一緒にNIE

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=実践校 成果と課題(下)藤枝市立広幡中/県立静岡北特別支援学校南の丘分校/浜松市立春野中

2024年05月06日(月)付 朝刊


■ 実践校 成果と課題(下)

 学校教育で新聞を教材として活用する活動(NIE)を進める県NIE推進協議会(安倍徹会長)は2月、2023年度実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。県内の実践指定校として2年間活動した全6校の担当教諭が発表した取り組みや成果を紹介する上下回連載の「下」は、藤枝市立広幡中、浜松市立春野中、県立静岡北特別支援学校南の丘分校(所属校は3月時点)。
 (教育文化部・マコーリー碧水)

 

 <新聞作り通じ思考力育む> 藤枝市立広幡中 石橋直明教諭
 日常的に文字に触れる習慣がなく、発表で根拠が言えなかったり事実に基づいた考察ができなかったりと論理的思考力が弱い生徒が多いという実態があった。そこで「新聞を学習から日常へ落とし込む」ことを目指し、1年目は「新聞が学習の役に立った」を増やし、2年目は「新聞を読むことが増えた」を増加させるという目標を設定した。
 国語では新聞を材料として、見出しや広告などから言葉を引っ張って五七五七七の短歌を作った。総合的な学習の時間では、街歩き学習の成果を新聞形式でまとめた。新聞を読んで紙面構成を学び、自分たちの新聞を作り上げることで論理的思考力を育んだ。
 新聞が学習に有効と考え読むことを習慣とした生徒を一定数増やせた。ただ文章の根拠が不明確だったり言葉の選択を間違っていたりする生徒は依然多い。新聞は校正を繰り返し正しい言葉を使うため、読むことで文章力向上にもつながると考えている。継続して活用していきたい。 

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           石橋直明教諭

 

 <「社会で活躍」見据え授業案> 県立静岡北特別支援学校南の丘分校 鈴木雅義教諭
 学校全体で組織的に取り組めるよう、学内各所に了解を得ながら準備を進めた。社会で活躍できる人を育てることを目指し、NIEの目的として、新聞を読む習慣を身に付け膨大な記事から必要な情報を選択し活用することと、社会の出来事への関心を高め自分の言葉で話せるようになることの2点を設定した。どの段階で何をすれば良いかのロードマップを作成し、教員間で共通認識を持ち授業実践した。
 高校2年の国語では、生徒が興味のある記事に対する自分の考えを作文にまとめた後、その文について家族や知人にインタビューを実施。考えをさらに深め、もう一度文章化した。この授業実践により「いっしょに読もう!新聞コンクール」の学校奨励賞を受賞した。
 生徒から「新聞を使った授業が楽しかった」「新聞の見方が分かった」との声があり、ありがたかった。今後は紙媒体の新聞と、情報通信技術(ICT)を組み合わせた授業実践を研究する必要がある。

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           鈴木雅義教諭

 

 <裁判記事で憲法を身近に> 浜松市立春野中
 武井千幸教諭
 全校47人の小規模校で、「主体的に学び、自分の考えを表現できる生徒の育成」という目標に向けて、NIE教育に取り組んだ。
 1年目は準備期間と位置付け、新聞コーナーの設置や読み聞かせの実施など学校の中で生徒が新聞に触れる環境作りを行い、教員がNIEを理解するために研修会も開いた。多くの生徒が知らない言葉を調べる習慣がなく、意見の主張が苦手なことも分かった。
 2年目からは日課を大幅に改訂し、放課後の時間を捻出して日常的にNIE教育に充てられるようにした。授業では、3年生の公民で水俣病を巡る行政裁判の記事を取り上げた。日本国憲法の条文が自分たちの生活の向上とより良い社会の形成に必要不可欠なことを体感的に学んだ。
 NIE教育により自分の考えを以前よりスムーズに書けたという生徒がいた。新聞を読み込むことが生徒との会話のきっかけにもなり、NIE教育は生徒だけではなく教師の教養を広げる意味でも有意義だった。

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            武井千幸教諭

 

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■ 紙面授業 数学 「割合」は基準量を意識 西遠女子学園中・高 杉山智子先生

 私たちの暮らしには数字があふれています。4月12日付の静岡新聞を見ると、「防衛費の国内総生産(GDP)比2%への増額」(1面)、「内閣の支持率は...16・6%」(3面)といった記事があります。これらは割合の考え方を使って物事を表していて、割合が身近に用いられていることが分かります。しかし、国の全国学力・学習状況調査など小学生から高校生までの学力調査結果によると、割合についてきちんと理解するのはなかなか難しいとも分析されています。

 例えば、次のような状況はどう感じますか。
 ある施設の利用者数は、イベントがなかった5月は4月と比べて15%減りました。イベントを行った6月は、5月に比べて15%増加しました。
 「15%減って15%増えたから、4月と6月は同じ」と考えたくなりますが、それはどうなのでしょうか。「基にする量(基準量)は?」と思った人は、割合について大切なことが意識できています。
 最初の15%は、基準量が4月の利用者数、2回目の15%は、基準量が5月の利用者数です。つまり、二つの「15%」は、基準量が異なっているのです。文字を使って表してみます。
 4月の利用者数をa人とすると、5月の利用者数はa×(1-0・15)=0・85a人です。6月の利用者数は、(5月の利用者数)×(1+0・15)=0・9775a人です。4月の利用者数がa人、6月の利用者数が0・9775a人ですから、4月と6月は同じではなく、6月の利用者数の方が0・0225a人少ないと分かります。

 今回は割合に割合を掛ける考えを紹介しましたが、割合を割合で割る考えもあります。日常のさまざまな場面で「%」で表された数字を見つけたら、「基準量は何か」を意識してみると、示された値の意味を正確にとらえることができるでしょう。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。