静岡県NIE推進協議会

実践指定校に14校 助言制度導入も決定-県推進協総会

2017年06月18日(日)付 朝刊


 新聞を学校教材に活用するNIE(教育に新聞を)の普及に取り組む県NIE推進協議会は17日、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で総会を開いた。実践指定校を前年度より1校増枠し、特別支援学校を含む14校を選定した。
 安倍徹会長は「近年の教育現場は"開かれた"がキーワード。多様な立場からの協力を得ながらNIEを盛り上げたい」とあいさつした。
 実践指定校からの要望を受け、小中学生向け新聞と英字新聞をルールを定めて提供するほか、担当教諭にメールなどで助言する「実践指定校担当アドバイザー制度」の導入を正式決定した。総会後、日本新聞協会NIEコーディネーター関口修司さんが「新学習指導要領とNIEの授業」をテーマに講演した。

 実践指定校は次の通り。
 新規 浜松西都台小、富士宮西富士中、静岡観山中、川根本町本川根中、遠江総合高、静岡聴覚特別支援学校▽継続 富士宮上井出小、静岡井宮小、森小、裾野富岡中、浜松可美中、三島南高、静岡聖光学院中・高、東海大付属静岡翔洋小

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞「読まない」38人→0人 苦手意識を克服 学ぶ力サポート-浜松・与進北小 教室常備1年半 

2017年06月03日(土)付 朝刊


 新聞を常時読める環境があれば、子どもたちは新聞を身近に感じるようになるか-。1年半の間、教室に毎日、新聞を置いた結果、新聞を全く読まない児童がいなくなり、新聞への苦手意識が克服されたというアンケート結果を、このほど浜松市立与進北小がまとめた。

 同校は、朝読書の時間や朝の会で新聞を活用する機会をつくってきた。そうした中で、新聞を自由に読める環境の有無が新聞の親しみやすさに影響するのではないか、ということにNIEアドバイザーの山崎章成同校教諭が着目。2015年9月から、5年生90人の全3教室に17年3月の卒業まで毎日、県紙や全国紙など複数の新聞を置き、昼休みや放課後などいつでも読めるようにして児童の意識の変化を追った。
 その結果、1年半で「週に3日以上読む」は5人から18人、「週に1、2日読む」は21人から32人と新聞に親しむ子が大きく増えた。また、「月に1、2日読む」は26人から40人に増えたものの、「読まない」は38人からゼロになり、ほとんど読まない子の総数が大きく減った。
 新聞を読む理由について(複数回答)は、「ニュースを知りたい」が18人から53人、「世の中のことが分かる」が14人から41人、「知らないことを知りたい」が13人から33人、「テレビ欄を見たい」が20人から38人と、新聞を情報収集ツールと理解して、社会への関心が広がり、情報アクセスに積極的になったことがうかがえる。その他にも、「一つのニュースが他のメディアより詳しく書いてあり分かりやすい」「広告で商品のことを知りたい」「地域であったことを知りたい」といった多様な声も出てきた。
 新聞があって良かったことは、「新聞を読んで文章を読む力がついた」「漢字や難しい言葉を覚えられた」「いろいろなニュースが分かった」「気になったことがすぐ読めた」「家族や友達に知らないことを教えることができた」「記事で友達と盛り上がった」など、話題探しから学力向上まで、子どもなりの〝収穫〟を実感していることが分かる。
 山崎教諭は「新聞を熱心に読む子もいれば、そうでない子もいたが、どの子もそれぞれに新聞から刺激を受けていたことは十分な成果。いつでも読める環境は、皆が読んでいるから自分も読んでみようという子のハードルを下げ、親しませるのに有益といえるだろう」とみる。
 新聞はただ置くだけでなく、教師が①最初は、新聞の読み方を教える②朝の会で記事を発表させるなど活用の場をつくる③習慣化してきたら、切り抜きなど子どものやりたいことに取り組ませる-よう指導すると、親しむ効果がより大きくなると山崎教諭は提案する。同校では現6年生にも5年次から教室に新聞を置き、本年度も継続して、子どもたちの学ぶ力のサポートに活用していく。

 

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朝読書の時間に新聞を読む児童ら=浜松市東区の与進北小

 

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グラフ=家や学校で新聞を読みますか?

