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第18回NIE全国大会静岡大会
=実践発表

2013年07月27日(土)付 朝刊


 ■身近な話題選び表現する力磨く-沼津原小
 ▽発表者 石川有記
 ▽助言者 佐藤正和(県総合教育センター東部支援班指導主事)、上崎正則(時事通信社静岡総局長)
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石川有記教諭

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 5年生が記事のスクラップを行い、自分の意見や感想を書くことで、考えたことを表現する力を身に付けていった取り組みを石川教諭が発表した。
 当初は児童に自由に記事を選ばせたところ、「1面など小学生には難解な記事を選ぶ傾向があり、感想も表面的だった」という。
 その後、教諭が「笑顔になるような記事を探そう」と対象を絞ったところ、小中学生や地域が素材となった身近な話題を選ぶ児童が増え、より記事を理解した上で意見が書けるようになったと説明した。
 その上で、児童が互いの意見を知り合えるようなスクラップ帳を作ったことを例に挙げ、「自分の考えを人に伝えたいと思う子どもたちが増えてきた」と成果を強調した。

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 ■保護者の理解を深める活動大事-静岡東源台小
 ▽発表者 柴田剛秀
 ▽助言者 伊藤あゆり(静岡市教委学校教育課指導主事)、菊池嘉晃(読売新聞社静岡支局長)
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柴田剛秀教諭

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 2010年度から実践指定を受け、現在は奨励校として家庭、全校に広げている取り組みの成果を発表した。
 週末や長期休暇中の新聞スクラップ、記事を使った親子討論会を通じて、保護者にもNIEの意義が伝わったと報告。「活動継続には、家庭への啓発や浸透が大事」とした。
 校内研修にも位置付け「NIEに初めて触れる教職員も取り入れられる方法を模索した」と振り返った。学年ごとの事例も紹介し、子供や保護者の声から「魅力的な学びを発見できると実感できた」と話した。
 会場からは、「新聞ありきではなく教科の目当てに近づくための活用だと感じた」「新聞を購読している家庭ばかりではない。意識差もあるのでは」と感想が挙がった。

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 ■地図や新聞作製思考する力養う-浜松有玉小
 ▽発表者 浅野慶太郎
 ▽助言者 高橋勝(浜松麁玉小校長)、田中実(静岡新聞社論説委員)
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浅野慶太郎教諭

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 浜松有玉小は「新聞に親しみ、自分の考えをもち、友達と聴き合う子を育てる」をNIEの目当てに掲げる。浅野教諭は、2~6年生が授業の「話し合い」の場面で新聞記事を活用した事例を紹介し、「新聞への親しみが増し、自分の考えを持てるようになった」と成果を説明した。
 社会科で「学区地図作り」に取り組んだ3年生は、新聞に掲載されていた地図を参考に、分かりやすい地図を工夫した。6年生の国語の「学校新聞を作ろう」では5W1Hの文章を組み立てた。浅野教諭は「学びの発見があり、思考力が養える」と成果を話す。
 NIEの環境整備にも力を入れる。さまざまな分野の時事問題に挑戦する新聞コーナーを図書室に設け、気軽に新聞に触れる機会を提供している。

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 ■1分間スピーチ全クラスで挑戦-御殿場南中
 ▽発表者 湯山昌樹
 ▽助言者 長倉守(県教委学校教育課指導主事)
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湯山昌樹教諭

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 湯山教諭は全校生徒を対象に新聞記事を活用した実践を行い「言語活動」につなげた取り組みを発表した。
 取り組みの際は「生徒、教諭の双方が無理なく、多くの実践を心掛けた」と説明。新聞に慣れ親しんでもらうため各教室に新聞を置き、授業で活用する基礎として全学級で毎日、新聞記事を使った1分間スピーチを行ったことを紹介した。
 授業で新聞を資料や意見交換の題材として効果的に使ったほか、生徒会のいじめ対策に関する資料として活用したことを挙げ「『生きた資料』で生徒が本気になり、充実感が生まれた」と話した。
 「教諭が自信を持ち、生徒も自然に受け入れてくれたことが成果」とし「1分間スピーチを積み重ねてから、本格的な実践をスタートさせたことがよかった」と説いた。

