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新聞読むほど成績向上 学力テスト 正答率に差-17年度

2017年08月29日(火)付 朝刊


 県教委の2016年度の学習状況調査の分析によると、「ほぼ毎日」新聞を読む児童生徒と「読まない」児童生徒では正答率に小6で8・1ポイント、中3で8・8ポイントの差があった。県教委は学力テストの正答率と新聞を読む頻度に相関関係が認められるとして、授業などでの新聞の活用を奨励している。
 「ほぼ毎日」新聞を読む小6の平均正答率は70・7%、中3では71・1%で、新聞を読む頻度と比例して平均正答率が高かった。県教委は17年度のデータについても今後、同様の分析を行う。
 17年度の学習状況調査では、新聞を「ほぼ毎日」「週に1~3回程度」読むと答えた県内公立の児童生徒の割合は小6が20・4%(16年度比2・4ポイント減)、中3が14・9%(同4ポイント減)で、私立も含めた全国の割合をやや下回った。一方、新聞を「ほとんど、または全く読まない」としたのは小6が57・5%(4・1ポイント増)、中3が66・8%(6ポイント増)だった。

 

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月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新規実践校が意気込み 積み重ね、深い学びに

2017年08月05日(土)付 朝刊


 日本新聞協会はこのほど2017年度のNIE実践指定校を決定し、県内では県NIE推進協議会が推薦した14校に決まった。実践校には、県内で発行される7紙が一定期間無料で提供され、NIE活動に活用される。新規実践指定6校の担当教諭に活動の抱負を聞いた。

 

 【2017年度NIE実践指定校】 
 ■新規 浜松西都台小、富士宮西富士中、静岡観山中、川根本町本川根中、遠江総合高、静岡聴覚特別支援学校
 ■継続 富士宮上井出小、静岡井宮小、森小、裾野富岡中、浜松可美中、三島南高、静岡聖光学院中・高、東海大静岡翔洋小

 

 ■良い文章のお手本に-川根本町本川根中・羽入健太郎教諭
 中学生の頃、父親によく「新聞を読め」と言われていたことを思い出します。当時はインターネットも普及しており「なぜ大人は新聞を読ませるのだろう」と疑問を感じていました。その答えは自分が教壇に立ってやっと分かりました。
 国語の授業を担当する私は生徒たちの文章力に課題を感じています。文章の組み立てが破綻していて何を伝えたいのか分からない文章や、語彙[ごい]が少なく表現力に乏しい文章などを目にする中で、新聞記事(特にコラムや社説)は生徒にとって「良い文章のお手本」になると考えています。
 NIE教育を通して社会に対する見方や考え方を広げていくとともに、文章力を伸ばす取り組みも実践していきたいです。

 

 ■全職員が記事を紹介-静岡観山中・滝志保教諭
 観山中生の約3分の1の家庭は、新聞を購読していません。長い文章、難易度の高い言葉に、意欲を失う生徒が多いように感じます。
 昨年度より週1回「朝の新聞タイム」を設け、全職員交代で新聞記事を紹介し、一つの記事を全生徒で読む機会を持っています。
 職員が腐心している点は、記事の内容と難易度です。親しみやすく、分かりやすい内容で、思考を深め、新しい知識が得られる、そんな記事を取り上げようと心掛けてきました。これまで生態系、政治、情報化社会などさまざまな分野の記事が選ばれてきました。
 本校の研修テーマは「語彙[ごい]力の育成」です。新聞を楽しめる生徒を育てることで、語彙力の育成につなげていきたいと考えています。

 

 ■ひと手間掛け成長を-遠江総合高・小杉幸一教諭
 キャリア教育、生涯学習の観点から、毎週1回10分間「朝NIE」、毎日「スクラップノートリレー」を実施。1学期は3年生対象に取り組みました。2学期からは、1、2年生も実施予定です。
 「しずおか新聞感想文コンクール」には、全校生徒が参加予定。新聞を読んで記事にコメントできる力は、今日求められている能力です。国語科の協力も得て取り組みます。
 生徒も先生も多忙感から目の前のことにとらわれがちですが、NIEで、見えてくる世界が広がるに違いありません。「ひと手間掛ければ、ふた手間分育つ」「ひと手間掛ければ、ふた手間省ける」と関口修司氏(日本新聞協会NIEコーディネーター)。
 さあ今、NIEにひと手間掛ける時です。

