静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2014年12月06日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立高松中(同市駿河区)でこのほど、新聞記事を活用した国語科の公開授業「新聞投稿文を作ろう 正義の味方になってみたい!」が開かれた。2年生28人が、投稿文が紙面に掲載される基準について考えた。

 生徒は事前に「生き方」「進路」「家族」「学校生活」「地域」「日本」「世界」の七つのグループに分かれ、それぞれ用意された中学生や高校生らの投稿文から1人一つずつ選んで授業に臨んだ。投稿文の大意▽投稿者が最も伝えたいこと▽自分の感想―の3点に関して意見を交わした。
 「世界」のグループでは、『みんなが望む戦争のない世界』『戦争を選ばず尊重し合う心』『南アで頑張れ移動図書館車』などと題した投稿文が並び、戦争と平和をテーマにした文章を中心に話し合った。
 「家族」のメンバーは、高校生による両親への感謝の気持ちや、家族と一緒に食事することの大切さに触れた投稿を選び、「自分の両親は2人しかいない大切なもの」「勉強や部活も大切だけど、家族との団らんも必要」などと述べた。配られた用紙にメモを取りながら、互いの意見を真剣に聞いた。
 各グループの代表者が、話し合った内容をホワイトボードを使って発表した。授業を担当した南條徹教諭(50)が黒板に並べられたボードを示しながら「それぞれのグループから出た意見の中で、共通することは」と呼び掛けると、「共感できる部分がある」「想像しやすい」「具体例が書かれている」「体験に基づく話で構成されている」などの声が次々と上がった。
 「世界」のグループの一居成君(14)は「戦争についての投稿に共感した。普段の生活がいかにぜいたくなのかが分かった」と話した。八木詩音さん(14)は「文章を書く時には、人にうまく伝えたいと思う気持ちが大切だと学んだ。自分の思いをしっかりと伝えている同世代の投稿文は参考になった」と語った。
 授業の最後には静岡新聞社の読者投稿欄の編集担当者が登壇。「文章には段落を付けて、結論を最後に持っていくと良くなる」とアドバイスした上で、「10代の今しか書けないものを書いてほしい」と呼び掛けた。
 南條教諭は「文章を書くときには読み手を意識することが大切。不特定多数の人に意見や思いを伝えるためにはどのような工夫が必要かを考えさせることに重点を置いた」と振り返った。

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新聞記事の投稿文について意見を交わす生徒ら=静岡市駿河区の市立高松中


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 ■NIE楽しくやさしく(12完)新聞のある暮らし

 新聞は配達員の方によって、雨の日も風の日も私たちの家に毎日配達されています。この新聞配達というシステムは日本独自のものです。その歴史は「東京日日新聞」(毎日新聞の前身)が創刊された1872(明治5)年2月21日の翌日、社員が購読者の家に届けたことに遡[さかのぼ]ります。しかし偽記者や悪質な売り子の横行等の理由から、戸別配達が制度化され、新聞社には専門の配達員が置かれることになりました。その後、新聞販売所を通して購読者に新聞を配達するシステムへと発展してきました。
 戦後、核家族化の進行や大都市への人口集中によって顧客獲得合戦が激化し、戸別配達が拡大しました。一定の販売部数を確保できる戸別配達は、新聞社の販売実績として広告を集めることができ、収益増にもつながるというメリットがあるからです。しかし、新聞本来の能力を低下させるようなことがあってはいけません。
 ニュースの速効性がかつてないほど高まっている今日、新聞離れやインターネット依存等が問題視されています。ところが日本新聞協会広告委員会「2013年全国メディア接触・評価調査」によると、新聞がテレビ、ラジオ、雑誌、インターネットと比べて「情報が整理されている」「バランスよく情報が得られる」「世の中の動きを幅広くとらえている」等のキュレーション(一定の価値判断に基づき情報を集め、共有すること)を実践している点が高く評価されました。また新聞の「印象・評価」でも「社会に対する影響力がある」「知的である」「自分の視野を広げてくれる」「情報源として欠かせない」「日常生活に役立つ」と回答した人も多く、新聞が日々の生活に根付いたキュレーションメディアとして認識されていることも明らかとなりました。
 新聞は「社会の今」を映す鏡です。新聞社は戸別配達で得てきた信頼を一層高め、人々は新聞を日常的な風景に位置づけ、豊かな生活づくりへのエネルギー源にしてほしいと願います。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)