静岡県NIE推進協議会

家庭と連携 推進 実践校教諭意見交換-静岡

2014年07月13日(日)付 朝刊


 県NIE推進協議会(会長・角替弘志静岡大名誉教授)は12日、NIE実践校交流会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞社制作センターで開いた。日本新聞協会の指定を受けた実践校やアドバイザーの教諭、新聞関係者ら約20人が出席し、授業への新聞の活用について意見を交わした。
 本年度に指定を受けた新規校5校は「サッカーのワールドカップ(W杯)や富士山の入山料問題など、子どもが興味を持つ記事を掲示している」「新聞を読ませるだけでなく、取材を受けるような学校活動に取り組んでいる」などと報告した。
 実践校3年目の浜松有玉小の教諭は「家庭と連携し、記事の意味が分からなければ親に聞くよう指導している」と説明。アドバイザーで島田川根中の矢沢和宏校長は「それぞれの地域の話題を取り込んだ教育も面白いはず」などと助言した。IP140712TAN000057000_01.jpg

新聞活用の取り組みを説明するNIE実践指定校の教員=12日午後、静岡市駿河区登呂の静岡新聞社制作センター

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会性、主体性育む 新聞で真の学力向上 吉成勝好さん(日本新聞協会NIEコーディネーター)が講演-静岡で県NIE推進協総会

2014年07月05日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会(会長・角替弘志静岡大名誉教授)の2014年度総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、日本新聞協会NIEコーディネーターの吉成勝好さんが「真の『学力向上』はNIEから」と題して記念講演した。記念講演の主な内容は次の通り。

 昨年の全国学力状況調査(学力テスト)に対する静岡県の動きなどもあって、「学力」に対する関心が高まっている。文部科学省はこれからの社会を生きる子供たちに「生きる力」を身に付けさせたいとし、それを支える一つに「確かな学力」を掲げている。
 現在、学力に関して三つの問題がある。まず、学力の低下。それから学力の格差。三つ目は学力の質。つまり、どのような学力を付ける必要があるのか、という問題だ。
 文科省が掲げる学力テストの狙いの中に、「主体的に学習に取り組む態度を養う」ことが盛り込まれていて、文科省は実はこれを非常に重視している。
 学力向上を考える上で、私は四つの視点があると思う。まず、どんな学力を目指すのか。2点目は全ての学力のベースになる言語能力をどう育てるか。3点目は、学習への「関心・意欲・態度」や「学び方」をどう育てるか。4点目は「学力格差」をどう解消するか、ということだ。
 そうした四つの視点の一つの解答として浮上してきたのが、新聞の活用に着目する論調だ。
 それでは、「新聞」を活用した学習でどんな「力」が得られるのか。例えば、生きた社会に目を向け、世の中で起きている出来事に興味や関心を持つ力、多様な情報から自分の求めているものを探し出す力、分析吟味する力など、いろいろある。
 学力テストに関する動きの背景にあるのが、経済開発協力機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA)だ。PISAショックと言われた。今、世界が求める学力というものを突き付けられたショックだった。
 PISAが評価する学力は「知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうか」。これに対応していなかった文科省は焦って、プロジェクトチームを立ち上げた。
 そうして「PISA型読解力」獲得に向けた処方箋をまとめた。その中に、さまざまな文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実とあり、その具体的な取り組みとしてNIE活動を挙げている。学力テストにも、新聞記事を使うなど、新聞関連の問題が多数出ている。
 学習状況調査にも、「新聞を読んでいますか」という質問が盛り込まれ、新聞を読んでいる子供ほど学力が高いという相関関係が導かれた。
 NIEを通して目指すのは、やはりまず、学力、学習意欲の向上を図ることだが、私はそれ以上に民主主義社会の担い手としての資質を育てることを挙げたい。社会に関心を持つ社会性、意見、価値観の多様性を認める人間性、そうした中で自分の意見を持てる主体性、こうした資質を育てることがNIEが得意とし、目指すものだ。これを忘れて、目先の点数だけ求めても仕方がないと思う。

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 ▽よしなり・かつよし
 1943年生まれ。早稲田大卒。玉川大教育課程修了。民間研究所・企業等に勤務後、33歳で東京の公立小学校教諭に。98年から東京都練馬区立大泉第二小校長。2004年、定年退職。在職中、東京都NIE推進協議会会長、全国新聞教育研究協議会会長などを歴任。12年4月から、日本新聞協会NIEコーディネーター。

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「真の『学力向上』はNIEから」と題し記念講演する日本新聞協会の吉成勝好NIEコーディネーター=静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館


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 ■NIE楽しくやさしく(7)=読者にとって読みやすく
 新聞を読んでいて、時々、漢字で表記せず、あえて「あっせん」のようにひらがなが使われていたり、「だいご味」のように漢字とひらがなの交ぜ書きで書かれていたりする漢語を目にしたことはありませんか? また「殆[ほとん]ど」のように、読み仮名が付けられている漢字もあります。新聞の漢字は実にさまざまな使い方で表記されています。これは、日本新聞協会が常用漢字表を基本にして新聞で使える漢字の基準を作り、各新聞社が、使う漢字の範囲を決めて表記しているからです。
 使えない漢字の場合は、①常用漢字による「書き換え」(例=智慧↓知恵)、②漢語全体の「仮名書き」(例=挨拶↓あいさつ)、③漢語の一部を仮名書きにする「交ぜ書き」(例=漏洩↓漏えい)、④別の言葉に置き換える「言い換え」(例=破綻↓破れ、失敗、破局等)をしています。外国の地名や人名、外来語については、なじみ深い従来通りの表記(例=「ヴァイオリン」↓「バイオリン」)をすることになっています。
 また新聞記事は、「5W1H」(いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の六つの要素で構成されています。すべての記事に必ず「5W1H」が入っているわけではありませんが、特に事件や事故の場合は「5W1H」を的確に盛り込んでいます。
 カギかっこ(「 」)を使う場合は、一般には句点( 。)を打ってからカギを閉じます。(例=「ありがとうございます。」)
 しかし、新聞ではカギかっこの中の句点( 。)は省略しています。
 さらに一般の文章では「起承転結」というように結論を最後に書きますが、新聞記事はまず結論を先に書き、その後に本文を書くという形をとります。見出し(タイトル)、リード(前文)、本文の順で書くことによって重要な結論を落とさず、的確にニュースのポイントを読者に伝える工夫をしています。
 新聞には、読者にとって読みやすい表記や構成等がさまざまに工夫されているのです。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)