 

 ■記事から共通点探す-富士宮西富士中・中嶋優貴教諭
 1年目の本年度は「NIE~新聞記事と自分を結ぶ~」をテーマとし、新聞記事から自分の体験や経験と比較したり共通点を見つけたりすることで自分の考えがもてるような実践に取り組んでいきます。
 本校では4年前から毎週金曜日を「新聞の日」と位置付け、朝の10分間で全校共通の記事を要約し、それに対する自分の考えを書く活動を行っています。また、新聞のコピーを校内各所に掲示したり、図書室に新聞コーナーを設けたりすることで、新聞がより身近に感じられる環境整備を行っています。
 新聞をきっかけとして自分の思いや考えを持ち、社会の動きを敏感に捉える生徒を育てるために、私たち教職員も新聞記事を生きた教材として活用させていきたいと思います。

 

 ■気軽に読める場作り-浜松西都台小・林裕一教諭
 インターネットが普及して、人々の情報を手に入れる手段が多様化している現在、子どもたちにとって新聞が遠い存在になっています。本校の児童も、新聞に目を通す習慣がある子が少なく、新聞をとっていない家庭も存在しています。
 まずは、子どもたちと新聞の距離を縮めたいと思いました。そこで、校内に新聞の立ち読み台を設置し、気軽に読める場を作りました。また、学年に応じて活用した活動を行っています。
 今後の実践を積み重ねることにより、新聞が子どもたちにとって身近な存在になるだけでなく、子どもたちが「気づく力」「調べる力」「伝える力」を成長させ、「深い学び」につながるように工夫していきたいと思います。

 

 ■情報に主体的な姿勢-静岡聴覚特別支援学校・山根渉教諭
 今回NIE実践指定校に選ばれたことで、NIE教育によって〝主体的に情報を求める姿勢〟を生徒に身に付けてほしいと願いました。耳の聴こえにくい幼児・児童・生徒には「受け身の姿勢になりやすい」という傾向があります。自ら気になったことを調べたり、情報を多角的に捉えたりすることが苦手です。それらの課題にNIEの実践によって取り組んでいきたいと思っています。
 まずは複数紙を読み比べることのできる環境を整えていただけるので、一つの記事について教室内で話し合う機会を設けることから始めようと思います。新聞という視覚情報を活用できるメディアを通して、社会を知ろうとする主体性が身に付くように尽力いたします。

 

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本年度の抱負を語る実践指定校の教諭=6月、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 

