NIE関連記事

第18回NIE全国大会静岡大会
=実践発表

2013年07月27日(土)付 朝刊


 ■身近な話題選び表現する力磨く-沼津原小
 ▽発表者 石川有記
 ▽助言者 佐藤正和(県総合教育センター東部支援班指導主事)、上崎正則(時事通信社静岡総局長)
IP130727ZZA280001000_01.jpg

石川有記教諭

      ◇

 5年生が記事のスクラップを行い、自分の意見や感想を書くことで、考えたことを表現する力を身に付けていった取り組みを石川教諭が発表した。
 当初は児童に自由に記事を選ばせたところ、「1面など小学生には難解な記事を選ぶ傾向があり、感想も表面的だった」という。
 その後、教諭が「笑顔になるような記事を探そう」と対象を絞ったところ、小中学生や地域が素材となった身近な話題を選ぶ児童が増え、より記事を理解した上で意見が書けるようになったと説明した。
 その上で、児童が互いの意見を知り合えるようなスクラップ帳を作ったことを例に挙げ、「自分の考えを人に伝えたいと思う子どもたちが増えてきた」と成果を強調した。

               ◇……………………◇

 ■保護者の理解を深める活動大事-静岡東源台小
 ▽発表者 柴田剛秀
 ▽助言者 伊藤あゆり(静岡市教委学校教育課指導主事)、菊池嘉晃(読売新聞社静岡支局長)
IP130727ZZA279901000_01.jpg

柴田剛秀教諭

      ◇
 2010年度から実践指定を受け、現在は奨励校として家庭、全校に広げている取り組みの成果を発表した。
 週末や長期休暇中の新聞スクラップ、記事を使った親子討論会を通じて、保護者にもNIEの意義が伝わったと報告。「活動継続には、家庭への啓発や浸透が大事」とした。
 校内研修にも位置付け「NIEに初めて触れる教職員も取り入れられる方法を模索した」と振り返った。学年ごとの事例も紹介し、子供や保護者の声から「魅力的な学びを発見できると実感できた」と話した。
 会場からは、「新聞ありきではなく教科の目当てに近づくための活用だと感じた」「新聞を購読している家庭ばかりではない。意識差もあるのでは」と感想が挙がった。

               ◇……………………◇

 ■地図や新聞作製思考する力養う-浜松有玉小
 ▽発表者 浅野慶太郎
 ▽助言者 高橋勝(浜松麁玉小校長)、田中実(静岡新聞社論説委員)
IP130726TAN000064000_01.jpg
浅野慶太郎教諭

      ◇

 浜松有玉小は「新聞に親しみ、自分の考えをもち、友達と聴き合う子を育てる」をNIEの目当てに掲げる。浅野教諭は、2~6年生が授業の「話し合い」の場面で新聞記事を活用した事例を紹介し、「新聞への親しみが増し、自分の考えを持てるようになった」と成果を説明した。
 社会科で「学区地図作り」に取り組んだ3年生は、新聞に掲載されていた地図を参考に、分かりやすい地図を工夫した。6年生の国語の「学校新聞を作ろう」では5W1Hの文章を組み立てた。浅野教諭は「学びの発見があり、思考力が養える」と成果を話す。
 NIEの環境整備にも力を入れる。さまざまな分野の時事問題に挑戦する新聞コーナーを図書室に設け、気軽に新聞に触れる機会を提供している。

               ◇……………………◇

 ■1分間スピーチ全クラスで挑戦-御殿場南中
 ▽発表者 湯山昌樹
 ▽助言者 長倉守(県教委学校教育課指導主事)
IP130727ZZA280101000_01.jpg
湯山昌樹教諭

      ◇

 湯山教諭は全校生徒を対象に新聞記事を活用した実践を行い「言語活動」につなげた取り組みを発表した。
 取り組みの際は「生徒、教諭の双方が無理なく、多くの実践を心掛けた」と説明。新聞に慣れ親しんでもらうため各教室に新聞を置き、授業で活用する基礎として全学級で毎日、新聞記事を使った1分間スピーチを行ったことを紹介した。
 授業で新聞を資料や意見交換の題材として効果的に使ったほか、生徒会のいじめ対策に関する資料として活用したことを挙げ「『生きた資料』で生徒が本気になり、充実感が生まれた」と話した。
 「教諭が自信を持ち、生徒も自然に受け入れてくれたことが成果」とし「1分間スピーチを積み重ねてから、本格的な実践をスタートさせたことがよかった」と説いた。

               ◇……………………◇

 ■習熟度に合わせ学習目的を変更-清水第五中
 ▽発表者 渥美淳
 ▽助言者 青山貴弘(静岡市教委学校教育課主席指導主事)
IP130608TAN000026000_01.jpg

渥美淳教諭

      ◇

 渥美教諭は、1~3年生の習熟度に合わせて内容を変えた総合学習の授業を紹介した。
 NIEに取り組んだ1年目の課題として「もっと生徒が考えを深められるような工夫が授業に必要だと感じた」という。2年目は2、3年生の活動内容を「新聞に親しむ」から「新聞を活用する」に変えて、「2年生は意見交換の時間を増やし、3年生は新聞を作って発表する形式にした」と説明した。
 新聞記事の書き方などを学んでいた3年生は「清水、三保の良さを伝えよう」をテーマに、各自が新聞や書籍などを使って歴史やスポーツ、食文化などについて調べたという。
 渥美教諭は「生徒が仕上げた新聞は分かりやすくまとめられていた」と手応えを感じた様子。一方「読解力や表現力を身に付けるためには十分な時間が必要」と課題も挙げた。

               ◇……………………◇

 ■切り抜きで地図世界を読み解く-浜松学芸中・高
 ▽発表者 大木島詳弘
 ▽助言者 佐藤安彦(県教委学校教育課指導主事)、前田剛夫(毎日新聞社静岡支局長)
IP130727ZZA280201000_01.jpg
大木島詳弘教諭

      ◇

 大木島教諭は記事から日本と海外の結び付きを読み解く独自の試みを発表した。
 1年生の地理の授業の一環で、1カ月分の新聞から海外関連の記事を抜き出し、国ごとに仕分けた。それらを世界地図に落とし込み、どの国の話題が新聞に頻繁、または大きく掲載されているかが分かるようにした。
 実践では、米国、中国の記事が多く、韓国、西アジア、欧州が続いた。
 「近年は環太平洋の関連国の分量が多い。切り抜きで作った地図にもそれが表れるため、中学1年生でもTPP(環太平洋連携協定)の理解が進んだ」と説明した。
 新聞活用の利点として、精査された情報に触れられる▽出来事が整理され使いやすい▽紙媒体の作業性の良さ-を挙げた。

               ◇……………………◇

 ■データベースで過去記事を共有-東海大翔洋高
 ▽発表者 川上博
 ▽助言者 山本啓一(日本経済新聞社静岡支局長)
IP130727ZZA280301000_01.jpg
川上博教諭

      ◇

 過去の新聞記事を検索できるデータベース(DB)を導入している川上教諭が、NIEでDBをどのように活用しているかを発表した。
 地歴公民などの授業で教材として活用する方法を紹介し、「インターネット上のニュースも見られるが、信頼できるDBがいい」と述べた。古い記事と新しい記事を比較して生徒に考えさせたり、パソコンを通して生徒と記事を共有しながら授業を進められたりする利点も挙げた。
 「キーワードに沿った記事をすぐに見つけられる」「新聞を読むのが面白くなった」というDBを利用した生徒の感想も紹介した。
 当日の記事を一挙に見られる紙の新聞の長所にも着目して「紙の新聞とDBを併用して教育活動に使いたい」と強調し、電子教科書との連携の方法を課題として指摘した。

