静岡県NIE推進協議会

県推進協と県教委協定 手続き簡略化、記者派遣 全国初-授業で新聞活用

2015年03月21日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会(角替弘志会長)と県教委は20日、新聞利用に関する協定書の締結式を県教委で開いた。新聞の利用手続きを簡略化し、県立学校の授業で活用しやすくする。日本新聞協会によると、新聞利用に関するNIE推進協議会と都道府県教委の協定は全国初。
 通常より安い学校教材用の新聞価格の適用や、県立学校の要請に応じた記者の講師派遣も協定書に盛り込んだ。
 締結式には各新聞、通信社の代表と県教委幹部が出席し、角替会長と安倍徹県教育長が協定書を交わした。角替会長は「メディアリテラシー(情報を読み解く力)を高めることは緊急課題。教育現場が安心して自由に新聞を授業で生かせるようになる」と述べた。
 安倍教育長は「子供たちが新聞を通して社会に目を向ける意義は大きい。教員も奥行きのある授業ができる」と語った。選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公選法改正に向け、渋谷浩史高校教育課長は「在学中に時事問題を学ぶことがより大事になる」と強調した。
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協定書を交わす県NIE推進協議会の角替弘志会長(左)と安倍徹県教育長=20日午後、県教委

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=4校が実践活動成果を発表

2015年03月07日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会(角替弘志会長)はこのほど、2014年度NIE実践報告会を静岡市駿河区で開いた。13年度から2年間、新聞を活用した教育を進めてきた中学、高校4校の担当教諭らが活動事例や成果を発表した。報告内容の概要を紹介する。

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 ■全校生徒同じ記事読む-松永光正教頭(裾野深良中)
 2012年度から毎朝、全校生徒が同じ新聞記事を読み感想を述べ合ったり意見を記述したりする「グローバル・アイ」という活動を始めた。生徒に「今、どんな社会に生きているのか」を考えさせるとともに、言語活動の充実を図ることが狙いだった。
 記事は教職員が選び、意見、感想に対するコメントも教職員が行うのが通常の形だが、生徒が記事を選んだり、保護者に感想を記入してもらうなど、発展させた形の試みも行った。
 本年度後期からは、一つの記事を3日間かけて扱う新方式を導入した。1日目は記事を要約、2日目に感想を書き、3日目は班内で意見を交換したのち、他生徒の用紙にコメントを書き込む。この方式により、記事をより深く読み解くことが必要になったほか、言語活動の充実にもつながっている。

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松永光正教頭

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 ■スクラップで世界知る-若原昌史教諭(浜松積志中)
 2013年度は廊下にNIEコーナーを設け、各紙の1面や社説、コラムの比較を行うとともに、長期休みの際には生徒にリポートを提出させるなどの実践を行った。生徒からは「新聞は大人だけの読みものではないと思った」などの感想が寄せられた。
 14年度は新聞スクラップノートの作成に取り組んだ。それぞれテーマを月ごとに設定、記事内容をまとめ、それに対する自分の意見を記述する形で週1回提出させた。「世界や地域について知る機会となった」などの感想があった。
 スクラップノートを作成しているクラスとしていないクラスで、新聞講読時間などを調べたところ、作成していないクラスは講読0分が56%を占めたのに対し、作成クラスは5~10分が88%、10~30分が12%で、0分の生徒はいなかった。

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若原昌史教諭

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 ■投書欄での掲載励みに-塚本徹教諭(金谷高)
 2012年度から、学校設定科目として「新聞講読」という授業を設けている。13年度の「新聞講読」では約30のテーマを取り上げ、記事を貼りつけたプリントを使って授業を展開した。数回、生徒にテーマを選択させたが、「ダイオウイカ」を取り上げるなど視点が新鮮で面白い授業になった。新聞への投書にも取り組んだ。実際に新聞に掲載された例もあり、生徒の励みになった。
 14年度は静岡新聞の記者経験者による出前講座を行った。インタビューのワークショップも組み込んで、新聞ができるまでを講義してもらった。
 生徒からは「新聞は歴史の記録としても大切なものと分かった」「インタビューで、どれだけ聞き出せるかは記者の腕次第だと分かった」などの感想があり、好評だった。

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塚本徹教諭

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 ■記者を招き環境講演会-飯尾美行教諭(浜松城北工高)
 地域を守る環境ボランティア活動を単位として認定するなど、学校全体として「環境」を重視する中、「NIEによる環境教育」に取り組んだ。
 環境に関する記事を貼ったワークシートを作り、内容をまとめるとともに、それについて生徒同士で話し合わせる授業などを通して新聞に親しませた。
 共同通信や静岡新聞などの記者を招いた環境講演会を開いたほか、地域の企業に環境への取り組みを聴くインタビューも行った。
 当初、「難しい」「文字ばかり」など新聞に対して負のイメージを持っていた生徒たちも、「意外と面白い記事がある」「テレビより詳しくニュースがわかる」など、一連の授業を通して新聞に親しみを感じるようになった。
 NIEによる環境教育は、実践的で効果的な素晴らしい授業方法だと考える。

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飯尾美行教諭

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 ■学校新聞制作指導の記録-富士の元高校教諭が出版
 富士市の元高校教諭西家文代さんがこのほど、学校新聞制作の指導に携わった28年の記録をまとめた「高校新聞ルネサンス実践集」=写真=を出版した。授業の中での新聞づくり、新聞部復活・創部のエピソード、新聞コンクールやNIEなどについて関係者寄稿も交え紹介した。
 西家さんは富士高、富岳館高、吉原高で新聞部を県学校新聞コンクール(静岡新聞社主催)最優秀賞に導き、全国高校新聞コンクール(大東文化大主催)でも富士高時代に文部大臣奨励賞(当時)を受賞した。
 B5判、295㌻、羽衣出版。

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「高校新聞ルネサンス実践集」