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 ■紙面授業=国語-近づく「終戦の日」 桐陽高 小池太一先生
 かつてロンドンを訪れたとき、帝国戦争博物館というところを見学したことがあった。戦車や戦闘機が展示されているフロアを漫然と歩き回っていたが、ある展示物の前で思わず足を止めた。本物の原子爆弾だった。それは深緑色に鈍く光る鉄の構造物であったが、他のどの兵器とも違っていて、なにか異様で、不気味な感じがした。こんなものを投下された日本という国の歴史を考えた。
 今年も「終戦の日」が近づいている。2016年8月15日付「静岡新聞」朝刊の社説にはこうある。「『二度と戦争はごめんだ』。戦後日本の平和国家の歩みは、71年前に国民が抱いたこの思いが原点だろう。...筆舌に尽くしがたい惨禍の歴史を問い直し、思いを引き継ぐ。終わりがあろうはずのない取り組みが揺らいでいないか」。
 何年も新聞を読み続けている読者には、もうすっかり慣れてしまって、決まり文句のように思えるかもしれない。しかし、日本が太平洋戦争で経験した惨禍と、失敗を繰り返すまいという決意はリアルなものだ。そのリアリティーを実感するには、自分が住んでいる地域が、当時どのように太平洋戦争をくぐり抜けたのかを調べてみるとよいだろう。
 桐陽高の地元、沼津市を例にとってみると、何度も米軍の空爆を受けている。爆撃、機銃掃射、焼夷[しょうい]弾といった攻撃で、300人以上の市民が亡くなっている。特に1945年7月17日の空襲は大規模なものであり、御前崎方面から沼津上空に侵入したB29爆撃機130機が行った9千発以上の焼夷弾攻撃によって、沼津市街は焼け野原になっている。戦前から沼津に住んでいる方なら記憶しておられるだろう。
 また、海沿いの地域には特攻兵器(「人間魚雷」と言われる「回天」、モーターボート特攻の「震洋」など)の格納庫があった。桐陽高がよく体育祭をしている愛鷹山には、帝国陸軍が本土決戦を想定した陣地を構築した。JR沼津駅北側には、レーダーなどの製造を目的とした広大な海軍工廠[こうしょう]があった。
 今年の「終戦の日」、「静岡新聞」の社説は、何を伝えてくれるだろうか。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(5)=習慣付ける題材選びを
 新聞を活用することで、子どもたちの学びが広がり、深まり、目標が効果的に達成される場合があります。そのために指導する側が、「新聞を活用して伝えたいこと」を明確にして指導することが大切です。
 子どもたちの実態に応じた適切な題材選びも大切です。最初から難易度の高い記事を取り扱うのではなく、新聞に慣れさせてから難易度を高めていくとよいでしょう。
 例えば写真には、多くの子どもたちが興味を示します。朝の学級活動や授業などの導入時に、その日取り上げたい新聞記事の見出しと写真を紹介して、一言添えます。「季節の写真」「行事の写真」「スポーツの写真」などは、さまざまな教科や特別活動の学習に関連づける展開が可能です。
 投書も使えます。静岡新聞の「ひろば」欄の10代の投書特集では、子どもたちに身に付けさせたいことが、同年代の子どもたちの素直な言葉で語られていることがあります。学級活動の時間に紹介すると、学校生活を考えて送るきっかけになります。
 最近は家庭でのNIEも注目されています。夏休みは取り組みのチャンスです。
 (清水西高・吉川契子)

新聞販売店 教育連携を 県内2教諭 分科会で意見-名古屋・全国大会閉幕

2017年08月05日(土)付 朝刊


 名古屋市で開かれた第22回NIE(教育に新聞を)全国大会は最終日の4日、テーマごとの分科会プログラムを行い、2日間の日程を終了した。県内からはNIEアドバイザーの山崎章成・浜松市立与進北小教諭と磐田市立城山中の萩田純子司書教諭がそれぞれ特別分科会に登壇し、NIEの裾野を広げる取り組みに向け、意見を述べた。

 新聞販売店との連携を考える分科会で、NIEに力を入れている販売店の代表者らが出前授業など学校と新聞社をつなぐ具体的な活動例を紹介した。コーディネーターを務めた山崎教諭は「学校側は全国津々浦々の新聞販売店が持っているノウハウを教育に生かしてほしい。新聞社も学校にアプローチするのは大変かもしれないが、間に入る販売店をいかに活用するかということ」と述べた。
 萩田司書教諭は「情報活用能力を育てる学校図書館活動とNIE」と題する分科会に登壇した。学校図書館を基盤に、情報収集や整理、分析を行う技術を系統的に指導する大切さを強調した。「各教科がそれぞれ補い関連し合い、中心に学校図書館がある姿」を理想とする一方で「互いの教科の授業内容を知らない教科担任制などがネック」と指摘し、仲立ちになる司書教諭の役割を重要視。出来事の経過を詳しく知ることができる新聞など複数媒体から情報収集することの意義や、授業の流れを説明した。
 閉会式で大会実行委員長の土屋武志・愛知県NIE推進協議会長(愛知教育大教授)は「多くの先生方に参加いただいた。学校現場に帰ったら、普段の授業から取り組めるアイデアを他の先生方に提案していってほしい」と呼び掛けた。

 

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コーディネーターを務めた分科会で登壇者の話に耳を傾ける浜松市立与進北小の山崎章成教諭(右)

 

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学校図書館を基盤とした情報活用スキルの系統的指導について考えを述べる磐田市立城山中の萩田純子司書教諭(左)=4日午前、名古屋市