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 ■習熟度に合わせ学習目的を変更-清水第五中
 ▽発表者 渥美淳
 ▽助言者 青山貴弘(静岡市教委学校教育課主席指導主事)
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渥美淳教諭

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 渥美教諭は、1~3年生の習熟度に合わせて内容を変えた総合学習の授業を紹介した。
 NIEに取り組んだ1年目の課題として「もっと生徒が考えを深められるような工夫が授業に必要だと感じた」という。2年目は2、3年生の活動内容を「新聞に親しむ」から「新聞を活用する」に変えて、「2年生は意見交換の時間を増やし、3年生は新聞を作って発表する形式にした」と説明した。
 新聞記事の書き方などを学んでいた3年生は「清水、三保の良さを伝えよう」をテーマに、各自が新聞や書籍などを使って歴史やスポーツ、食文化などについて調べたという。
 渥美教諭は「生徒が仕上げた新聞は分かりやすくまとめられていた」と手応えを感じた様子。一方「読解力や表現力を身に付けるためには十分な時間が必要」と課題も挙げた。

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 ■切り抜きで地図世界を読み解く-浜松学芸中・高
 ▽発表者 大木島詳弘
 ▽助言者 佐藤安彦(県教委学校教育課指導主事)、前田剛夫(毎日新聞社静岡支局長)
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大木島詳弘教諭

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 大木島教諭は記事から日本と海外の結び付きを読み解く独自の試みを発表した。
 1年生の地理の授業の一環で、1カ月分の新聞から海外関連の記事を抜き出し、国ごとに仕分けた。それらを世界地図に落とし込み、どの国の話題が新聞に頻繁、または大きく掲載されているかが分かるようにした。
 実践では、米国、中国の記事が多く、韓国、西アジア、欧州が続いた。
 「近年は環太平洋の関連国の分量が多い。切り抜きで作った地図にもそれが表れるため、中学1年生でもTPP(環太平洋連携協定)の理解が進んだ」と説明した。
 新聞活用の利点として、精査された情報に触れられる▽出来事が整理され使いやすい▽紙媒体の作業性の良さ-を挙げた。

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 ■データベースで過去記事を共有-東海大翔洋高
 ▽発表者 川上博
 ▽助言者 山本啓一(日本経済新聞社静岡支局長)
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川上博教諭

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 過去の新聞記事を検索できるデータベース(DB)を導入している川上教諭が、NIEでDBをどのように活用しているかを発表した。
 地歴公民などの授業で教材として活用する方法を紹介し、「インターネット上のニュースも見られるが、信頼できるDBがいい」と述べた。古い記事と新しい記事を比較して生徒に考えさせたり、パソコンを通して生徒と記事を共有しながら授業を進められたりする利点も挙げた。
 「キーワードに沿った記事をすぐに見つけられる」「新聞を読むのが面白くなった」というDBを利用した生徒の感想も紹介した。
 当日の記事を一挙に見られる紙の新聞の長所にも着目して「紙の新聞とDBを併用して教育活動に使いたい」と強調し、電子教科書との連携の方法を課題として指摘した。

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 ■生活に引き寄せ学ぶ意義考える-静岡中央高
 ▽発表者 吉川契子
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吉川契子教諭
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 理科の学習内容について、記事を手掛かりに、日常生活との関係性を明確化する取り組みを発表した。
 吉川教諭は、NIEに注目したきっかけを「生徒が理科に興味を示さないことが気掛かりだった。新聞こそ最も分かりやすい教材だと思った」と述べ、「新聞を使い、学ぶ意義を考えることが狙い」と強調した。
 実例として「冥王星が惑星から除外」との報道を受け、教科書表記の変更点を授業で取り上げたり、東日本大震災の報道から東海地震の調べ学習につなげたりした経験を披露した。個別作業から小グループ、クラス単位へと授業規模を拡大する手法も紹介した。
 NIEを取り入れた後、教え子の勉強姿勢が積極的になった逸話も披露。「研究成果が賞を取ったり、新聞に取り上げられたりすると生徒の励みになる」と、学習意欲を引き出す効果にも言及した。