記事を切り抜き、取り上げた理由を添え掲示している。
■手応え・課題
「記事を読む」ばかりではなく、写真や見出し、特定の文字からアプローチすることで、新聞への抵抗感がなくなってきた。スピーチでは当初、簡単な感想を話す児童が多かったが、徐々に自分の考えを伝えることができる子が増えた。戦争や選挙を学ぶ授業では、実際に起きている出来事から理解することができる。
■静岡大会に向けて
NIEは児童にとって優しく簡単な内容で、継続していくことが大切。新規指定校としてさまざまな活用方法を試す。その上で、良い点と悪い点を明らかにし、効果的な方法を考えたい。教員の準備の時間も限られるので、手軽にできるノウハウも追究したい。
◇
▽浜松有玉小
浜松市東区有玉南町。児童639人。柴田孝行校長。新規指定。
◇……………………◇
□実践指定校教諭インタビュー=御殿場南中・湯山昌樹教諭
■どんな授業
新聞を読んで考えを深め、表現したり意見を交わすなどの「言語活動」につなげることを目的に据える。国語では記事をテーマに投稿。社会では、生徒が独自の十大ニュースを選び、話し合った。
昨秋、生徒会がいじめ問題を話し合って「いじめ撲滅三箇条」を独自に策定した。いじめ問題を取り上げたコラムを読み、考えを深めた上で意見交換したことが人ごとになりがちな話題を身近に感じさせる効果を挙げ、熱心な議論につながった。
■手応え・課題
5教科以外でも、保健体育や情報などの実技教科で、新聞掲載の最新データなどが積極的に活用されるなど広まりを感じる。生徒も興味を持ちやすく、反応は良い。新聞や社会事象への関心は着実に高まっている。
一方で、指導法が確立されていないため、教員が常に試行錯誤している印象がある。経験を積み重ねていくしかない。
■静岡大会に向けて
年度末まで残りの3カ月間、これまでの活動を継続し、良い発表をしたい。学校全体の取り組みがどのように評価されるか楽しみだ。
◇
▽御殿場南中
御殿場市萩原。生徒477人。遠藤幸一校長。指定2年目。
◇……………………◇
□実践指定校教諭インタビュー=島田高・高島美玲教諭
■どんな授業
特定の授業だけでなく、多くの科目の教育活動の中で自然に新聞を取り入れたいと考えている。
現代社会では生徒が気になったコラム欄を持ち寄り、ノート作りに励む。英語では英字新聞の日本語訳に取り組み、国語は心が温まる記事を選んで感想をまとめている。本校生徒が紹介された複数の紙面の読み比べも行っている。
■手応え・課題
読み比べでは同級生の活躍を知ることで、生徒同士で良い影響を与え合えたと感じる。同じ出来事でも記者の捉え方によって書き方や見出し、写真などに違いがあり、読者が受ける印象が大きく変わることを発見できた。
授業内にじっくりと時間を取るのは難しいので、週末や長期休みの課題として、新聞を読む大切さを訴えていくのがポイントか。
■静岡大会に向けて
同じ活用を続けるとマンネリ化してしまう。全国の先生方と積極的に意見交換し、変化を付けながら授業に導入する技術を学びたい。国語では教科書の題材を使えば文章力の育成はできる。新聞を読むことで身に付く力は何か、意図を持って取り入れられるようにしたい。
◇
▽島田高
島田市稲荷。生徒726人。戸塚忠治校長。指定2年目。
◇……………………◇
■「富士山」イメージ、スローガンを検討-静岡大会企画部会
NIE全国大会静岡大会企画部会は12月25日、静岡市内で会合を開き、大会テーマとスローガン、パネル討論の内容などを協議した。
スローガンは「NIE発祥の地」と「富士山」をイメージし、パネル討論は「すそ野を広げる」をテーマに行う計画。1985年に静岡市で行われた新聞大会でNIEが初めて提唱されたことから、原点に帰り、だれでもどこでも無理なく取り組める「学び」を全国に発信する方向だ。
企画部会は近く大会テーマとスローガン、基調講演者、パネル討論案などを決定し、4月の実行委員会(角替弘志委員長)に提案する。
(共同)
◇……………………◇
□NIEワークシート