NIE関連記事

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事で政策比較 自分なりの「一票」 メディアリテラシー育む 川根高生が知事選題材に授業

2021年07月03日(土)付 朝刊


 川根高(川根本町)の生徒が6月に行われた知事選に合わせ、新聞記事を活用して立候補者の政策を比較する授業に取り組んだ。情報を取捨選択し、自分なりの考えを持って一票を投じるには-。投票用紙を用意して模擬投票も行い、有権者として何が必要かを考えた。

 現職川勝平太氏と新人の一騎打ちとなり、川勝氏が4選を果たした知事選。選挙期間中の6月14日、3年生16人が静岡新聞に掲載された両候補の対談や告示日の第一声、アンケートや特集記事などを基に「リニア水問題」「新型コロナ対策」「経済対策」「将来ビジョン」の4テーマで両氏の政策を表にまとめた。
 「あまり発言していない内容は優先順位が低いのかな」「この人は女性活躍を強調している」-。生徒は2人一組で記事を探し、活発に意見を出し合う。インターネットで情報を得ることが当たり前の世代だが、食い入るように記事を読む姿が印象的だ。投開票日直前の授業で模擬投票を行った上で、実際の選挙結果との比較にも取り組んだ。
 大森玲雄さん(17)は「意見を比べて自分にどう影響するか考えることの大切さが分かった」。コロナ対策に注目した高畑菜悠さん(18)は「公約の具体性、県民のためになるかが重要だと感じた」と話した。
 地歴・公民を教える池田哲朗教諭(40)が授業で選挙を取り上げるようになったのは、2016年の米大統領選から。「ネットは知りたい情報しか入ってこないという側面もある。新聞から客観的な情報を得る作業は視野を広げ、生徒の反応が思った以上に良かった」と振り返る。
 一連の授業後、生徒たちが静岡新聞「ひろば」へ投稿を行うことも特徴の一つ。池田教諭は「(投稿で)自分の意見に対する責任も生まれる。メディアリテラシーを身に付け、主権者としての力を高めていってほしい」と狙いを語った。

 

20210703_01.jpg
新聞記事を見て知事選立候補者の政策を比較する生徒=6月中旬、川根本町の川根高

 

20210703_02.jpg

考えた一票で模擬投票も行った

 
               ◇........................◇ 
 

■紙面授業 英語 文字以上の情報伝達を キラリ高 池谷光宏先生

 今年、静岡県を含む東海地方は統計開始以降2番目に早い、5月16日に梅雨入りしました。翌日の静岡新聞は色鮮やかなアジサイの写真とともに梅雨入りを報じました。
 さて、梅雨に当たる英語は何でしょう。
 答えは一つではないのですが、シンプルなのは「the rainy season」です。「あれ? 梅は?」という声が聞こえてきそうです。
 梅は英語でplum(またはJapanese apricot)。文字通りplum rainと表現しても、梅雨と同等の季節感を表現するのは難しいと感じます。これは「文化(culture)」の違いと考えることができるでしょう。
 英語のcultureはラテン語のcolere(耕す)という言葉に由来します。「耕す」対象は最初は「土」という具体的なものでしたが、だんだんと「心」や「感じ方」という抽象的なものにまで広がりました。言葉はまさに文化という畑に育つ作物と言えます。
 同じ文化を共有しているからこそ言葉を多角的に捉えることができ、文字以上の情報を読み取ることができるのでしょう。
 令和4年度から高校の学習指導要領が改訂され、外国語(英語)では、4技能5領域(聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]・書くこと)の育成と発信力の向上が目標となっています。言語はあくまでも伝達手段の一つであり、大切なのは、話し手と受け手の間で情報が正しく共有されることです。言語の学習は、単語や文法、構文の暗記のように、表面的なものになりがちです。
 言語の土台となる文化や考え方にも目を向けることで、知識に奥行きが生まれます。文字以上の情報が伝わるコミュニケーションを目指してみましょう。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 
 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(51)社説でニュースを理解

 生徒たちは、社説を難しく感じるようです。そんな時は、「大事なことは興味を持ちにくいことの中にある」と伝えます。社説は、読むとニュースが理解しやすくなり社会情勢の理解に役立ちます。社説を読む上でのポイントを示します。
 1、筆者の意見を読み取る。記事が事実を伝えることを重視しているのに対して、社説は話題になっている出来事について「なぜ起きたのか(背景)」「どう考えたらいいのか(意見)」を提示します。ベテラン記者の中から選ばれた論説委員が議論を経て書いていますので、小論文を書く上で参考になります。
 2、社説を比較する。同じテーマの社説がある場合は、読み比べをしたいものです。切り口はどのように違うか、どのような視点、立場で書かれているかを考えることは理解を深める上で重要です。学校の図書館の新聞を利用してみてください。
 これからは、異なる視点の文章を読み比べ、自分の意見をまとめる力が求められます。ニュースを多面的・多角的にとらえ、関連記事も読んで関心の幅を広げましょう。
 (常葉大常葉中・高 塚本学)