               ◇……………………◇

 ■生活に引き寄せ学ぶ意義考える-静岡中央高
 ▽発表者 吉川契子
IP130727ZZA280401000_01.jpg

吉川契子教諭
      ◇
 理科の学習内容について、記事を手掛かりに、日常生活との関係性を明確化する取り組みを発表した。
 吉川教諭は、NIEに注目したきっかけを「生徒が理科に興味を示さないことが気掛かりだった。新聞こそ最も分かりやすい教材だと思った」と述べ、「新聞を使い、学ぶ意義を考えることが狙い」と強調した。
 実例として「冥王星が惑星から除外」との報道を受け、教科書表記の変更点を授業で取り上げたり、東日本大震災の報道から東海地震の調べ学習につなげたりした経験を披露した。個別作業から小グループ、クラス単位へと授業規模を拡大する手法も紹介した。
 NIEを取り入れた後、教え子の勉強姿勢が積極的になった逸話も披露。「研究成果が賞を取ったり、新聞に取り上げられたりすると生徒の励みになる」と、学習意欲を引き出す効果にも言及した。

第18回NIE全国大会静岡大会=特別分科会・静岡提言
-NIEの魅力、自信持ち伝える
-やさしさ意識し新聞・環境づくり
-新聞とデジタルの連携・共存図る

2013年07月27日(土)付 朝刊


 ▽司会 矢沢和宏(島田川根中校長、NIEアドバイザー)
 ▽パネリスト 高木まさき(横浜国立大教育人間科学部長)、谷野純夫(県立中央図書館長)、松岡幹雄(県教委学校教育課指導主事)、石田勝彦(焼津大村中教諭)、宇野隆哉(共同通信社静岡支局長)
      ◇
 NIEのすそ野を広げる方向性を示す静岡提言として、▽NIEは魅力的でやさしいと自信を持って伝える▽やさしいNIEを意識した新聞・環境づくりを進める▽新聞とデジタルの連携・共存を図る―をまとめた。
 討論では普及拡大に向けた方策などが議論された。高木さんは教室に新聞を置くだけで子どもが興味を示した取り組みを紹介し、「ゆるく、だらしなく、で構わない」と気軽な活用を提案した。家庭での記事探しなどを例示して「記事が難しければ子どもと一緒に考えれば良い」と述べ、キャリア教育での活用の可能性にも触れた。
 石田教諭は、無料通信アプリLINE(ライン)のトラブルを扱う記事を使った生徒指導でのNIEをアイデアとして示し、「校内の別の担当と連携すれば、NIEの魅力が広がる」と指摘した。

IP130726TAN000083001_01.jpg
「静岡からの提言」を導き出すため活発な意見が交わされたパネル討論=静岡市駿河区
               ◇……………………◇

 ■学校挙げて継続-3年目対策
 ▽司会 山崎章成(浜松曳馬小教諭、NIEアドバイザー)
 ▽パネリスト 越智義寛(浜松大平台高教頭)、飯尾美行(浜松城北工高教諭)、橋立宏子(富士吉原三中教諭)、野沢博文(県教委教育政策課指導主事)、西山良太郎(朝日新聞社静岡総局長)
      ◇
 実践校としての2年間の活動を終えた後、学校に取り組みが根付いたと考える関係者は少ない。担当教諭らが継続の方策を探った。
 パネリストは教諭の意識を「NIEは授業改善のツールの一つと割り切っている」「自分の手法で十分に授業ができると感じている」などと分析。「担当者が熱心でも異動すれば活動は途切れる。組織に残すことは難しい」と現状を報告した。
 一方で「NIEと言われる前から、学校では新聞作りは行われている」「教諭が成功を実感すれば実践者が増えるのでは」とする声もあった。

               ◇……………………◇

 ■工夫して実践生きる力育む-特別支援教育
 ▽報告者 松本美智枝(沼津聴覚特別支援学校教諭)、成島敦子(同校講師)、富田聡子(岐阜大垣特別支援学校教諭)、石毛一郎(千葉佐原高教諭)
 ▽コメンテーター 福井達哉(県教委学校教育課主席主任指導主事)
      ◇
 増加傾向にある特別支援学校でもNIEの効果が期待されている。障害のある児童・生徒に行われているNIEの実践例を紹介した。
 報告者は視覚障害の生徒に対する点字新聞を活用した進路学習や知的障害の生徒に行った新聞切り抜きコンクールなどを説明した。
 記事に触れることで「感情を表現できるようになった生徒も。新聞は生きる力を育てる」という感想も出た。
 障害の状態はさまざまでも、教員の工夫次第でNIEが実践できることを確認し、福井さんは「記事だけでなく、写真や大きな見出しも活用できる。広げていこう」と呼び掛けた。

               ◇……………………◇

 ■毎朝時間確保きっかけ提供-NIEタイム
 ▽司会 吉成勝好(日本新聞協会NIEコーディネーター)
 ▽基調提案 関口修司(東京北区滝野川小校長)
 ▽パネリスト 西村崇(京都静原小教諭)、鈴木史良(裾野深良中校長)、稲津恵子(駒沢学園女子中・高教諭)
      ◇
 学校で新聞を読む時間を設けるには、子ども一人一人への新聞の確保や指導者の育成などの課題がある。朝の時間を生かした、日常的に取り組めるNIEの在り方を探った。
 教師や生徒が選んだ記事を印刷して配布し、毎朝読む時間を確保したり、4種類の新聞を廊下に置いて自由に読める環境をつくったりする例が示された。
 基調提案では、関口校長が「新聞を読むことを習慣化させるきっかけづくりを」と呼び掛けた。NIEの継続に向け、学校や教育委員会など組織全体での取り組みの必要性や販売店との協力などを提示した。

               ◇……………………◇

 ■身近さ感じる取り組み必要-地域NIE
 ▽コメンテーター 渡辺裕子(NIE教育コンサルタント、白鷗大講師)
 ▽報告者 江崎晴城(藤枝江崎新聞店社長)、芦沢和幸(静岡中央新聞販売本部長)、横井純夫(磐田神明中講師)
      ◇
 新聞を活用して、学校が社会とつながる活動は各地で広がりを見せている。パネリストが、地域を巻き込む必要性を報告した。
 江崎さんは藤枝市内の小学校での「命の大切さを伝える授業」を紹介。震災報道に触れ「新聞は救助や支援など多くの絆も発信した」と話した。
 芦沢さんは新聞が家に届くまでの流れを教える出前塾事業に触れ「配達は毎日いろんな人に出会う。新聞を身近に感じてもらう取り組みを続けたい」と語った。横井さんは複数の新聞の比較や紙面構成を学ぶ学校での取り組みを説明し「多くの情報を正しく判断し、人に伝える力を高めてほしい」と述べた。

第18回NIE全国大会静岡大会
=公開授業-静岡の「学び」生き生き 

2013年07月27日(土)付 朝刊


 新聞を教材として活用するNIE(エヌ・アイ・イー)を考える第18回NIE全国大会静岡大会は最終日の26日、静岡市で公開授業や実践報告を行い、閉幕した。閉会式では、▽NIEの意義や魅力、実践の発信▽「やさしいNIE」を意識した新聞づくりと環境づくり▽新聞とデジタルとの連携・共存―の3点を柱とした「静岡提言」を発表し、NIEの定着化に向けて努力を誓った。

 ■「感想」と「意見」の違い検証-島田高
 ▽授業者 高島美玲
 ▽助言者 実石克巳(静岡市立高教諭、NIEアドバイザー)、大野正利(産経新聞社静岡支局長)
     ◇
 高島教諭は3年生の生徒約40人を前に、新聞の切り抜きを活用して1学期に行った現代文の授業を再現した。
 1カ月間の電気代を500円に抑える節約生活の関連記事を生徒に示し、「『できるわけがない』は単なる感想」と強調。「意見」との違いを突き詰めて考えるよう求めた。
 生徒は、興味を持った記事とそれに対するコメントの一覧表を友達と交換。「意見」が成立しているかどうか検証し合った。スクラップノートから最も伝えたい記事を一つ選び、なぜ記事に興味を持ったのかも説明した。
 富士山の山体崩壊による津波の危険性を扱った記事を選んだ堀本菜美さん(18)は「これまでの防災対策では対応できない。山体崩壊の話は新聞を読むまで聞いたことがなかったので、関連機関からの情報をもっと出してほしい」と話した。
 高島教諭は「根拠を持って考えることが大切」と呼び掛け、頭を鍛えるトレーニングをこれからも続けてほしいと生徒に期待した。