 

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 ■静岡でNIE講演会-17日
 県NIE推進協議会(安倍徹会長)は17日、NIE講演会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。2017年度総会後の午後3時からで、関口修司・日本新聞協会NIEコーディネーターが講師。演題は「新学習指導要領とNIEの授業」。講演会だけの一般聴講も受け付ける。問い合わせは同協議会<電054(284)9152>へ。
 

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 ■紙面授業=音楽-世界に私だけの楽器 キラリ高 河一球先生
 昨年末の国民的アイドルグループ「SMAP」の解散は芸能ニュースの枠を超え、一般紙の1面、社会面などでも報じられました。そのSMAPのヒット曲「世界に一つだけの花」は、個性の大切さを訴える内容でした。人は皆、親から多くの宝物を授けられ生まれてきます。髪の色や爪の形、気質や好みなど十人十色、人の声もそれぞれ生まれながらに異なります。きれいな声、きれいではない声と言いますが、私は皆、親から授かった「いい声」を持っていると考えます。
 しかし、歌おうとすると体が力んでしまい、自分の思うような声が出ないということはないでしょうか。歌う時に大切なことは、いかに息を自在に操れるかどうかです。声楽は体が楽器です。楽器である体全体に息を回すためには、余分な力を抜いて体をリラックスさせる必要があります。
 そして、無理のない深い息にそっと声を乗せるためには、その息を支える筋肉が必要となります。さまざまな筋肉に意識を注ぐだけでは筋肉が硬直してしまい、かえってしなやかに機能することができなくなってしまいます。そこで重要なことは、自分がどのような声を出したいのか、明確なイメージを持つことです。そうすれば、必要な筋肉がおのずと機能していきます。
 さらに歌の歌詞に込められた意味を理解し、その情景をイメージすることで歌の意味と世界が外へと広がっていきます。きれいな声と声量のみに意識が傾いた歌には、何の意味も感動も生まれません。無理のない息の流れと支え、歌の世界をイメージすること、これらがとても重要になります。柔らかくて温かい息に、思いが込められた自分の声を乗せることができれば、相手の耳と心に心地よく届けることができます。
 皆さんも時々、心を解放し、気持ちよく歌ってみてはいかがでしょうか。これまで隠れていた感情が、歌の歌詞やメロディーと共鳴し、心と体を浄化させていくこととなるでしょう。「世界に私だけの楽器」で、自分にしか描くことのできない歌声を、思いっきり響かせてみましょう。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(3)=東大推薦合格を狙う
 現在、難関大でも推薦入試が実施され、進学手段の一つとなっている。
 要求されているのは受験科目以上の見識であり、共通するキーワードは基礎的学力に立脚した「自ら学ぶ意欲・幅の広さと奥深さ」。
 この入試方法を選択するならば、高校入学直後の早い段階から、己の求めるテーマに対し、問題意識の醸成を図っていかなければならない。その知見獲得と深化の対応策として、長期的な新聞記事の比較検証論文が最も有効と断言できる。
 具体的措置としては、新聞記事とキュレーションメディア(情報整理系のウェブサイト)の同時活用が欠かせない。第1回東大推薦入試に合格した本校卒業生は、紙媒体の新聞を毎日チェックするのはもちろん、テーマに関するニュースサイトの確認や論文検索サービスを利用することで、テーマについての知識や理解を深めていたそうだ。
 つまり、どのように新聞を読み、利用すれば進路実現に結びつくのか。その明確な具体策をわれわれ教員は生徒に向けて発信し続けなければならない、と痛感している。
 (静岡高・実石克巳)