静岡県NIE推進協議会

秋田でNIE全国大会 豊かな「問い」育てたい

2015年08月19日(水)付 朝刊


 ■本県参加教諭ひとこと
 ▼伊藤智章教諭(裾野高)
 全国大会2日目、「NIEとICTの融合」の特別分科会に参加した。奈良女子大付属中等教育学校の、iPadと電子新聞を使った実践紹介と、朝日新聞と毎日新聞のデジタル版の担当記者さんによる、デジタルならではの活用法の話を伺った。本校でも、9月から全国紙4紙と地方紙1紙(沖縄タイムス)の電子版を導入する。先行事例について学べたことに加え、各紙の電子版やNIEの担当者にお会いして直接関係が築けたことは、何よりの収穫だった。

 ▼深沢邦洋教諭(駿河総合高)
 秋田や福井のNIE実践からヒントを得ようと、全国から多くの参加者が集い、全体会も分科会も熱気にあふれていた。熱気の源は、教育や報道に関わる全ての大人たちの「使命感」によるのだろう。持続発展可能な社会を築くためには、子どもたちに「主体的に考え、適切に表現する力を伸ばす」機会と環境の提供が大切。一親、一市民、一教育者として、自分なりの工夫を加えて使命を果たそうと再認識した。

 ▼小平和美教諭(島田商高)
 今大会に参加して、私自身の教育に対する知見が大きく広がり前進した。「問い」を発する子どもの育成、NIEで豊かな「問い」をどう育むか、この2点が心に深く刻まれた。新聞は情報であり、社会風景そのものであり、「問い」の宝庫。秋田県は、総力戦体制で新聞を用いた「問い」を育む教育を日常的に行っている。わが県でも、まずは教育最前線に立つ教師同士が総力を結集し学び合い、研究していけたらと思った。

 ▼一森康佑教諭(南伊豆中)
 今回、全国大会に参加させていただき、なぜ“教育に新聞を”なのか、今まで以上に考える機会となった。新聞を読むと、いま世界で起こっている事象を知るだけでなく、5W1Hを活用して情報を伝える力、行間から「見えないもの」を想像する力など、多くの力を育むことができる。新聞を読むことで生まれる“問い”について探求し、解決していくことが、これからの社会を担っていくうえで必要な“生きる力”を育てるのだと感じた。

 ▼北尾昌彦教諭(裾野深良中)
 尾木直樹氏による記念講演で、学習到達度調査(PISA)でなぜフィンランドが学力世界一なのか、これからの日本に求められる力は何なのか、という話が興味深かった。発想力、論理力、批判的思考力、表現力、グローバルコミュニケーション能力の根底にあるものが洞察力(自分で問いを見つける)であり新聞の活用が有効であると力説された。本校の研究テーマ「生徒が自ら問いをもち、インタラクティブな学び合い」が間違いないことを確認した。

 ▼立林学教諭(静岡清水興津中)
 盛夏の秋田でNIEへの熱気を感じた2日間であった。特に基調提案のなかで、秋田県のNIE推進協議会会長が述べた「21世紀型学力を育てるNIE」「主権者教育としてのNIE」という視点に、今後の教育との密接な関わりを感じた。この視点で新聞を教材化することができれば、実際の授業での活用はさらに増えるはずである。また、教育現場と新聞社との協力関係も学ぶべき点が多かった。さまざまな刺激を受けた大会参加となった。

 ▼望月千恵教諭(富士田子浦小)
 私は、NIE全国大会に参加し、NIEの魅力をあらためて感じた。参観した秋田市立東小学校の6年生社会科の授業では、子どもたち自身が作成した歴史新聞を基に、鎖国やその影響についてさまざまな視点から考え、話し合ったり、見出しに表現したりする活動を行っていたが、授業後にある児童が「あぁ、楽しかった!」と言っていたのがとても印象的だった。私も、子どもたちが夢中になれるようなNIE実践を行っていきたい。

 ▼塚本学教諭(常葉学園橘高)
 県立秋田南高校の公開授業の感想を述べたい。「日豪経済連携協定(EPA)合意」(2014年)に関する社説を比較・検討しての討論であった。取り上げた社説が北海道新聞と神戸新聞という地方紙であったことが興味深い。地方紙の方が、全国紙より地域の視点からの記事になるので、同じ題材でも違いが明確になり面白い。生徒たちはその地域の置かれている状況を考え討論していた。考える材料としての新聞利用のあり方を再確認することができた。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=Q&A 実践指定校特集

2015年08月01日(土)付 朝刊


 実践指定校特集 今月は本年度NIE実践指定校から質問を募った「Q&A」拡大版。県内の新規、継続の小、中、高校の担当教諭の質問にNIEアドバイザーが答えた。

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 ■社会、国語以外で取り組む
 【問】社会科、国語科以外でどのように活用すればよいでしょうか?(南伊豆・中学校教諭)