IP130726TAN000044000_01.jpg
新聞のスクラップを示して、意見を述べ合う島田高生=静岡市駿河区

               ◇……………………◇

 ■歴史と社会を結びつけ考察-常葉学園高
 ▽授業者 塚本学
     ◇
 フランス革命で登場するロベスピエールの功罪について、「テロリズム」をキーワードに現代社会と結び付けて考察し、生徒により深い理解を促す授業を展開した。
 塚本教諭は今年1月の「アルジェリア人質事件」の記事や、専門家が寄稿したテロに関する解説を用意した。「誰もが追い込まれた時はテロリストになり得る」「テロが成功すれば建国の英雄になる」などの文章を読ませた上で、「恐怖政治をしたロベスピエールはテロリストか?」と生徒に問い掛けた。
 生徒は「ロベスピエールは当初、弱者を救おうと革命に参加したはず」「結局は弱者を抑圧したからテロリストになるのでは」などと意見を発表した。
 塚本教諭は「努力しても目標が実現できない社会では、人は攻撃的になる」とまとめ、「さまざま立場からテロを考えてみることが大切」と呼び掛けた。

               ◇……………………◇

 ■新東名テーマ経済効果討論-川根高
 ▽授業者 中園亮平
 ▽助言者 小谷和之(県総合教育センター指導主事)、海野俊也(静岡新聞社経済部長兼論説委員)
     ◇
 新東名高速道の開通による経済波及効果について、肯定、否定の立場に分かれてディベートを行った。生徒は自分たちに有利な情報を新聞などで収集し、討論に臨んだ。
 肯定派は「観光客の増加」「渋滞緩和や事故の減少」などの経済効果を主張した。否定派は「東海地震で崩れたら建設費を取り返せない」などと述べた。
 反対討論では、速度超過違反などが大幅に増えたとする記事から「安全な道路とは言えない」とする否定派に対し、肯定派は「新東名は津波被害を受けないように山側に建設された」などとニュースをもとに反論した。
 来場者の拍手の大きさで判定し、肯定派の勝利となった。中園教諭は「多くの意見が出て活発な議論だった」と講評した。

               ◇……………………◇

 ■自分で考える習慣を-島田金谷中
 ▽授業者 油井和哉
 ▽助言者 実石克巳(静岡市立高教諭、NIEアドバイザー)
     ◇
 油井教諭は東日本大震災の原発事故で全国的な問題になった放射性物質を取り上げた。まず、県産農産物に影響が及んだ記事を示し、ふだん目にすることが少ない「暫定規制値」などの用語を生徒に挙げさせた。
 その上で、「セシウムは危険なものだろうか」と問題を提起した。生徒は副教材の資料などを使って個々に調べ、班ごとに意見を集約した。
 各班から「放射性セシウムからは人の細胞を傷つけるガンマ線が出ている」「国の規制があるから危険なもの」「(放射性)セシウムそのものが本来は天然にはなかった」などの発表があった。
 「茶葉が暫定規制値を上回っても、お湯を入れて飲む状態ならば規制値を下回るのでは」と、踏み込んだ考察もあった。
 油井教諭は「人は難しい問題にぶつかるとパニックになりやすい。放射性物質は一口でいえば危険だが、なぜ、どう危険かを理解することが大事。周りに流されるのではなく、まず自分で考える習慣を身に付けよう」と生徒に呼び掛けた。

IP130726TAN000055000_01.jpg
「放射線について考えよう」をテーマにした島田金谷中の公開授業=静岡市駿河区池田のグランシップ

               ◇……………………◇

 ■雇用の在り方15年前と比較-付属静岡中
 ▽授業者 野沢康夫
 ▽助言者 内田恵(静岡大教授・付属静岡中校長)
     ◇
 3年生38人を前に野沢教諭はまず、正社員を目指している「派遣切り」に遭った男性の気持ちが書かれた2012年の新聞記事を取り上げ感想を聞いた。
 「選ばなければ仕事がある」と考えていた男性の言葉に着目した生徒は「安定した仕事は選ばなければ就けない」「早いうちから自分がなりたいことを決めることが必要」などと感想を話した。
 次に野沢教諭はステップアップや可能性を求めて派遣社員を希望する人が急増した1997年の新聞記事を示して意見を募った。生徒は派遣社員のプラス面として「知識や技術を伸ばせる」「自分に合う仕事を探せる」、マイナス面として「『派遣切り』におびえなくてはいけない」「安定していない」などと意見を出し、雇用の在り方や自分の職業観などを養った。

               ◇……………………◇

 ■政治の「なぜ」記事読み探す-浜松三ケ日中
 ▽授業者 小川高明
 ▽助言者 杉山秀勝(浜松引佐南部中校長)
     ◇
 小川教諭は政治を学ぶ授業の導入場面で、今後の学習で生徒が探求したい課題を見つけ出すことにNIEを活用した。
 最初に「一票の格差」「リコール」「補正予算成立」「町長選挙」を題材として扱った四つの記事を生徒に紹介し「関心のある記事を選んで読み、『なぜ』と感じる疑問を探そう」と呼び掛けた。
 3年生24人は各自で選択した記事を読み込み、内容をワークシートに簡潔にまとめた後、疑問点を列挙した。他の生徒の意見も聞くためグループになって話し合った。
 生徒は「なぜねじれ国会になったのか」「参議院で否決されても、衆議院の可決が優先されるのはなぜか」などと次々に疑問点を出し合った。
 最後に、今後の授業に生かす生徒の疑問点を小川教諭がまとめて授業を終えた。

               ◇……………………◇

 ■教科組み合わせ活用-静岡中田小
 ▽授業者 中村都
 ▽コーディネーター 赤池幹(神奈川県・埼玉県推進協議会NIEコーディネーター)
 ▽助言者 林寛子(中日新聞東海本社編集局長)
     ◇
 5年生は社会と国語、総合学習、図工を組み合わせ、半年がかりで静岡の魅力を発信するポスターを制作している。公開授業ではポスターに必要なキャッチコピーを練った。
 「興味を引くキャッチコピーはどんなもの?」。新聞広告を掲げた中村教諭が問い掛けると、児童は「覚えやすい」「リズムがある」と答えた。次に、特産イチゴやみかんの紹介文からキャッチコピーを考えた。キーワードに線を引き、グループごと表現を練った。
 静岡の知名度の実態を示す新聞記事を読む学習からスタートした。富士山や静岡おでんなどテーマを設定し、個々にアピール文を作った。
 「駿河湾の深さ『日本一でしょ!』」「静岡県民の常識をぜひ」―。授業の最後に、アピール文からキャッチコピーを仕立てた。今後は、新聞のカラー部分を中心にしたポスターを作り、県のイベントで展示する。
 会場からは「子供が主体的に取り組んでいた」「新聞全体を活用した、教科横断的な取り組みが新鮮」などの感想が出た。

IP130726TAN000128000_01.jpg
文章からキーワードを見つけ、キャッチコピーを練る静岡中田小児童=静岡市駿河区

               ◇……………………◇

 ■読む人で違う記事の感じ方-静岡城北小
 ▽授業者 漆畑浩明
 ▽助言者 八木ゆかり(静岡市教委学校教育課指導主事)
     ◇
 漆畑教諭は、サッカー日本代表の今野泰幸選手と東日本大震災で同じサッカーチームの友人を津波で失った宮城県の中学生との交流を紹介した記事を題材にした。5年生の児童32人は見出しが隠された記事を国語の授業で事前に読み、自分で付けた見出しを発表した。
 児童の見出しを今野選手に注目したものと中学生に焦点を当てたものとに分けた漆畑教諭は、「同じ記事を読んだのに注目した場所が違うのはなぜだろう」と問い掛けた。
 グループに分かれて話し合った。児童は「記事の同じ文章を引用しても見出しが違う」「新聞は読んでいる人によって感じ方が違う」と意見を述べ、記事は読者によって読み取り方、感じ方が異なることを実感した。
 最後に他の児童の意見も参考にもう一度、見出しを作り直した。