ノーベル賞受賞「渡航中で知らず...」-天野浩教授講演

2017年08月04日(金)付 朝刊


 名古屋市で3日開幕したNIE全国大会の記念講演で、ノーベル物理学賞受賞者の天野浩名古屋大教授(56)=浜松市出身=が、2014年に同賞を受けた際の"秘話"を語った。受賞決定時に海外渡航中で自らの受賞を知らず「経由地ドイツで見た『おめでとう』というたくさんのメールの意味もよく分からないままフランスに到着し、現地で待っていた記者から受賞を知らされた」と苦笑した。
 帰国後にノーベル財団からメール連絡が来ていたことに気付き、読んでみると「電話やファクス、メールであなたに連絡しているが返事がない。このままだと賞を取り消す可能性がある」と記されていて、ひやひやしながら財団に連絡を入れて事なきを得た-との逸話で会場を和ませた。
 授賞式が行われたスウェーデンのストックホルムでの記者会見で海外記者から、現在の大学や研究所での基礎研究を取り巻く状況を聞かれたが「研究ばかりしていたので、全然分からなかった」と話し「新聞を読んでおけばよかったと思った」と当時を振り返った。

 

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ノーベル物理学賞受賞時の秘話を披露する天野浩・名古屋大教授=3日午後、名古屋市

NIE=新聞で世界ひらく 名古屋で大会開幕 「情報に触れ、自分の意見に」 児童ら交え座談会-教育実践報告

2017年08月04日(金)付 朝刊


 学校の授業など教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の実践報告をする第22回NIE全国大会が3日、名古屋市で始まった。「新聞を開く 世界をひらく」をスローガンに4日まで、教材としての新聞の活用に関する発表や意見交換を行う。

 県内からは県NIE推進協議会の安倍徹会長と、NIE実践指定校の教諭やNIEアドバイザー、新聞関係者ら約20人が参加した。
 初日は、2014年にノーベル物理学賞を受けた天野浩名古屋大教授(56)=浜松市出身=が「世界を照らすLED-未来を照らすことの大切さ」と題し記念講演を行った。
 天野教授は幼少期の新聞との関わりや、恩師である赤崎勇名古屋大特別教授との出会い、青色発光ダイオード(LED)実現までの試行錯誤などを振り返り「特別な才能がなくても、一心不乱に頑張れば人々のためにできることがある」などと語った。
 「頭の知識 体の知識」をテーマに据えた座談会では、大会実行委員長の土屋武志・愛知県NIE推進協議会長=愛知教育大教授=が進行役を務め、天野教授や女子レスリング五輪メダリストで至学館大副学長の吉田沙保里さん、愛知県内の高校生や小学生らが新聞に対して普段感じていることなどを述べ合った。土屋会長は「子供の頃からいろいろな記事や情報に触れ、自分の意見にしていくような、NIEがやっていることは、まさにこれから必要なこと」と議論を締めくくった。
 最終日の4日は、公開授業や実践発表、特別分科会などを行う。

 

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「頭の知識 体の知識」をテーマに議論を交わしたNIE全国大会の座談会=3日午後、名古屋市

NIE指導法 教員ら学ぶ-袋井で講座

2017年08月03日(木)付 朝刊


 磐田と袋井、森の3市町の教員で構成する磐周教育研究会は2日、教育現場や学校図書館での新聞の活用を考える「NIE講座」を袋井市立袋井南公民館で開いた。小中学校の学校図書館の担当教員ら約30人がワークショップ形式で児童生徒への指導法を学んだ。
 講師を務めた焼津市立大井川中の矢沢和宏校長(58)は、さまざまな分野のニュースに子供が触れることで、「未知の分野への関心を持ち、可能性が広がる」と強調した。
 興味を持たせる切り口として、本紙の見出しのしり取りなどを紹介。受講者はニュースを簡潔にまとめている事例や、新聞の網羅性などを確認した。
 受講した袋井市立浅羽北小の花嶋芳久校長(55)は「多種多様な出来事を知り、子供の可能性を広げるため新聞にできる限り親しませたい」と話した。

 

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児童生徒にとっての新聞の有用性を学ぶ受講者=袋井市立袋井南公民館