 【答】理科は宇宙、気象から
 社会科や国語科以外にも、多くの活用例があり、インターネットや冊子でも実践が紹介されています。
 例えば、数学科では生活の中にある数字やグラフなどの活用。理科では最先端の科学や生物、宇宙、気象など。保健体育科では健康、身体特性、トレーニングなど。家庭科では栄養、調理、生活など。技術科では最先端技術や発明、コンピューター、など。美術科では作品や作者、展覧会情報など。音楽科では曲や音楽生活など、活用例は多種多様です。英語科の場合には国際社会の様子や子ども新聞の英文などが活用できます。
 教科以外にも、道徳や総合、特別活動などで有効です。特に新聞は「積極的な生き方をしている人物」をタイムリーで簡潔に紹介していますので、「生き方」の学びに向いています。他校の活動を紹介した記事も参考になり、生徒会や学級の活動に生かせます。
 「新聞タイム」などを設けて、記事を使用した問題に取り組ませ、読解力や表現力の育成を図るのも効果的です。
 (焼津大井川中・矢沢和宏)

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 ■記事要約のポイントは
 【問】文章を要約する力をつけるためには、リード文を記事の要約として参照することが一つの方法だと思われますが、リード文のない記事について、要約するポイントや具体的な方法がありますか。(富士・小学校教諭)

 【答】第一段落、見出し着目
 新聞記事は、逆三角形の構成になっています。子どもたちが日頃学習している物語文や説明文は最後に結論、大切なことが書かれています。一方、新聞では最初に結論が書かれ、その後で補説する形式になっています。一番大切なことが最初に書かれているのです。見出しやリード文で記事の内容を簡潔に表しているので、子どもたちに見出しやリード文に着目するように指導しましょう。
 リード文の形でなくても、記事の第一段落に概要が書かれています。この点も、子どもたちに指導し、着目させるようにしましょう。「見出し」を読むと記事で一番に言いたいことがどんなことかが分かり、「リード文」を読むと記事の概要が分かります。「記事の第一段落」がリード文の役割を果たしていると理解してください。
 多くの記事には、写真が添えられています。写真だけ見ても何を言いたい記事か分かることがよくあります。読めない漢字が多い低中学年の指導では特に役立ちます。
 (浜松与進北小・山崎章成)

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 ■園児もできる活動教えて
 【問】幼稚園や保育園に通う子どもにはNIEとしてどんなことをしてあげたらよいでしょうか。(静岡・小学校教諭)

 【答】色の紙面でコラージュ
 幼稚園や保育園に通う子どもたちが「新聞大好き」になれる新聞コラージュを紹介します。
 新聞コラージュは、記事や写真に注目する新聞スクラップと違い、カラー広告などの色や形から自分のイメージに合ったものを選び出し構成する活動です。新聞にはカラフルな広告がたくさん掲載されており、1紙面からいろいろな色を探し出すことができます。いわゆる緑色といっても、絵の具にも色鉛筆にも存在しない微妙に違うさまざまな緑色が見つかります。それらの中から例えば自分の葉のイメージや質感に合った緑色を選び、葉の形に切り取ります。形そのものを切り取って構成するわけではないので、従来のコラージュより場合によっては難しいかもしれませんが創造力がつくのではないでしょうか。
 新聞記事が読めなくても、新聞コラージュを通して楽しく活動することができれば、子どもたちはいっぺんに新聞を身近なものとしてとらえることができるでしょう。
 (静岡城北小・中村都)

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 ■キャリア教育に活用したい
 【問】進路指導、キャリア教育にどう活用したら良いですか? また、経済に強くなるための活用法を教えてください。
 (裾野・高校教諭)

 【答】記事から情報収集促す
 まずはキャリア教育に新聞を利用する場合、自分たちの学校では具体的に生徒のどの能力を伸ばしたいのか。その定義を教員・生徒が共に確認し合い、共通認識を確立することから始めましょう。
 次に、生徒に適正を自覚せしめ、進路や産業の動向に対する情報収集を促さなければなりません。それにはとにかく、全ての授業で新聞を読み、考え、文章を書かせるべし。自然と教科の縦断が為され、キャリア教育の求める汎用性が涵養[かんよう]されるはず。
 オススメは身近な企業の株式欄を毎日チェックし、ノートにメモすることです。さらに、経済面をざっと眺め、関連する記事は全部切り抜き貼っておきましょう。面接の際には物的証拠として提示し、この情報収集の結果、何をやりたいのか、自己発信の武器として活用するのです。
 アナログな手法ですが、キャリア教育の求める積み重ね・情報収集と発信・社会との関連の「能力」をアピールできる有効な手立てに違いありません。
 (静岡市立高・実石克巳)