               ◇……………………◇

 ■記事や図使いごみの削減案-静岡安西小
 ▽授業者 沢田智之
 ▽助言者 柴田敏(静岡市教委学校教育課指導主事)
     ◇
 ごみの減量に向けてできる取り組みを児童一人一人が新聞記事を根拠に発表し合った。
 沢田教諭はまず、三保松原(静岡市清水区)の清掃活動を取り上げた記事を提示。「誰がなぜ掃除をしているのかな」と問い掛けると、児童から「三保の人たちが世界遺産に登録されたのに汚いと思ったから」などと活発な意見が出た。
 児童は、ごみの削減に関連した記事や図を使ってまとめたポスターを、グループ内で紹介し合った。
 衣類回収ボックスの設置や生ごみの肥料活用など、さまざまな記事を参考に「自分の家で出た食品トレーやペットボトルは、スーパーの回収ボックスに入れる」「リサイクルについて詳しく調べ、多くの人に紹介したい」などと、ごみの削減に向けたアイデアを発表した。

「NIEの魅力発信」 静岡提言を発表、閉幕-全国大会

2013年07月26日(金)付 夕刊


 新聞を子供たちの学習に活用するNIE(エヌ・アイ・イー=Newspaper in Education)について考える第18回NIE全国大会静岡大会は最終日の26日、静岡市駿河区のグランシップで公開授業や実践報告を行った。閉会式で2日間の議論を通してまとめた「すそ野を広げるために~NIE発祥の地・静岡からの提言~」を発表し、閉幕した。
 提言は▽NIEの意義や魅力、実践の発信▽「やさしいNIE」を意識した新聞づくりと環境づくり▽新聞とデジタルとの連携・共存―の3点。NIEアドバイザーの矢沢和宏島田市立川根中校長が提言について説明し、「今後も地道な努力と工夫を継続し、NIEの定着、NIE文化の創造に努めていこう」と呼び掛けた。
 大会は日本新聞協会主催、県教委、静岡市教委、浜松市教委共催、県NIE推進協議会と静岡新聞社が主管した。次回大会は来年夏、徳島県で開かれる。

IP130726TAN000007000_01.jpg 

与えられたテーマの関連記事を切り抜く生徒=26日午前9時ごろ、静岡市駿河区池田のグランシップ

高校生が取材、速報 盛り上げに一役-静岡大会

2013年07月26日(金)付 朝刊


 静岡市駿河区のグランシップで25日開幕した第18回NIE全国大会静岡大会。会場では、県内の高校生が活躍した。大会の様子を伝える速報紙「ふじのくに」を発行したり、受付係として全国の教員や新聞関係者らを迎えたり。大会の運営を支え、雰囲気盛り上げに一役買った。
 速報紙作りに取り組んだのは日大三島、富士東、藤枝北、静岡西、浜松南の5校の新聞部や広報委員会に所属する生徒14人。開会式や記念講演、パネル討論などを取材し、大会の進行に合わせてA3サイズの速報紙1~3号を会場で配った。
 来場者にインタビューした富士東高2年の渡邉真未さん(16)は「校外の人を取材する機会は普段、あまりない。緊張したけど、新鮮な体験ができてよかった」と話した。
 静岡雙葉高の生徒約10人は受け付け業務を担当した。訪れた人の名前を確認し、笑顔で資料を手渡した。受付フロアには、焼津高書道部の部員が書き上げた巨大な大会スローガンと世界遺産登録された富士山の絵の大型パネルが飾られ、大会に彩りを添えた。

IP130725TAN000129000_01.jpg

 大会の速報作りに取り組む高校生=25日午後、静岡市駿河区池田のグランシップ

第18回NIE全国大会静岡大会=子供が主役楽しく

2013年07月26日(金)付 朝刊


 <パネリスト>
 松岡賢史朗君(静岡西奈小6年)
 小関萌可さん(静岡高松中3年)
 山内花緒さん(清水東高2年)
 高塚陽子教諭(浜松積志中)
 稲村明教諭(清水町清水小)
 尾崎行雄さん(前静岡市PTA連絡協議会会長)

 <コーディネーター>
 矢沢和宏校長(島田川根中、NIEアドバイザー)

               ◇……………………◇

 □パネル討論
 ■これから-友達同士で魅力紹介/「読みたい」心広がれ/NIE学習増やして
 ・矢沢さん NIEを広げていくためには、どんなことが必要でしょうか。
 ・松岡君 学校で新聞が役立つと言われても、新聞を読まない子がたくさんいます。僕の学級では新聞を使う宿題が出ても、やらない子もいました。ただ単に先生が記事を紹介するだけでは関心を示しません。新聞の魅力を子ども同士で子どもの視点で紹介し合えばいいと思います。
 ・稲村さん 新聞は難しいイメージがありますが、出前講座の講師として新聞社の人に直接、子どもたちに新聞の良さを話してもらうと、子どもの聴き方が違います。新聞社が門戸を開いて歩み寄っていただけると教員もやる気になります。
 ・小関さん 私の学校ではNIEの授業が少ないので、もっと増やしてほしいです。時事的な話題を提供できる新聞を使えば生徒が楽しいと思える授業ができます。新聞には読めない漢字や分からない表現があるので、もう少し簡単に読めるようになるといいです。
 ・山内さん まず、授業で使うことが大事です。学校で新聞が面白いと気付けば、家に帰っても新聞を読もうと思えるのではないでしょうか。生徒へのアンケートでは多くの家庭で新聞を購読していました。授業後にも新聞を読みたいと思えるような取り組みが広がっていってほしいです。
 ・尾崎さん 子どもが楽しく取り組めることが第一。学校、家庭、行政、新聞社が思いを共有し、新しい楽しみ方を創出してほしいですね。例えば、本ではなく新聞記事を読み聞かせしてもいい。新聞社は全国各地のNIEの面白い取り組みを紹介してほしい。新聞と学力の相関関係を示せば、保護者の関心は高まります。学校は新聞を利用した宿題をもっと出していいのでは。遠慮せずに働き掛けてもらいたいです。
 ・高塚さん 教員の視点で記事を選ぼうとしていたと気付きました。ハードルを自分で上げていました。もっと子どもの目線で記事を選ぶことが大事で、そうすればハードルが下がります。学校で私自身がNIEを広げることで、教員としての共有財産をたくさん作りたいです。記事が難しいからと言って全てを排除するのではなく、教員が子どもを手助けする仕掛けを考える必要があるのではないでしょうか。
 ・稲村さん 主役は子どもという肝心なところを忘れていました。子どもが楽しく授業できるNIEであってほしい。新聞は何人もの記者がかかわって家に届けられる芸術作品。それを安く読むことができる文化を子どもに伝えていきたいです。
 ・高塚さん 明日にも授業で新聞を生かしたいという思いがあります。新聞が好きな、この3人の子どもが自分の意見を臆することなく言えていることが成果だと思います。
 ・矢沢さん 新聞販売店でも面白い工夫をしていますね。会場にいる販売店やNIE学会の方はいかがでしょうか。
 ・江崎晴城・藤枝江崎新聞店社長 地域のことを良く知っていて、記者の派遣の窓口にもなる地元の新聞販売店を気軽に活用してもらいたいです。
 ・小原友行・日本NIE学会長 教員がNIEに携わると、その後も長く、深く取り組んでくれます。それはなぜなのかを検証すると、これからの在り方が見えてくるのではないでしょうか。子どもに力が付いた、成長の姿が見えた時に教員はNIEをやらなければいけないという使命感を感じるのです。
 ・矢沢さん 新聞は生き方を学ばせてくれる資料。子どもにとって大きな力になります。すそ野をどう広げるかという切り口はいくつもあります。新聞活用の良さや意義を伝えていくことが大事でしょう。新聞活用のさまざまなアイデアが出されました。26日の公開授業や実践発表、分科会でもヒントが得られるでしょう。

