静岡県NIE推進協議会

NIE=新聞の「5W1H」学ぶ 静岡聴覚特別支援学校で授業

2018年04月19日(木)付 朝刊


 教育に新聞を取り入れるNIE実践指定校の県立静岡聴覚特別支援学校(静岡市駿河区)は18日、NIEの公開授業を同校で行った。生徒たちが気に入った新聞を切り抜いて「いつ、どこで」など新聞の基本となる5W1Hを学ぶ様子を、県NIE推進協議会のメンバーが見学した。
 中学部2、3年生計8人が4班に分かれ、静岡新聞などの17日朝刊からそれぞれ関心のある記事を探した。5W1Hを書き出した上で、記事の感想について手話を交えて発表した。ワイヤレスイヤホンの人気上昇を伝える記事を選んだ生徒は「耳に関わる商品を多くの人に知ってほしい」などと述べた。
 指導した山根渉教諭は「聴覚障害者は情報を正しく入手するのが難しい。文字で読める新聞を活用する力を身に付けて」と呼び掛けた。
 公開授業に先立ち、同協議会は幹事会を同校で開いた。2017年度の決算案や18年度の事業計画などを承認した。

 

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生徒が気になった記事を選び、新聞の読み方を学んだ公開授業=18日午後、静岡市駿河区の県立静岡聴覚特別支援学校

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=読む 聴く 発信 生きた英語 本紙「YOMOっと」活用-東海大静岡翔洋小

2018年04月07日(土)付 朝刊


 2020年度から小学校で正式教科となり関心の集まる英語。NIE実践指定校の東海大静岡翔洋小(静岡市清水区)は、14年度から英語の授業で、本紙の日曜別刷り新聞「週刊YOMOっと静岡」に掲載されている「今週の英語News」を活用している。テーマはアニメから世界情勢までさまざま。生きた英語教材として、児童の主体性を育む英語教育に取り組んでいる。
 

 1年生から英語を学ぶ同校では、英語授業の大半を英語のみで行い、6年生の16時限分で「今週の英語News」を扱う。テーマは、フェアトレードや自動運転車など教員が紙面から厳選し、3~4文で構成された30~40語のニュース英語を基に独自のワークシートを作り、使用している。
 2月上旬、6年生の授業では「若者よ、盆栽もクールだぞ」(17年2月5日付)の紙面を使った。高橋佑未子教諭と米国出身のエイドリーン教諭が、日本文化で思い浮かぶものを質問すると、児童たちは「茶道」「着物」「柔道」など意見を出し合った。エイドリーン教諭が「盆栽はクール」と例を挙げ、紙面に掲載された「小学校での盆栽授業」の写真をスクリーンに映し出した。
 児童らは「ハサミ」「おじいさん」など写真から読み取れる単語を確認。続いて教諭らは紙面の専用コードを読み取りネーティブの発音音声を流した。児童らは聴き取れた音や語句をグループごとに確かめたり、辞書を引いたりして英文を完成させ、発音。さらにその和訳も行い、日本文化を広める方法について考え、英語で意見交換した。
 高橋教諭は、自分の考えを持ち、仲間と考えを共有して英語で発表することを目標にしている。そのための情報源として新聞は有意義という。武田彩奈さん(12)は、英語を学びながらニュースを知る楽しさを感じ「自分の意見を英語で伝えることは難しいけど、異文化も知った」と話した。島田未徠さん(12)は「ネーティブの英語が少しずつ聴き取れるようになった」とし、「仲間と意見交換して、新たな考えを知ることができた」と手応えを感じている。
 高橋教諭は、英語学習は英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことが大切と指摘。「題材が幅広くコンパクトな英語紙面は役立つ。他の教科とも連携を強め、子どもたちの視野を広げていきたい」と意気込みを語った。

 

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2017年度の授業で活用した「YOMOっと」を示す高橋佑未子教諭(左)とエイドリーン教諭=2月上旬、静岡市清水区

 

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積極的に英語で意見を言う児童

 

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 ■紙面授業=英語-自分なりの「幸せ」 清水国際高 漆畑夕子先生
 3月20日は、国連が定めた「世界幸福デー」。毎年国連は、「世界幸福度報告」を発表しています。今年もこのほど発表され、日本は昨年の51位から54位に下がりました。幸福度の調査はほかにもあり、新聞紙面でも時折、紹介されます。
 このような調査の中に「純粋幸福度」と言われている「世界幸福度調査」というのがあります。昨年1位を獲得したのは南太平洋の島国、フィジーです。授業でこの話をした時、「フィジーの人たちはなぜそんなに幸せなの?」と生徒が尋ねると、ALT(外国語助手)が「日本はどうなの」と尋ね返しました。「15~34歳の死亡原因の1位が自殺の国だよ。幸せじゃないんだよ」「みんなおしゃれもして、スマホも持って、何でもある。なぜ幸せじゃないの?」「日本は物がありすぎる」
 本校では毎年冬休みにフィリピンのセブ島で1週間の英語研修を行い、この生徒も参加した中の一人でした。「セブ島ではテレビもないし、Wi-Fi(ワイファイ)の環境も悪い。シャワーの水圧も低かったけど、幸せだった」。英語研修中、行く先々で会う現地の子どもたちの着ているものは、決して恵まれた暮らしをしているようには見えません。しかし、どの子も本当にまぶしい笑顔をしていました。
 現在、世界の約8割は発展途上国で、フィジーやフィリピンもそこに含まれます。しかし、調査や笑顔からは先進国である日本よりも幸せそうに思えます。明日の食事もあるか分からない子どもたちが、力強く生きています。さきほどの生徒も現地に行き、学校の勉強では学べない何かを発見したのでしょう。外の世界に飛び出してみると、自分の知らなかった世界が広がっています。コンピューターやスマホを離れ、自分なりの幸せを探してみませんか。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(13)=東大受験の新聞活用術
 国語の指導を担当した卒業生が今春、めでたく東京大理科2類に現役合格した。今回は、彼に聞いた、こうすればよかったという受験勉強中の新聞への関わり方を紹介する。
 ①毎日、志望分野の記事が掲載されているか斜めチェックし、あれば、記事の見出しを考えて付箋に書き、プロの見出しと比較する。時間がない時は切り抜かなくてよい。
 ②勉強に集中できない時期こそ、付箋のついた記事を読み返し、切り抜いてノートに貼り付ければよかった。目に見える厚みが、やる気の欠如を補ったのでは。モチベーション回復の一案である。
 ③東大の国語はとにかく時間との勝負なので、速読の訓練が絶対必要。大胆に要約する語彙[ごい]力を養うには、記事の読み込みが最も効率的だと思う。どうすれば短くまとめられるか、常に念頭において読むと学力アップが実感できるだろう。
 「今思えば、最悪の時期こそNIEが効果的だったのでは」とは、体験した者の言葉の重みであろう。スランプ脱却にNIEが効果的とは、これから受験に挑む後輩たちには金言たるに違いない。
 (静岡高・実石克巳)