静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞広告を教材に活用 自由な発想で効果分析-島田商業高の取り組み

2017年05月06日(土)付 朝刊


 NIEというと、ニュース記事の活用ばかり考えてしまいがちだが、新聞広告も格好の教材だ。2016年度まで3年間、NIE実践指定校だった県立島田商業高(島田市)では、総合ビジネス科3年の課題研究授業でNIEを展開した。担当の小平和美教諭によると、生徒はその中で、新聞広告を足掛かりに新聞に親しみ、理解を深めていったという。

 商業高校という専門性に加え、進学や就職活動に向けて時事力を磨くため、小平教諭は新聞を身近にさせようと考えた。授業で大切にしたのは「生徒の自由な発想」。講義形式は避け、生徒同士の意見交換を促すような授業にした。
 最初に生徒24人に、新聞を読んで思ったことを話し合わせると、「紙面の下部分は広告。他の新聞でもそうなのかな」「このサイズで、広告代はいくらかかっているんだろう」。多くの生徒が関心を寄せたのは記事ではなく、新聞広告だった。
 同校では、1、2年時に全員がビジネス基礎やマーケティングなどの商業科目で広告効果などを学ぶことから、「自然と目がいったのだと思う」と小平教諭は話す。
 小平教諭は生徒の関心を広げるため、授業ごと課題を設けて、関連する記事や写真など何でもスクラップさせながら、広告を題材にした生徒たちの会話に入り、学びの糸口を提供するようにした。
 例えば、米大リーグのイチロー選手を起用した栄養ドリンクの広告で盛り上がっていると、なぜ広告主はイチロー選手を選んだのか、なぜカラーで大きく扱うのかを考えさせた。
 生徒たちは「商品を買う人たちは、イチロー世代だから」「新商品の宣伝には、企業が投入する金額も多い。だからカラーで大きく掲載したのではないか」と感想を言い合うレベルから、広告の背景を探るようになった。
 こうした授業を積み重ねるうち、記事に興味を持つ生徒が小平教諭の助言で記事を理解する新たな取り組みを始め、それが広がっていった。米大統領選候補者の支持率に関する記事を読んでグラフ化したり、逆に記事中のグラフを文章化したり。また記事を視覚化しようと風刺画を描いたり、俳句にしたりとニュースへの接し方が積極的で多様になった。
 小平教諭は、自由な意見交換の場が後押しし、広告をきっかけに、新聞を"読める"から"深めていける"ようになったと実感したという。「学んできた商業科の知識を基に自分の意見を形成できるようになったのは、期待以上の成果。どの授業にも代えられない学びになったのでは」と振り返る。2017年度も新聞を使った授業は続け、新3年生の成長に期待を寄せる。

 

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生徒の取り組みを振り返る小平和美教諭=島田商業高

 

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興味を持った紙面について話す生徒たち=島田商業高

 

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 ■紙面授業=英語-リスニングの妙味 浜松聖星高 中村隆之先生
 文部科学省が2月に公表した次期学習指導要領の改定案に、英語教育の前倒しなどが盛り込まれました。中学校では授業を原則英語で実施するなど、「読む・書く」力とともに「聞く・話す」力を身に付けることを求める内容となっています。
 私は仕事柄ここ十数年、アメリカ西海岸に2週間ほど生徒を引率しています。10年以上前、アメリカ人の友人とお互いの趣味について話していた時のことです。彼が「あなたはアイサキは好きですか?」と尋ねてきました。「誰のことですか?」と聞いたところ、ゆっくりと「アイス・ハッキー(アイス・ホッケー)」と言い直してくれました。
 似たような話ですが、段ボールとガムテープを買いにホームセンター行った時のことです。店内は途方もなく広く見つからないのでレジに行って場所を聞いたところ、「ペカシッ」と答えが返ってきました。「すみません、もう一度」と何度も聞いたのですが、店員の答えは相変わらず「ペカシ」でした。
 後で「ペカシ」は「パック・アン(ド)・シップ」(梱包と運送)のことだと友人に教えてもらい、アルファベットが見事に音と重なりました。
 初めてアメリカを訪問した30年前には、レストランで食事を食べ残すと「ドギーバッグ」と称する「お持ち帰り用の箱」をもらったものでした。最近では犬をだしに使うのはいかがなものかということで、呼び名が変わってきました。
 それに気付いたのも友人の一言でした。「トゥガバッ」をいただけますかと、レストランの店員に聞いていました。「何だろう」「トゥガバッ?」。しばし考えた後、それが「To go box」だと分かりました。店内に「TO GO」(お持ち帰り)と書かれた看板があったからです。これもまさに文字と音が一体化した瞬間でした。
 英語の発音は国や地域によって異なり、アルファベット通りに聞こえないことがよくあります。私の場合、こうした体験が病みつきになってしまい、新たな「音」を求めて毎夏アメリカを訪問している次第です。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(2)=新聞読む楽しさ伝える
 小学生にとって、情報の宝庫である新聞を読めるようになるのは、とても大切なことです。その一方で、漢字が難しいなどの壁があるのも事実です。そんな壁を乗り越え、積極的に新聞を活用する子どもを育てるために、取り組み始める時期に、ぜひ教えてほしいことがあります。
 その一つが、新聞を読む楽しさ、大切さを教えること。情報が手軽に手に入るため新聞の必要性を感じていない子がいます。そんな子にこそ、新聞が社会的に価値ある情報を正確に伝える媒体であることを教えましょう。写真だけ見ても分かることはあるはずです。
 二つ目が、新聞特有の表記を教えること。新聞は、大事なことを落とさずできるだけ簡潔に伝えるために、「いつ」「どこで」など5W1Hを踏まえた表記をしています。また、最初に一番大切なことを書き、その後、補説をする逆三角形の文型も特徴的です。新聞記事を最後まで読み通そうと四苦八苦している子に、記事の最初を読むだけで概要が分かることを教えれば、新聞の読み方が変わるはずです。
 (浜松与進北小・山崎章成)