               ◇……………………◇

 □記念講演
 ■未体験の現実へ案内-山口建・県立静岡がんセンター総長
 教師も医師も「師」という言葉が付いた職業。高い倫理観と、子供や患者など弱者への視点を忘れてはならないと思います。NIE活動の主役が子供たちであるように、医療の世界でも、患者が主役です。
 人間の心にとって、教育や学習は重要です。知識や体験から得る「知」、感情を自制して他者を思いやる「情」、目標を達成するための意志を指す「意」、心の負担を軽くして祈りを託す「魂」。豊かな心を持つためには、この四つのバランスが求められます。子供や患者の豊かな心を育むべく、そっと背中を押すことが大切です。
 人間は、生まれた時からさまざまな体験をします。一方で、体験したことのない現実は、人の話や書物、メディアの報道などから学習します。NIEは、未体験の現実への案内役ではないでしょうか。
 医療の世界では特に1980年代以降、患者への説明責任が求められています。患者や家族への情報提供は大きなテーマであり、そこにNIEとの類似性もあります。
 県立静岡がんセンターでは、「よろず相談」をはじめ図書館や講座を通じた学習支援、心のケアを行っています。この仕組みを継続させるには、患者による積極的な活用が大切になる。同じように、NIEを育てるのも子供たちでしょう。
 また、支援や対応策を打ち出すために、患者や家族の悩みを知る必要があります。大規模なアンケートを行い、回答を分類して支援ツール開発に役立てました。
 NIE実践指定校の先生がそれぞれの考えで活動することも大事ですが、その経験を統合して科学的な戦略を立てるのも必要だと考えます。知識を集積し標準化することが、NIE普及につながるのではないでしょうか。
 私は特に小学生時代、新聞に親しみました。当時、三重県海山町(現紀北町)に住んでいましたが、テレビがわが家に入ったのは遅く、父が購読していた複数の新聞に目を通す習慣がありました。この時、読解力と文章力を高めることができました。新聞は読む時間を選ぶことができ、何度でも読み返すことができる特徴もあります。
 NIEの考え方は学校教育のみならず、超高齢化社会にも活用できると考えます。人生の後半には身体機能を少しずつ失っていきますが、心は老化しません。知恵は幾つになっても増え続けます。年齢を問わず豊かな心を持ち続けるために、新聞が担う役割は大きいのです。
IP130725TAN000123000_01.jpg
山内花緒さん

IP130725TAN000124000_01.jpg
 小関萌可さん

IP130725TAN000125000_01.jpg
 松岡賢史朗君

IP130725TAN000126000_01.jpg
 コーディネーター矢沢和宏さん

IP130725TAN000148000_01.jpg
 記念講演する山口建県立静岡がんセンター総長=静岡市駿河区池田のグランシップ

第18回NIE全国大会静岡大会=実践を共有財産に

2013年07月26日(金)付 朝刊


 □パネル討論
 パネル討論は「NIEのすそ野を広げるために」をテーマに、教育現場で新聞を活用するための課題や方策を議論した。NIEに携わる教諭、家庭での活用を考える保護者のほか、初の試みとして小中高校生もパネリストとして参加。教材として活用する学校だけでなく、児童生徒や保護者、取り組みを伝える新聞社が、さらにNIEの役割を認識し、魅力を伝え合い、情報発信する大切さが指摘された。

 ■現状-授業活用の時機逃す/家庭でも低い認知度/難解な語句がネック
 ・矢沢和宏さん 静岡はNIE発祥の地。学ぶ子供たちの考えから出発することがNIEの未来を開くと考え、小、中、高生をパネリストに迎えました。まず自己紹介をしてもらいます。
 ・山内花緒さん 新聞部の部長として、学校の生徒のニーズに合わせた新聞を作るため取材に励んでいます。現代社会で新聞を活用し、教科書より深い理解が得られました。
 ・小関萌可さん 理科の放射線の授業で新聞を使いました。さまざまな視点の記事が討論の参考になりました。新聞の5W1Hを学んだことが人前で話す時に役立っています。
 ・松岡賢史朗君 趣味で新聞をスクラップしています。1面はあまり見ませんが、小学生向けの新聞を中心に集め、特に宇宙の記事や少し変わったニュースが好きです。
 ・尾崎行雄さん 高校生の娘は論説やコラムを読んで記述練習をし、中学生の息子は社会の授業でスクラップをしています。祖父母と新聞を読むのが貴重な交流の時間です。
 ・高塚陽子さん 新聞は社会を知る情報源で、朝や帰りの会で気に入った記事を紹介しています。授業で活用する際、どこから手を付けたらいいのか分からず困っています。
 ・稲村明さん 前任校の清水南小がNIE指定校になり、5年生と好きな記事にコメントを付ける取り組みをしました。指定校が終了後、継続できなかったのが反省です。
 ・矢沢さん NIEの魅力や効果は認められていますが、なかなか広まっていきません。現状や課題をどうみていますか。
 ・高塚さん NIEの流れに乗れず、実践をためらいがち。記事をどう授業で使おうか悩んでいるうちに、タイミングを逃して悔やむことがあります。多くの実践例を手軽に知る機会があれば、一歩踏み出せる気がします。
 ・稲村さん 新聞の良さは分かりますが、難しい言葉があるのが活用のネックになっているのではないでしょうか。大人には何ともない語句も、子どもには一つ一つ説明が必要。インターネットなどさまざまな情報ツールがある中、教材として新聞を選ぶときのハードルになっています。
 ・尾崎さん 保護者の立場から、家庭でのNIEの認知度の低さを感じています。学校から宿題などで働き掛けがない限り、新聞活用への意識は希薄です。学校間、教員間でも温度差が存在している気がします。NIEを実践している教員が異動すると衰退してしまうケースもあり、学校全体での取り組みを考えてほしいです。
 ・矢沢さん 子どもたちの率直な意見を聞いてみましょう。
 ・山内さん 所属する新聞部で、全校生徒を対象に新聞に関するアンケート調査を行いました。多くの生徒が新聞を読まないと答えました。「インターネットやテレビで情報に触れているから」「新聞を読む時間がない」という理由が大半でした。新聞の利点を知らないのだと思います。
 ・小関さん 家庭で新聞をとっていないので読む習慣がないという友だちも多いです。日々のニュースへの関心の薄さも感じます。本も読まず、活字離れは進んでいます。
 ・松岡君 小学生はまだ、世の中のことを知らなくてもいいと思っています。図書室にある子ども新聞を読んでいる友だちは少ない。新聞に少し、抵抗があると思います。
 ・矢沢さん 会場で討論をお聞きになった感想をお願いします。
 ・県NIE研究会会長の望月和彦・静岡由比小校長 NIEを実践している教員は「この記事はあの単元に使える」「この写真を使おう」と、授業につなげて新聞を読んでいます。教材としてどう活用できるかを考える視点を常に持つことが大切です。
 ・NIEアドバイザーの実石克巳・静岡市立高教諭 そうですね。教材として活用するには長期的な視野で準備を進めていくことが必要。個人の力には限界があり、他の教科の教員や保護者の協力でNIEはもっと広がっていくと思います。

               ◇……………………◇

 □基調提案
 ■楽しい学びの発見を-角替弘志・大会実行委員長
 静岡は、わが国のNIE発祥の地とされています。1985年、静岡市で開かれた新聞大会で、新聞界と教育界が協力したNIE推進が新聞の発展に重要だと強調され、取り組みが始まりました。
 言論の自由を踏まえた新聞は、民主主義社会を支える大切な柱。その使命は、教育基本法にある「民主的な国家および社会の形成者」育成を目指す教育の使命と表裏一体です。
 社会の風景を伝える新聞は、広く社会に目を向け、さまざまな事象への関心を深めるために便利な素材。テレビやインターネットにも情報があふれていますが、新聞と重ねることで、より的確な情報を把握できます。さらに、いつも容易に、皆と書き込みをしながらでも見られます。
 NIE活動が始まる前から、新聞を利用していた教師は少なくありません。教科書とは違う刺激があると知っていたのです。ただ、堅苦しい記事が中心で文字も多く、電子媒体で手軽に情報を得られる状況では敬遠されるかもしれません。しかし実践校の子供たちは、楽しく懸命に取り組みました。重要なのは、まず新聞を手に取る機会を与えること。そこから、面白さや価値を実感できるのです。
 活動の活性化には、「NIEはやさしい」と感じ取ることが大切です。「やさしい」とは容易なこと、優しく親しみがあること。「いつも、わくわくするような学びを発見できるやさしいNIE」を旗印に、この大会を新たなステージへのスタートにすることが私たちの願いです。
IP130725TAN000128000_01.jpg
 会場に詰めかけた多くの教育、新聞関係者ら=静岡市駿河区池田のグンシップ

