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月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=記事読み行動 認知症支援 22、23年度新聞感想文 最優秀 掛川西中2年・礒部葵衣さん

2024年06月02日(日)付 朝刊


■記事読み行動 認知症支援 22、23年度新聞感想文 最優秀 掛川西中2年・礒部葵衣さん

 しずおか新聞感想文コンクールで2022年度は小学生の部、23年度は中学生の部で最優秀を連続受賞した掛川西中2年の礒部葵衣さん(13)。23年度は認知症と共生社会に関する新聞記事をきっかけに認知症サポーターになった過程をまとめ、記事を自分の問題としてとらえ、行動につなげた点が評価された。
 
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新聞に目を通す礒部葵衣さん(右)と母の恵さん=4月下旬、掛川市
 
 話し好きだった祖母の口から言葉が出にくくなったのは数年前。若年性アルツハイマー型認知症と診断された祖母から「もういい」と会話を打ち切られてしまうことが増えたという。認知症サポーターを取り上げた記事を機に掛川市の養成講座を受講して学びを深め、身近な人に寄り添うすべを学んだ。
 葵衣さんが意識したのは、自尊心を傷つけない受け答え。相手の思いを尊重して肯定しているうちに、祖母と言葉のキャッチボールが続くようになった。「祖母との接し方がよく分からなくなっていたが、会話が続いてうれしい気持ちを感想文で伝えたかった」とコンクールの連続最優秀にも気負いがない。
 コンクールへの応募は、母の恵さん(45)が中学1年の兄に夏休みの課題として出たのを、小4の葵衣さんに自由課題として薦めてから始め、中学では学校課題に。日常で触れる記事は、恵さんが用意する。特に決まったテーマはなく、日頃から葵衣さんの興味を引きそうな記事をピックアップして「こんな記事があったよ。どう思う」と意見を求めることが多い。
 障害者の自立支援施設で働く恵さん自身は、農福連携など福祉分野の記事が気になるという。「新聞で紹介されている取り組みを読んで、うちの施設だったらどんなことができるかと考える」と話す。
 葵衣さんにとって新聞は、いつでも手に取れる情報源。10月に職業体験で保育施設に出向くことが決まった。今の関心は保育分野。「保育士は大変な仕事なのに、給料はそれほど高くないと聞く。記事を読んだりして、仕事の内容や課題を調べてみたい」と意欲を示す。
 (掛川支局・高林和徳)

 コンクール作品を募集
 静岡新聞社は、県内の小学4年生から高校生までを対象に新聞記事を読んで考えたことをまとめる「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。9月5日必着。
 新聞を通じて活字に親しみ、読解力と思考力、表現力を養い、地域や社会への関心を高めることが目的。小学生、中学生、高校生の3部門で、2024年1月1日から8月31日までの新聞記事から選ぶ。
 入賞は、各部門最優秀賞1点、優秀賞2~3点など。応募者全員に参加賞を贈る。
 応募要項など問い合わせは静岡新聞社読者プロモーション局内、同コンクール事務局<電054(284)8984>へ。
 
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■紙面授業 音楽 クラシックでつながる 沼津中央高 平田純崇先生
 「クラシック音楽は世界共通である」。今年2月に亡くなった世界的指揮者、小澤征爾さんが常々言っていたことです。小澤さんは、生涯に渡って世界を巡りながら、人々に音楽の魅力と感動を与え続けてくれました。
 音楽の中でも、特にクラシック音楽は、ベートーベンやモーツァルトといった大作曲家たちが作り上げ、数百年間聴き継がれてきた歴史があります。
 今年はベートーベン作曲の交響曲第9番ニ短調、いわゆる「第九」の初演からちょうど200年になります。人類史上、最高傑作の芸術作品といわれるこの楽曲は、耳の聞こえなくなったベートーベンが自らの指揮で披露しました。現在も世界各地で演奏されている楽曲の一つで、クラシックコンサートだけでなく、アニメやテレビ番組でも多く使用され、広く世の中の人たちに知れ渡っています。
 私は普段の授業でこの楽曲を取り上げていますが、何度聴いても第4楽章の「歓喜の歌」における合唱とオーケストラの融合に感動しています。楽曲からあふれるベートーベンの音楽に対する情熱、彼の人生の苦悩といった彼の生きざまを知ることにより、なおさら感動が深まります。そのため授業では、曲の特徴だけではなく作曲者の背景に触れることを大切にしています。
 1998年の長野五輪開会式では、小澤さんの指揮の下、世界5都市を衛星中継で結んで、この楽曲が演奏されました。私は当時小学2年生でしたが、今でも国境を越えてつながる合唱の感動を鮮明に思い出すことができます。
 ウクライナやガザなど世界ではいまだ終わりの見えない戦争や紛争により、多くの命が失われる悲劇が繰り返されています。言葉や宗教に関係なく共鳴できるのが音楽。今こそ音楽を通じ世界が一つになることの重みを、改めて伝えたいと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(81)ワークシートで要点整理(塚本学教諭/常葉大常葉中・高)
 インターネットで情報を得ることの多い中高生に、新聞の良さを再認識してもらうため、本校では全校を挙げてしずおか新聞感想文コンクールに取り組んでいます。
 生徒にはただ感想を書かせるのではなく、考えをまとめるための段取りが習慣化できるよう仕向けます。
 セルフワークシートを作成し、記事の中で中心となるテーマを捉えさせ、そのテーマについて賛成、反対両方の立場から、自分の考えを書かせます。次に、記事の要点を整理させ、気になった点とその理由を挙げてもらいます。その際、自分なりの気付きや違和感を持つことがとても大事です。キーワード検索すれば、好きな情報が手に入り、関心のない情報を見なくても済むインターネットとは異なり、新聞は、幅広い知識や異なる見方と出合うことができ、再発見があったり、考えを深化できたりするからです。
 同様なことは、素晴らしい人物や本との〝出会い〟にも起こります。常日頃からアンテナを張って、新聞に親しむことが、自分の世界を広げていくことになるでしょう。
 コンクールに参加することで、アイデアを紡ぐ素晴らしい記事との出合いがあることを願いつつ、生徒に取り組ませています。