IP130725TAN000150000_01.jpg
 尾崎行雄さん

IP130725TAN000152000_01.jpg
 高塚陽子さん

IP130725TAN000171000_01.jpg
 稲村明さん

IP130725TAN000149000_01.jpg
 基調提案する角替弘志大会実行委員長=静岡市駿河区池田のグランシップ

社会知る新聞どう活用 NIE全国大会
 講演やパネル討論-静岡

2013年07月26日(金)付 朝刊


 新聞を教材として活用するNIE(エヌ・アイ・イー=Newspaper in Education)について議論する第18回NIE全国大会静岡大会が25日、静岡市で開幕した。日程は26日までで、初日は記念講演やパネル討論を行った。実践によって面白さを実感できるNIEの魅力や、取り組みの際のポイントなどを幅広い視点から考えた。
 大会スローガンは「『学び』発見―ふじのくにから『やさしいNIE』」。全国の教育・新聞関係者約800人が参加した。山口建県立静岡がんセンター総長が記念講演し、「NIEの実践から得られた知識を集積し、効果について科学的研究を進めたい」と、普及に向けた課題を指摘した。
 角替弘志大会実行委員長は基調提案「発祥の地 静岡から、新たなステージに向かって」を行った。
 パネル討論は教員、保護者、児童生徒が登壇した。教える側、学ぶ側、家庭のそれぞれの視点からNIEを活性化させるアイデアを出し合った。社会の情報源としての新聞を教材として活用する意義や、NIEの実践活動を通して学ぶ意欲を高めた子供たちの姿を情報発信していく重要性などを確認した。
 大会は日本新聞協会主催、県教委、静岡市教委、浜松市教委共催、県NIE推進協議会と静岡新聞社が主管する。26日は県内小中高9校の公開授業と8校の実践発表を行い、五つの特別分科会を開く。=詳報(12、13面)関連記事(30面)

               ◇……………………◇

 【NIE
 「Newspaper in Education」の略称。「教育に新聞を」活動とも呼ばれ、学校などで新聞を教材にして学ぶ活動を指す。1930年代に米国で始まり、2011年時点で世界74カ国で実施されている。

IP130725TAN000188000_01.jpg

 「NIEのすそ野を広げるために」をテーマに意見が交わされたパネル討論=25日午後、静岡市駿河区池田のグランシップ

家族で広げるNIE 富士の裾野のように
-静岡・内野さん家族

2013年07月25日(木)付 その他


 ■一家の「和」に新聞 
 「○○ちゃんが新聞出てるよ」―。内野未早妃さん(静岡玉川中1年)の一声で家族5人がテーブルに集合する。ページをめくりながら友達の話、社会の出来事、日頃の愚痴まで何でも話す、家族団らんのひととき。「新聞が話題を提供してくれます」と父の暢之さん(51)=農業=は話す。
 内野さん一家は静岡市の中心部から車で約1時間の大沢地区に住む。玉川中は全校生徒18人。玉川小には妹の彰子さん(5年)が通い、全校で38人とともに小規模校だ。地域や学校のイベントがあると記事が載る機会も多く、幼い頃から自然と新聞を見るようになった。
 小学校6年だった昨年、「いっしょに読もう! 新聞コンクール」(日本新聞協会主催)に応募した。生き物が好きな未早妃さんは当時、テレビなどで話題になっていたコウノトリをテーマに選んだ。野生復帰が順調に進んでいると説明する記事を読み、「大切に育ちますように」と願いを込めて書いた感想文は奨励賞に選ばれた。
 中学生になった今は勉強と部活のソフトテニスで忙しく、小学校時代に比べて読む時間は減った。それでも、憧れのクルム伊達公子選手らが出場したウィンブルドンテニスの記事は「すごいなぁって思って、じっくり読んだ」。富士山の世界遺産登録は学校の友達と話題になるなど、新聞が身近な存在であることは変わらない。

IP130711TAN000073000_01.jpg 

「今日はどんな話題が載ってるのかな」。新聞を見る内野さん一家。左から祖母みゑさん、未早妃さん、母康子さん、妹の彰子さん、父暢之さん=静岡市葵区

家族で広げるNIE 富士の裾野のように
-広田奈都美さん家族

2013年07月25日(木)付 その他


 ■一緒に読んでます 
 独身時代を含め新聞をずっと購入している私ですが、現在子供を持つ家族構成になってからはゆっくりと新聞を読む時間はなかなかありません。
読めるとしたらそれは土日。朝食をとり終えて居間でゆっくりとページをめくるひと時はまどろみの習慣であります。
 NIEの記事は日曜に載っていますから当然よく読んでおります。先生方が授業で新聞を活用する様子は教育に対する熱意が伝わってきて授業風景が目に浮かぶよう。わが家の子供たちもよく新聞記事を切り抜いてくる宿題が出て、こういった宿題は家族を巻き込んでの作業になりますから、どの記事を選んだらいいか家族で話し合ったりします。出た宿題がガソリンの値上げについての影響だった時は新聞に穴が何個も開きました。
 NIEの記事は校長先生の朝礼の話みたいで楽しみに読んでいます。
 (漫画家、静岡市)
IP130718TAN000015000_01.jpg
 広田奈都美さん家族

IP130709TAN000070000_01.jpg
 「しずおかさん家」(日曜「子育て」面連載中)も家族一緒に

家族で広げるNIE 富士の裾野のように
-焼津高書道部巨大書を完成

2013年07月25日(木)付 その他


 ■雄大な富士-大会テーマ力強く
 焼津高書道部が、焼津市の同校でNIE全国大会静岡大会のために「富士山」を題材にした巨大書を書き上げた。世界遺産に登録された富士山の雄大な姿と、大会テーマ「『学び』発見―ふじのくにから『やさしいNIE』」の文字を、縦3・5メートル、横5メートルの紙に力強く表現した。開会式前のアトラクションで、制作の様子を映像で紹介する。
 1~3年生6人が空手の形を交えた約10分間の書道パフォーマンスを繰り広げ、作品を完成させた。太鼓や尺八、三味線のリズムに合わせてダイナミックな動きを披露。長さ約1メートルの大筆などを使って雪化粧の富士山、三保松原、駿河湾の白波を次々と描き、富士山の横には黄色の月見草を添えた。空手の形の動きに合わせて山頂付近に金粉をまき、神々しさを加えて仕上げた。
 3年の大石絢子部長は「新聞は時々読むくらいで、『NIE』という言葉も初めて知った。これからは新聞を勉強にも生かしていきたい」と話した。

 ※焼津高の制作の様子を本社公式サイト(アットエス)でご覧になれます。アドレスはhttp://www.at-s.com/news/featured/NIE2013/

IP130714TAN000004000_01.jpg

 書道パフォーマンスを披露する焼津高書道部員=焼津市の焼津高校

家族で広げるNIE 富士の裾野のように
-新聞切り絵作家・マスダカルシさん

2013年07月25日(木)付 その他


 ■子供と一緒に新鮮な発見 
 新聞紙面からユーモアたっぷりの切り絵を生み出すマスダカルシさん(31)=藤枝市在住=が、富士山の作品を本紙に寄せた。新聞独特の柔らかな色彩を生かし、広告や写真のさまざまな青色を組み合わせている。
 幼いころ、朝刊をポストに取りに行く“家族の新聞係”だったマスダさんにとって、新聞は日常に溶け込んだ存在。制作のきっかけは「新聞の写真や文字の並びに、いろいろな生き物の形が見えた」という新鮮な発見だ。
 2児の母になった今も毎日、自宅の作業机に向かう。その様子を一番近くで見つめるのは長女六花ちゃん(2)。「何ができるかな」と問い掛けるマスダさんの手つきを見詰めて「猫だ」と喜ぶ。
 親子向けのワークショップも行う。「子供の作品は、色にとらわれなくて新鮮。同じ素材でも、人それぞれ見えてくるものや切り取り方が違う。親子で楽しめます」
 マスダさんが長男誕生を機に制作した「樹木」は、NIE全国大会静岡大会中、26日の静岡中田小の公開授業会場に掲示される。

IP130712TAN000062000_01.jpg

 六花ちゃんと話しながら制作するマスダカルシさん=藤枝市

新聞と教育未来模索 NIE全国大会開幕-静岡

2013年07月25日(木)付 夕刊


 第18回NIE全国大会静岡大会は25日、静岡市駿河区のグランシップで開幕した。26日まで、講演やパネル討論、公開授業などを通して、教育現場や家庭での効果的な新聞の活用策を探る。全国大会の県内開催は初。
 大会スローガンは「『学び』発見―ふじのくにから『やさしいNIE』」。日本新聞協会主催、県教委、静岡市教委、浜松市教委共催、県NIE推進協議会と静岡新聞社が主管する。
 開会式には全国から集まった教育関係者や新聞社・新聞販売店関係者、保護者などが出席した。白石興二郎日本新聞協会長は「静岡はNIE発祥の地。どのようにすればNIEのすそ野が広がっていくか、大会を通してともに考えていければ」とあいさつした。高橋尚子県教育委員長は祝辞で「パネル討論ではNIEの教育を受ける子供たちも登壇するので、大変楽しみにしている」と期待した。大石剛静岡新聞社社長は「NIEの原点に立ち返り、今後の活動につながる材料を一つでも多く持ち帰ってほしい」と歓迎の言葉を述べた。
 初日は開会式に引き続き、山口建・県立静岡がんセンター総長の記念講演、「NIEのすそ野を広げるために」をテーマにしたパネル討論を行う。

IP130725TAN000032000_01.jpgのサムネール画像
全国の教育、新聞関係者などが集い開幕したNIE全国大会静岡大会=25日午後、静岡市駿河区池田のグランシップ

新聞活用「学び」発見へ
 NIE全国大会きょう開幕-静岡

2013年07月25日(木)付 朝刊


 新聞の教育現場での活用策を議論する第18回NIE全国大会静岡大会は25日、静岡市駿河区のグランシップで2日間の日程で開幕する。全国の教育関係者や新聞社・新聞販売店関係者、保護者、学生など約1300人が参加を予定している。
 大会スローガンは「『学び』発見―ふじのくにから『やさしいNIE』」。1985年の新聞大会(静岡市)で初めて提唱されたNIEの「発祥の地」として原点に返り、誰でも無理なく楽しく取り組める実践を発信する。日本新聞協会主催、県教委、静岡市教委、浜松市教委共催、県NIE推進協議会と静岡新聞社が主管する。
 初日は山口建・県立静岡がんセンター総長の記念講演と児童・生徒、教員、保護者によるパネル討論、2日目は県内小中高9校の公開授業と8校の実践発表を行い、「静岡からの提言」など五つの特別分科会を開く。

NIE(新聞使った授業) 全国から先生集合
-25、26日に静岡で大会

2013年07月21日(日)付 その他


 新聞[しんぶん]を使[つか]った授業[じゅぎょう]「NIE[エヌアイイー]」に取[と]り組[く]む全国[ぜんこく]の先生[せんせい]たちの研究大会[けんきゅうたいかい]が25、26日に静岡市駿河区[しずおかしするがく]のグランシップで開[ひら]かれます。新聞社[しんぶんしゃ]の人[ひと]たちも合[あ]わせ約[やく]1300人[にん]が集[あつ]まり、NIEがどうしたら富士山[ふじさん]の裾野[すその]のように大[おお]きく広[ひろ]がるかを話[はな]し合[あ]います。

 1985年[ねん]に全国[ぜんこく]の新聞社[しんぶんしゃ]の会合[かいごう]が静岡市[しずおかし]で開[ひら]かれた時[とき]に「NIEを進[すす]めよう」と決[き]まったことから、静岡県[しずおかけん]は「NIE発祥[はっしょう]の地[ち]」と言[い]われています。県内[けんない]でNIE全国大会[ぜんこくたいかい]が開[ひら]かれるのは初[はじ]めてです。
 初日[しょにち]の話[はな]し合[あ]いには静岡市立西奈小[しずおかしりつにしなしょう]6年[ねん]の松岡賢史朗君[まつおかけんしろうくん]=写真[しゃしん]=が静岡市立高松中[しずおかしりつたかまつちゅう]3年[ねん]の小関萌可[こせきもえか]さん、清水東高[しみずひがしこう]2年[ねん]の山内花緒[やまうちかお]さんと一緒[いっしょ]に参加[さんか]し、先生[せんせい]や父親代表[ちちおやだいひょう]と意見[いけん]を交換[こうかん]します。
 2日目[め]は静岡市[しずおかし]の安西小[あんざいしょう]と城北小[じょうほくしょう]、中田小[なかだしょう]の児童[じどう]がグランシップを訪[おとず]れ、公開授業[こうかいじゅぎょう]を行[おこな]います。静岡市立東源台小[しずおかしりつとうげんだいしょう]と浜松市立有玉小[はままつしりつありたましょう]、沼津市立原小[ぬまづしりつはらしょう]の先生[せんせい]は普段[ふだん]の授業[じゅぎょう]の様子[ようす]を発表[はっぴょう]します。授業[じゅぎょう]・発表[はっぴょう]は中学校[ちゅうがっこう]6校[こう]、高校[こうこう]5校[こう]も行[おこな]います。

IP130709TAN000073000_01.jpgのサムネール画像
新聞を読み、話し合う沼津市立原小の児童。NIE全国大会で授業の様子を石川有記教諭が発表する=沼津市原の同小

静岡市教委と本社協定 授業に新聞活用推進

2013年07月12日(金)付 朝刊


 静岡市教委と静岡新聞社は11日、市内の学校で静岡新聞を活用し、教育の質の向上を目指す協定を締結した。協定では、市立学校が静岡新聞の記事を個別の許諾申請や問い合わせなしで使える範囲を明確化した。従来から利用されている授業に加え、学級便りや学校ホームページ、校内掲示などでの利用を包括的に認めた。記者の派遣、特別料金での新聞提供も推進する。
 同日は市役所清水庁舎で、高木雅宏市教育長と北村敏広静岡新聞社専務が協定書の覚書を交わした。高木教育長は「子どもたちが新聞を窓口として、世の中の動きを感じる能力を養える」と評価した。
 協定締結は県教委に続き2例目。25日からの第18回NIE全国大会静岡大会を契機とし、今後も県内各市町の教育委員会と締結を進める。

新聞活用学校で推進-本社と県教委が協定

2013年07月03日(水)付 朝刊


 静岡新聞社と県教育委員会は2日、県立の学校現場で新聞の活用機会を増やすため、新聞利用に関する協定を結んだ。25日に開幕する第18回NIE全国大会静岡大会(日本新聞協会主催)を契機に、県内各市町の教育委員会にも同様の協定締結を呼び掛けていく。
 協定書は、許諾申請や問い合わせの手間を省こうと、静岡新聞記事の2次利用について、学校で扱い可能な範囲を明確化した。記者を授業へ積極的に派遣することも記した。
 県庁で開かれた締結式には、静岡新聞社の大石剛社長と県教委の安倍徹教育長が出席した。大石社長は「児童生徒の読解力を養うために新聞を役立ててほしい」と期待を込め、安倍教育長は「学校も社会の動きに無関係ではいられない。さまざまな場面で活用していきたい」と述べた。

月刊NIE@しずおか(第9号)
=地元の課題掘り下げ

2013年07月06日(土)付 朝刊


 □授業拝見
 ■地元の課題掘り下げ 「空港」「新東名」を討論-川根高(VOL.3)
 県立川根高(堀田英正校長、176人)は本年度、新聞記事を資料に討論するディベート形式の授業を開始した。生徒はテーマに対して「肯定」「否定」の立場に分かれ、それぞれに有利な情報を新聞から仕入れる。「社会の出来事を地元に掘り下げて議論する」を目標に、論戦は日増しに熱を帯びてきている。

 「空の旅に向かう県民の利便性が大幅に向上した」「羽田のようなハブ(拠点)空港の機能がないため不便だ」。3年生の政治経済の時間に行った討論会。生徒は「静岡空港開港の是非」をテーマに意見を出し合った。事前に配布された空港関連記事のコピーを注意深く読みながら、激しい舌戦を繰り広げた。
 反対派が「搭乗率が当初予測より低く、県民全体の利益になっているとは言えない」と述べれば、賛成派は「世界遺産登録で富士山が注目を浴びる。空港の利用客も増えるはず」とすかさず反論。
 担当の中園亮平教諭(44)は「活発に意見が出て盛り上がった」と満足げに振り返り、昨年の修学旅行で同空港を利用したことを挙げて「自分の経験を通して経済を考えるちょうどいい議題だった」と分析した。
 川根高はNIE全国大会(25、26日・静岡市)の公開授業で、「新東名における経済波及効果」をテーマにしたディベートを披露する予定。中園教諭は「空港を扱った時は、川根本町に引き付けて討論する視点が足りなかった」と残念がる。「公開授業では新東名が町に与えた影響や、町に人を呼び込む方法なども踏まえた意見が出れば」と注文を付けた。
 公開授業を目前に控え、生徒は新東名の経済効果について書かれた記事を探す作業に取り掛かっている。「経済効果を大々的に取り上げる論調の記事が多いため、否定派は不利な戦いになる」と中園教諭はニヤリ。「『開通による効果を町民は感じていない』などの視点を持ち、何とか形勢を盛り返してほしい」と期待する。
IP130701TAN000166000_01.jpg
新聞記事を資料に討論を繰り広げる生徒=6月、川根本町徳山の県立川根高

               ◇……………………◇

 ■インタビュー 子供の意見楽しみ-NIE静岡大会で保護者代表としてパネリストを務める尾崎行雄さん

IP130702TAN000036000_01.jpg


 NIE全国大会静岡大会のパネル討論「NIEのすそ野を広げるために」でパネリストを務める。2011~12年度、静岡市PTA連絡協議会長を務めた。高校3年の長女と中学3年の長男の父親。51歳、静岡市葵区。

 ―家庭ではどのように新聞に親しんでいますか。
 「子供たちや家族とは、地域の話題やスポーツの記事を見て会話が弾むことが多い。学校の取り組みについて情報を得る手段でもある。長女は論説やコラムなども読み、社会事象について理解を深めるとともに、文章の書き方も学んでいる」

 ―NIEにより得られる効果をどう考えますか。
 「新聞ではさまざまな分野の記事に触れられるため、語彙(ごい)力が増える。文章の読解力を鍛えることにもつながる。また、学校での新聞作りを通して、見やすさを含め、表現の仕方を学べる」

 ―パネリストとして静岡大会に期待することは。
 「今回、パネリストに子供や保護者を加えた点に意義がある。子供の意見を吸い上げることで、NIEの新たな方向性を探ることができると考える。NIEの活用法が全国に分かりやすく発信されることを期待する」
    ◇
 13日に静岡市駿河区で開かれる市PTA連絡協議会の10周年記念講演会の実行委員長としても、準備に駆け回る。

               ◇……………………◇

 □寄稿
 ■指導者の背中そっと押す(望月和彦/県NIE研究会会長)

IP130624TAN000048000_01.jpg
 私たちの研究会では、NIEの実践者及び活動に関心のある方々が、自らの実践を持ち寄り、意見交換等により内容を深め合い、情報交換を通して、NIEの実践力を高めようとしています。また、これから始めてみたいと考えている方の参加も大歓迎で、実践者と自由に対話のできる雰囲気の中で、具体的な「取り組みへのヒント」を見つけ出すことができることが、この集まりの特徴でもあります。会の目的の一つは、NIEの素晴らしさをより多くの人たちに知ってもらい、仲間を増やしていくことです。
 実践者の中には、かつて推進協議会の指定校で経験を積まれて、学校を異動してもご自分で実践を進めている方々がいます。経験に裏打ちされたすばらしい内容で、NIEのよさや生き生きとした子どもの学びの姿が語られ、大いに参考になるものばかりです。
 そんな中、初心者の方からは、「子どもたちに新聞を読むという習慣がない、文章を読むこと自体に抵抗がある」「教材研究に時間がかかるのでは」など、自分が受け持っている子どもたちの実態からすると、「道のりは遠いような気がする」という声も聞かれます。活動の成果の部分だけを見ると、ある意味で圧倒されて、果たして自分にできるだろうかという思いをもたれてしまうのかもしれません。「いきなり、新聞記事から入らなくても、写真だけで進める方法もあります」「導入だけ、最初の5分間だけの活動でも十分効果があります」―実践者の言葉で、はじめの一歩を踏み出す勇気をもらう参加者もいます。
 今回の全国大会静岡大会が、「やさしいNIE」をテーマにしているとお聞きしました。興味がある、やってみたいと思う指導者の背中をそっと押していただけるような、そんな大会になることを期待しています。そして、その参加者の中から、私たちの仲間が少しでも増えてくれれば、幸いに思います。

 ■未来の「有徳の人」育てる(谷野純夫/県立中央図書館長)

IP130621TAN000027000_01.jpg
 NIEは、「教育に新聞を」と訳されますが、教育の中に入った新聞は、「教材」になります。教材としての主食は「教科書」ですから、NIEの「教材」である新聞は、副食と考えられます。主食と副食が、子供たちの血となり肉となって、心が育ち、思考力が高まるわけです。
 ところで、「教材」としての新聞の優位性は、何でしょうか。それは、教科書同様の客観性、中立性に加えて、日常性、即時性、記録性にあると思います。図書館の立場から考えて見ると、本と新聞・雑誌の関係に似ていると気がつきます。実は、図書館の資料には、図書資料と逐次刊行物という大きな区分けがあります。図書資料とは本のことを、そして逐次刊行物とは、新聞・雑誌のことを指します。特に、新聞は、毎日刊行される資料であり、「記憶の番人」と言われる図書館にとって、地域の記録の根幹を成すものとして大変重要です。
 図書館では、新聞は、縮刷版・オンラインデータベース・マイクロフィルム・CDといった様々な媒体で提供されています。利用者の皆様は、世界や日本、地域の情勢を知るだけでなく、他の資料と組み合わせて、歴史的な調査にも新聞を活用しています。NIEのEは、ここでは社会教育あるいは生涯学習ということになります。新聞は、図書館の資料であるとともに「学習材」として、県民の生涯学習の拠点という県立図書館の重要な機能を支えてくれているのです。
 新聞を読む習慣と読み方を身につければ、情報や言葉の荒海を進んでいくための心強い羅針盤を手に入れたも同然です。NIEは、新聞に親しみ、教科学習を深め、社会に目を開き、より良い生き方を探っていく子ども、即ち未来の「有徳の人」を育てます。今回の静岡大会により、NIEのすそ野が富士山のごとく広がることを期待します。

               ◇……………………◇

 ■パネリストの6人顔合わせ-NIE静岡大会
 第18回NIE全国大会静岡大会でパネル討論を行うパネリストとコーディネーターがこのほど、初顔合わせの会を静岡市内で開いた。それぞれが普段の新聞との関わりやNIEに対する考え方などを話し、討論の進め方を話し合った。
 パネル討論は大会初日の25日、「NIEのすそ野を広げるために」をテーマに行う。パネリストは松岡賢史朗君(静岡西奈小6年)、小関萌可さん(静岡高松中3年)、山内花緒さん(清水東高2年)、高塚陽子教諭(浜松積志中)、稲村明教諭(町立清水小)、尾崎行雄さん(前静岡市PTA連絡協議会会長)。コーディネーターはNIEアドバイザーの矢沢和宏・島田川根中校長が務める。

               ◇……………………◇

 ■学習のポイント、互いに取材

 県NIE研究会(会長・望月和彦静岡由比小校長)はこのほど、第7回定例会を静岡市駿河区の静岡新聞社制作センターで開いた=写真=。NIEアドバイザーの実石克巳静岡市立高教諭が講師を務め、「絶対に読まれる新聞を作ってみよう」をテーマに「テスト対策」を新聞形式にまとめる実習を行った。
 2人1組で互いに専門教科の学習のポイントを取材し合い、似顔絵や見出しで人の目を引く工夫をした。

IP130624TAN000041000_01.jpg

               ◇……………………◇

 □NIEワークシート
 20130706図1.jpg